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【読書】『日本残酷物語』を読む

2016-02-14 00:30:31 | 読書記録

畑中さんの著書は、いつも入り口を見せてくれる。本作もまた。

昭和30年代に出版された『日本残酷物語』を軸に、著作・編集に
かかわった人々の人物像、背景や思想・着眼点、著された時代背景に
延びゆく筆が、"残酷"語りの系譜を鮮やかに浮かび上がらせる。

"残酷"は、いまの世の中での用途と少し違う。
声なき民の、なすすべのなさを含意する。

『日本残酷物語』は、さまざまな、ちいさくて、当事者にとって私的な
"残酷"のものがたりを、揶揄するのでなく、過剰に恐れたり可哀相がるの
でもなく、淡々と、しかしおそらく何らかの静かな感情を伴って著されて
いるのだろう。

そういうことが伝わってきて、『日本残酷物語』やその他の引用されて
いる書籍を手に取りたくなる。

引用されている"残酷"の光景は、今のくらしからは想像を絶するもので
ありながら、今と繋がらない別世界のようにはどうしても思えない。
"残酷"がうみだされる、人の内や外にあるきっかけは、未だ消え去って
いないのではないか。

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『日本残酷物語』を読む
畑中章宏 著
平凡社新書 2015/05
http://www.heibonsha.co.jp/book/b194540.html

読了直後に、「働く女子の運命」を読み始めたら、
労働者としての女子の初期型として製糸工場のことが出てきたりして。
過去と今は地続きなのだ。

(2016.2.13)


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