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【読書】働く女子の運命

2016-02-14 18:12:31 | 読書記録

読んでたらなんだか吐き気がしてきた(すみません>作者の方)。

それは、きわめて私的な理由で。
働く女子たる私や同僚が悩まされているものの正体が垣間見えたから。
この本で解説されている雇用システムの形成経緯において、折々に
ぶち込まれてきた恣意性の存在が、よく分かったから。

今読めば眉をひそめてしまうような、過去の有力団体や有識者・研究者
の発言・解釈説明など、時代がそうだったと言えばそれまでだけれど、
積み重なって現在の状況に確実に影を落としている。

最近で言えば「ダイバーシティ」「ワークライフバランス」、
否定しえない正論の姿で天から降ってきた感のあるこれらのお題。
大事なことなのに、何故こう、何度も、形骸化や形式化を繰り返すの
だろう?もっと言えば、毎度形骸化を内省しないのはなぜ?
…理由の根っこが少し分かった。
みんなでこぞって換骨奪胎。構造的に換骨奪胎体質。きついわ。

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働く女子の運命
濱口桂一郎 著
文春新書 2015/12
http://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784166610624

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昔若かった頃、男性社員は上昇志向をもって頑張らなくても、そこそこ
きちんと仕事をこなしていれば、それはそれとして批判されないのに、
女性社員は、ふつうに仕事しているだけでは、つまり、頑張りの積極性を
行動と意思表示で示さないでいるとなぜ減点されるのだろうと思っていた。
ジョブ型の評価を期待していたら、メンバーシップ型の基準をあてられて
いたわけで。

雇用システムの成立過程で、有識者の荒業的な解釈による換骨奪胎と、
正否をよくよく咀嚼することなく都合よく乗っちゃって正論化してきた
組織たち。
この動作傾向は、雇用システムだけの話ではないのではなかろうか。
さまざまな社会システムが、そういう過程と、現在の軋みを内包して
いるように思われて、吐き気の原因はそこにもある。空恐ろしい。

(2016.2.14)


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