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by hamarie_february

基礎科学の実が結ぶとは

2008-10-09 19:34:24 | 気になるニュース

ご承知の通り、立て続けに、日本人や日本人だった科学者(笑)が、ノーベル賞を受賞していますね。正直言うと「へっ?」というカンジで、興奮も何もありません。また、基本的に喜ぶべきことなんでしょうけど、素直に喜べないカンジです。理由は諸々。

メディアは日本の科学力が示されたと声高に賞賛してますが、すでに報道されているように、どちらも(物理学も化学も)、30年前、40年前の業績。だから「その頃の科学力はすごかったんだなぁ」という感慨はあります。あるいは、その頃の研究環境は最高だった(おいしかった by 益川さん)んだろうなという感慨。

ときどき読んでるchikirinさんがこんなエントリーをあげてました。

今日あたり何に興奮しているかで人間のタイプが分かれます@Chikirinの日記

そう、世の中、いろんなことが同時進行で起こってますからね。まったく、その諸々の一部でしかないという感覚もあります。

ちなみにワタシは、これらのどれにも興奮してませんが...。

でも、まぁ、曲がりなりにも、ここはサイエンスをネタにしてるblogなんで、やっぱ書いておくべっと思い、エントリーします。

さて、受賞された研究内容については、様々なメディアに出ているので、そちらを確認してもらいましょう。科学ニュースアラカルトさんが、新聞記事のまとめリンクをされているので、リンクしておきます。

祝:ノーベル物理学賞を日本の3氏が受賞

祝:ノーベル化学賞受賞

ふむ。物理学賞の「対称の破れ」「クォーク」関連については、今後、自主勉強を兼ねて追々と迫っていきたいです。個人的サイエンスカフェをやったときに、ちょいと調べてた素粒子系はわからないけど興味のある話題なのです。

 

が今回は別の話題。いや、ちょっと気になっているフレーズがあるので、そこにツッコミつつ考えてみる。

そのフレーズは、「基礎科学が実を結ぶのは長い年月がかかる」というもの。

そうですね。今回、30年~40年という長い年月を経て受賞されたわけですが、しかし各所で指摘されているように、これらは遅すぎた受賞です。

実際に実を結んだのは、「対称の破れ」が「標準理論」と認められた時期と言ってよいし、「緑色蛍光たんぱく」が研究室で「標識」として使われだした時期と言ってよいです。だから年月はもう少し短いと思う。

それより何より興味深いのは、ある一人の科学者が理論や発見などを公表した後に、全く別の研究者がその考え方を拾い上げて受け継いで、実験で検証したり、改良して商品化したりする「システム」が、かろうじて機能しているということです。時空を超えて。

基礎科学が実を結ぶのは、四方八方に受け継がれてこそ、なわけです。

それこそが素晴らしき研究環境と言うべきなんだろうなぁと思いますが、時代は移り特許申請に戦々恐々とする昨今、こういった研究環境は望めないのでしょうね。もちろん日本だけが「いいひと」になっても、諸外国が仕掛けてくるのだから戦わざるを得ない。

特に生命科学系は大変です...。今回の「緑色蛍光たんぱく」は下村さん自身が「何の使い道もないだろう」と思っていたらしいので、遺伝子工学が普及してこそ有益になったらしく、先見の明も必要ですが。

一方の理論物理は、何というかそういう意味では暢気です。

でも、愛すべきキャラをお持ちで今後が非常に楽しみな益川さんだけでなく、87歳にしては血色の良すぎる南部さんや、テレビに出るのだから髪型をどうにかしてほしい小林さん(たった今終わった「クローズアップ現代@NHK」では、整髪されてましたよ!)にも、「宇宙創世の謎が解明できたら今のこの状況(世界)に何か関係あるのか」とマジツッコミしたいよね。まったくもう、物理屋さんは...

と思っていたら、こんな記事がでておりましたよ。めちゃくちゃ、この世界に関係ありますやん。

官房長官、巨大粒子加速器誘致に前向き・・・ノーベル物理学賞受け@YOMIURI ONLINE

えー、ワタクシは先日も書きましたが、加速器関係にも興味大アリなんですよ。これってどんどん巨大化していくけど、その必要があるんだろうかっていう興味(疑問)です。この前、鳴り物入りで始動したLHCもさっそくストップしちゃったしね。真面目にやってくださいよね。「夢を与える」とか言うけど、科学は楽しいだけの遊びではないんで。

どっかの新聞が、「コンピュータのない時代に」「紙と鉛筆だけで」つくられた理論だと書き、

巨額の研究費が投じられることが当たり前になりつつある今日の自然科学の在り方に一石を投じる受賞

と書いてたけど、残念ながら、さらに研究費は巨額になっていくんだろうね。

あー思うんだけど、理論物理っていうのは、こういう風に大掛かりな実験をして検証してもらう、そのレールを引くこと(コーディネート)まで含めて業績なんだろう。 

【追記】まぁちょっと暴論だけど、結局、日本の理論物理は、「湯川さん系統の研究にお金つぎ込んできました」ってことなんだろうね。日本のお家芸だから。

んでも、つくづく思うんだけど、こんな巨大装置でしか「実験・検証」できないような話の場合、反証性って点はどうなのよって。

比べることじゃないんだろうけど、「緑色蛍光たんぱく」の四方八方全世界への普及の仕方、「緑色蛍光たんぱく」を使った四方八方全世界での「実験・検証」の仕方と比べて、どうなのよって思うな。


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2 コメント

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ひねくれていると思われるかもしれないけれど,素直に喜べない (K_Tachibana)
2008-10-10 00:11:26
こんばんは.

誰かが既に言っていることかも知れませんが,今回の日本人およびもと日本人だった人たちにこれだけまとめてノーベル賞を一度に出したということについて,もっと基礎研究にカネを出せ,あるいはノーベル財団の維持のために寄付せよというプレッシャーを与えているのではないかという裏読みをしています.

もはやノーベル賞は,社会的名誉と経済的優位の象徴となってきてしまっているので...
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世界株安 (hamarie_february)
2008-10-10 07:37:33
ノーベル財団も資金難なんですね。びっくりしました。

やはり世の中は「経済」で動いているのだと、残念ながら思ってしまいますね。
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