ぐだぐだくらぶ

ぐだぐだと日常を過ごす同級生たちによる
目的はないが夢はあるかもしれない雑記
「ぐだぐだ写真館」、始めました

キル・バレンタイン④

2010年06月02日 22時49分39秒 | 小説
「さーて、着いたぞ」


俺とTは、ある家の前に立っていた。


俺はインターホンを押した。

反応が無いので、続けざまにもう一度。


「せっかちだな」

「さっさと終わらせて帰って寝たい」



しばらくして、Oが出てきた。

病み上がりにしては元気そうだ。


「どうした2人とも、移してもらいたいのか?」

「あー、それは勘弁してくれ。吐いてまで学校休もうとは思わない」


Oは少しむっとしたが、俺達を玄関の中まで案内した。


「それで、用は何。俺もまだ吐き気残ってるんだよ」

「じゃ率直に言うけど、Nの事は知ってるよな」


Oは大きく溜め息をついた。よりによってそれか、とでも言いたげだ。


「まああいつとは知り合いだぜ、幼馴染だもんな」




俺とTは、教室で話を続けていた。


「実は、犯人の目星は付いてる」


俺はここぞとばかりに得意顔を見せて返した。


「このクラスの誰かだろ」


Tは「え?」というような顔でぽかんとしている。


「どうして知ってんの?」

「考えてみなよ、あの怪文書もどき。

あれがこの事件と関係ねーとでも?」


Tによれば、警察もあの教卓にあった文章の話を聞き、

このクラスに疑いをかけているらしい。

まあ想定内だな。


「もう一つ絞れる。お前がもらった義理チョコには、毒は入ってなかった」

「ああ、事件のことを知るまでに全部食っちゃったからな」

「ということは、Nを狙って意図的に毒を入れたってわけだ。

それなら入れたのはNの事を知ってる奴ってことになる。

Nを知ってる奴なんてこのクラスじゃ限られるよな」

「ああ、それならHも言ってた。多分警察も生徒に事情聞きに来るだろう、って」

「条件に合うのは誰がいる?」


Tは指を動かしながら考え出した。


「えっと、確かOはNと幼馴染らしいし、

Kは共通の友達がいるって言ってたな。

あとは・・・Hだけだな」

「お前はどうなんだ?」

「俺はNの事はあんまり知らねぇ、Hからもそんなに聞いたことないな」


つまり、H以外の2人はどちらも食中毒事件に関わっているわけだ。

この毒チョコと何か関係があるんだろうか?


「よし、そうと決まれば即行動だ。放課後行くぞ」

「えー、金曜くらい帰って寝たい」

「協力するって言ったのはお前だぞ」




・・・というわけで、俺とTはまずOの家を訪れたのだ。


「・・・つまり、俺とKさんを疑ってるってわけね」

「ま、一応ねー」

「・・・軽いな」


Tは俺を横目でちらりと見た。黙ってろ、というわけか。


「お前は、Nの事を一番よく知ってそうだから」

「へー、それならHさんに訊けよ。仲いいだろ」

「後で行く」


Oもなかなかに意地の悪いことを言ってくる。


「俺の知ってる限り、Nを恨むような奴はいないな。

アイツ憎まれないタイプだし、学校でも周りに好かれてたぜ。」

「じゃ、心当たりはないんだな」

「まあ、関係がこじれた・・・ってのなら考えられなくもないけど」


俺はTに視線を向けた。いきなり殴りかかられたらたまらない。

Tは落ち着いてはいるが、多少語気が強くなった。


「それは絶対にない。もしチョコレートから毒が出たら、

一番に疑われるのは渡した奴だろう?

それじゃ、自分が犯人ですって言ってるようなもんじゃないか」


強めの口調で言うTから目を逸らし、

Oは俺に意味ありげな視線を向けてきた。

俺はニヤリと笑みを返した。



「お前らだから特に話すけど、俺はNが誰かにやられた、とは思えないんだ」


Oは真面目な顔で言った。


「要するに、もしかしたら事故じゃないかってこと。

俺の食中毒みたいに、どこかでたまたま毒がついたとか」

「ふーん、でも人が死ぬような毒、バレンタインのチョコにつくか?」

「それは・・・まあないな」


俺はOの説を速攻で潰した。ウイルスで頭が春なのかもしれない。


「今のは気にしないでくれよ、ただの思いつきだし」

「言われなくても気にしない」




俺たちはOの家を後にし、電車でKの家へ向かった。

Kの家は俺の家の近くだから、場所もよく知っている。


「あのさぁ、Kって昔どういう感じだったの?」

「陰キャラ」

「・・・答えが速いな」


結局、Kからはろくに話を聞けなかった。

テメェは口を開けばろくなこと言わないから、らしい

俺は慣れているから平気だったが、

Tは普段のKの口調とのギャップに恐々としていた。

俺は個人的に、ああいう荒い口調のKの方が好きなんだが。




「あとはHだけか」


Kの家からそのまま帰る気でいた俺は、不意を突かれて思わず反論した。


「いや、Hもまだ心の整理ができてないんじゃ・・・」

「さっき連絡しといた」


Tは携帯電話を俺に差し出した。

Hからのメールには「大丈夫」と書いてある。

俺はTに聞こえないよう小声で愚痴をこぼした。


「えー、めんどくせー・・・」





⑤へ続く・・・



最新の画像もっと見る

コメントを投稿