「さーて、着いたぞ」
俺とTは、ある家の前に立っていた。
俺はインターホンを押した。
反応が無いので、続けざまにもう一度。
「せっかちだな」
「さっさと終わらせて帰って寝たい」
しばらくして、Oが出てきた。
病み上がりにしては元気そうだ。
「どうした2人とも、移してもらいたいのか?」
「あー、それは勘弁してくれ。吐いてまで学校休もうとは思わない」
Oは少しむっとしたが、俺達を玄関の中まで案内した。
「それで、用は何。俺もまだ吐き気残ってるんだよ」
「じゃ率直に言うけど、Nの事は知ってるよな」
Oは大きく溜め息をついた。よりによってそれか、とでも言いたげだ。
「まああいつとは知り合いだぜ、幼馴染だもんな」
俺とTは、教室で話を続けていた。
「実は、犯人の目星は付いてる」
俺はここぞとばかりに得意顔を見せて返した。
「このクラスの誰かだろ」
Tは「え?」というような顔でぽかんとしている。
「どうして知ってんの?」
「考えてみなよ、あの怪文書もどき。
あれがこの事件と関係ねーとでも?」
Tによれば、警察もあの教卓にあった文章の話を聞き、
このクラスに疑いをかけているらしい。
まあ想定内だな。
「もう一つ絞れる。お前がもらった義理チョコには、毒は入ってなかった」
「ああ、事件のことを知るまでに全部食っちゃったからな」
「ということは、Nを狙って意図的に毒を入れたってわけだ。
それなら入れたのはNの事を知ってる奴ってことになる。
Nを知ってる奴なんてこのクラスじゃ限られるよな」
「ああ、それならHも言ってた。多分警察も生徒に事情聞きに来るだろう、って」
「条件に合うのは誰がいる?」
Tは指を動かしながら考え出した。
「えっと、確かOはNと幼馴染らしいし、
Kは共通の友達がいるって言ってたな。
あとは・・・Hだけだな」
「お前はどうなんだ?」
「俺はNの事はあんまり知らねぇ、Hからもそんなに聞いたことないな」
つまり、H以外の2人はどちらも食中毒事件に関わっているわけだ。
この毒チョコと何か関係があるんだろうか?
「よし、そうと決まれば即行動だ。放課後行くぞ」
「えー、金曜くらい帰って寝たい」
「協力するって言ったのはお前だぞ」
・・・というわけで、俺とTはまずOの家を訪れたのだ。
「・・・つまり、俺とKさんを疑ってるってわけね」
「ま、一応ねー」
「・・・軽いな」
Tは俺を横目でちらりと見た。黙ってろ、というわけか。
「お前は、Nの事を一番よく知ってそうだから」
「へー、それならHさんに訊けよ。仲いいだろ」
「後で行く」
Oもなかなかに意地の悪いことを言ってくる。
「俺の知ってる限り、Nを恨むような奴はいないな。
アイツ憎まれないタイプだし、学校でも周りに好かれてたぜ。」
「じゃ、心当たりはないんだな」
「まあ、関係がこじれた・・・ってのなら考えられなくもないけど」
俺はTに視線を向けた。いきなり殴りかかられたらたまらない。
Tは落ち着いてはいるが、多少語気が強くなった。
「それは絶対にない。もしチョコレートから毒が出たら、
一番に疑われるのは渡した奴だろう?
それじゃ、自分が犯人ですって言ってるようなもんじゃないか」
強めの口調で言うTから目を逸らし、
Oは俺に意味ありげな視線を向けてきた。
俺はニヤリと笑みを返した。
「お前らだから特に話すけど、俺はNが誰かにやられた、とは思えないんだ」
Oは真面目な顔で言った。
「要するに、もしかしたら事故じゃないかってこと。
俺の食中毒みたいに、どこかでたまたま毒がついたとか」
「ふーん、でも人が死ぬような毒、バレンタインのチョコにつくか?」
「それは・・・まあないな」
俺はOの説を速攻で潰した。ウイルスで頭が春なのかもしれない。
「今のは気にしないでくれよ、ただの思いつきだし」
「言われなくても気にしない」
俺たちはOの家を後にし、電車でKの家へ向かった。
Kの家は俺の家の近くだから、場所もよく知っている。
「あのさぁ、Kって昔どういう感じだったの?」
「陰キャラ」
「・・・答えが速いな」
結局、Kからはろくに話を聞けなかった。
テメェは口を開けばろくなこと言わないから、らしい
俺は慣れているから平気だったが、
Tは普段のKの口調とのギャップに恐々としていた。
俺は個人的に、ああいう荒い口調のKの方が好きなんだが。
「あとはHだけか」
Kの家からそのまま帰る気でいた俺は、不意を突かれて思わず反論した。
「いや、Hもまだ心の整理ができてないんじゃ・・・」
「さっき連絡しといた」
Tは携帯電話を俺に差し出した。
Hからのメールには「大丈夫」と書いてある。
俺はTに聞こえないよう小声で愚痴をこぼした。
「えー、めんどくせー・・・」
⑤へ続く・・・
俺とTは、ある家の前に立っていた。
俺はインターホンを押した。
反応が無いので、続けざまにもう一度。
「せっかちだな」
「さっさと終わらせて帰って寝たい」
しばらくして、Oが出てきた。
病み上がりにしては元気そうだ。
「どうした2人とも、移してもらいたいのか?」
「あー、それは勘弁してくれ。吐いてまで学校休もうとは思わない」
Oは少しむっとしたが、俺達を玄関の中まで案内した。
「それで、用は何。俺もまだ吐き気残ってるんだよ」
「じゃ率直に言うけど、Nの事は知ってるよな」
Oは大きく溜め息をついた。よりによってそれか、とでも言いたげだ。
「まああいつとは知り合いだぜ、幼馴染だもんな」
俺とTは、教室で話を続けていた。
「実は、犯人の目星は付いてる」
俺はここぞとばかりに得意顔を見せて返した。
「このクラスの誰かだろ」
Tは「え?」というような顔でぽかんとしている。
「どうして知ってんの?」
「考えてみなよ、あの怪文書もどき。
あれがこの事件と関係ねーとでも?」
Tによれば、警察もあの教卓にあった文章の話を聞き、
このクラスに疑いをかけているらしい。
まあ想定内だな。
「もう一つ絞れる。お前がもらった義理チョコには、毒は入ってなかった」
「ああ、事件のことを知るまでに全部食っちゃったからな」
「ということは、Nを狙って意図的に毒を入れたってわけだ。
それなら入れたのはNの事を知ってる奴ってことになる。
Nを知ってる奴なんてこのクラスじゃ限られるよな」
「ああ、それならHも言ってた。多分警察も生徒に事情聞きに来るだろう、って」
「条件に合うのは誰がいる?」
Tは指を動かしながら考え出した。
「えっと、確かOはNと幼馴染らしいし、
Kは共通の友達がいるって言ってたな。
あとは・・・Hだけだな」
「お前はどうなんだ?」
「俺はNの事はあんまり知らねぇ、Hからもそんなに聞いたことないな」
つまり、H以外の2人はどちらも食中毒事件に関わっているわけだ。
この毒チョコと何か関係があるんだろうか?
「よし、そうと決まれば即行動だ。放課後行くぞ」
「えー、金曜くらい帰って寝たい」
「協力するって言ったのはお前だぞ」
・・・というわけで、俺とTはまずOの家を訪れたのだ。
「・・・つまり、俺とKさんを疑ってるってわけね」
「ま、一応ねー」
「・・・軽いな」
Tは俺を横目でちらりと見た。黙ってろ、というわけか。
「お前は、Nの事を一番よく知ってそうだから」
「へー、それならHさんに訊けよ。仲いいだろ」
「後で行く」
Oもなかなかに意地の悪いことを言ってくる。
「俺の知ってる限り、Nを恨むような奴はいないな。
アイツ憎まれないタイプだし、学校でも周りに好かれてたぜ。」
「じゃ、心当たりはないんだな」
「まあ、関係がこじれた・・・ってのなら考えられなくもないけど」
俺はTに視線を向けた。いきなり殴りかかられたらたまらない。
Tは落ち着いてはいるが、多少語気が強くなった。
「それは絶対にない。もしチョコレートから毒が出たら、
一番に疑われるのは渡した奴だろう?
それじゃ、自分が犯人ですって言ってるようなもんじゃないか」
強めの口調で言うTから目を逸らし、
Oは俺に意味ありげな視線を向けてきた。
俺はニヤリと笑みを返した。
「お前らだから特に話すけど、俺はNが誰かにやられた、とは思えないんだ」
Oは真面目な顔で言った。
「要するに、もしかしたら事故じゃないかってこと。
俺の食中毒みたいに、どこかでたまたま毒がついたとか」
「ふーん、でも人が死ぬような毒、バレンタインのチョコにつくか?」
「それは・・・まあないな」
俺はOの説を速攻で潰した。ウイルスで頭が春なのかもしれない。
「今のは気にしないでくれよ、ただの思いつきだし」
「言われなくても気にしない」
俺たちはOの家を後にし、電車でKの家へ向かった。
Kの家は俺の家の近くだから、場所もよく知っている。
「あのさぁ、Kって昔どういう感じだったの?」
「陰キャラ」
「・・・答えが速いな」
結局、Kからはろくに話を聞けなかった。
テメェは口を開けばろくなこと言わないから、らしい
俺は慣れているから平気だったが、
Tは普段のKの口調とのギャップに恐々としていた。
俺は個人的に、ああいう荒い口調のKの方が好きなんだが。
「あとはHだけか」
Kの家からそのまま帰る気でいた俺は、不意を突かれて思わず反論した。
「いや、Hもまだ心の整理ができてないんじゃ・・・」
「さっき連絡しといた」
Tは携帯電話を俺に差し出した。
Hからのメールには「大丈夫」と書いてある。
俺はTに聞こえないよう小声で愚痴をこぼした。
「えー、めんどくせー・・・」
⑤へ続く・・・
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