司馬遼太郎の長編小説『坂の上の雲』を初映像化した作品、
製作したNHKもかなり力の入れた宣伝を繰り返していたので、
わたしも期待をして見ました!
産経新聞に連載されていた時から話題の作品だったから、
私もだいぶ前にこの小説は読んでいます。
ドラマを見た感想はどうかというと、
かなり原作を大事にしていて、丁寧に作っていますね!
ここ最近、NHK大河ドラマからは遠ざかっていた私ですが、
スペシャルドラマ『坂の上の雲』には、久々に堪能させてもらいました!
明治の映像ってけっこう残ってるんだなという、
意外な発見がありました。
「明治維新は士族による革命であった。」
明治維新を自らの手で成し遂げた「サムライ」たちの肖像写真の数々!
明治の日本人の顔やら姿かたちは、
なにか異様さを感じるほど、現代のわれわれからはかけ離れたものを感じました。
表情が発している「気合い」とでもいうのか、
「眼光」の強さには圧倒されるものがありました。
写真に写されると魂が吸いとられると言われた時代ですから、
カメラを警戒していただけかもしれませんが。
あんな目で、
司馬遼太郎に言わせれば、坂の上にぽっかりと浮かんだ雲を見つめながら、
明治という時代の坂道を一心に駆け上った人たちが確かにいたんだな。
また、『坂の上の雲』のクライマックスとなる日本海海戦の様子も、
バルチック艦隊側の記録フィルムや日本艦隊側の映像記録など、
フィルムに映像が残されているというのは凄いことだと思いました。
『坂の上の雲』の主人公たち
主人公は、伊予・松山出身の三人、
秋山好古、
秋山真之、
正岡子規。
秋山好古(よしふる)はのちに、日本陸軍に初めての騎兵隊を創り上げ、
やがて始まった日露戦争において、
世界最強の騎兵といわれたロシアのコサック騎兵隊を全滅させる働きをします。
秋山真之(さねゆき)は好古の弟で、こちらは海軍に入り、
日露戦争では戦いの命運を決めた日本海海戦において作戦参謀として参加し、
日本海軍の2倍の戦力を持つロシアのバルチック艦隊と戦い、これを撃滅します。
正岡子規(まさおかしき)は、学校の国語で習った通り、
俳句や短歌の革新運動を起こしました。
若くして結核をわずらい、喀血をした時から「子規」と号すようになります。
子規とはホトトギスの異名で、血を吐くまで啼くという伝説があり、
結核により喀血する自分と重ね合わせ、そう名乗ったものです。
物語の前半は、この三人とそれを取り巻く明治の青春群像が中心的に描かれます。
『坂の上の雲』第1回「少年の国」の感想
「第1回」の放送で印象的だったのは、
なんといっても秋山家の超「貧乏っぷり」です!
明治維新後の廃藩置県によって禄を解かれ、
多くの侍たちが貧乏のどん底に突き落とされました。
お徒歩組だった秋山家も例外ではありません。
明治維新を断行した本人たちに過酷な現実が襲ってくるのですが、
空腹を抱えながら、明日への希望だけは持ち続けている、
子供たちの姿がとても新鮮に映りました。
少年時代の秋山好古の青っ洟も、なかなかよかったな。
じっさいはもっと「棒状」に長く垂らしていたんだとは思うが。
師範学校や陸軍大学校などの無料で学べる学校ができたということは、
明治時代の唯一の読書階級であった旧士族に対しては、
なによりの「救貧対策」だったのでしょう。
西洋に後れをとる経済と軍事を発展させ、
「一等国」になるというのが明治維新のそもそもの目標だったわけで、
「殖産興業」「富国強兵」が明治国家のスローガンとなります。
富国強兵せねば中国のように亡国の憂き目にあうと、
当時の日本はさしせまった危機感に突き動かされていたと思います。
「治外法権」という壁が眼の前に立ちはだかっていました。
日本国内で外国人が犯罪を犯しても、日本の警察に取り締まる権利がなかったのです。
こういう不公平条約を是正するための前提として、
日本は「一等国」になって見せなければならなかったわけです。
つまり、西欧列強のルールにのっとって、
権利を勝ち取る道を日本は選んだというわけです。
とにかく前へ進むことを選択した日本という国家がそこに在りました。
成り立ての「国民」たちも、
国家の目標に人生の目標を重ねて「立身出世」に励むことになります。
政治に経済に行き詰まっている今の日本だからこそ、
「明治」という近代国家・日本の創業時代を見直すことに意味があるかも知れません。
日露戦争が題材の映画たち
『明治天皇と日露大戦争』
『日本海大海戦』
『203高地』
『日本海大海戦 海ゆかば』
『敵中横断三百里』
わたしがビデオ等で見たものだけでもこれぐらいあります。
また『八甲田山』のように「日露戦争前史」を題材にしたものも有ります。
おすすめは『明治天皇と日露大戦争』(1957年新東宝)と『日本海大海戦』(1969年・東宝作品)かな?
どちらも日露戦争の陸海軍の戦いを描いており、
前者は明治の錦絵を見るような鮮烈な戦場絵巻!
後者は特撮の神様・円谷英二特技監督の遺作となった、
日本海海戦を真正面から再現した堂々たる戦争特撮巨編!
どちらも日露戦争を正面から描きだすのは、
「好戦的作品」と受け取られかねない恐れがあり、
ずいぶんと勇気のいることだったと思います。
それでも「戦争」という国家を挙げた一大事業を通してしか、
表現できないものがあります。
そういえば、『坂の上の雲』の映像化を生前の司馬遼太郎は拒絶していたそうです。
やはり映像化されれば、どうしても「戦争」の方へ眼を奪われがちになるので、
作者の意図と違った受け取られ方をするのを恐れたのでしょう。
映像化したとたんにマスコミや市民団体が群がって、
好き勝手なことを言い始めるのは目に見えてますからね!
それに踊らされる一般の日本人を含めて、
司馬は信じていなかったということだろうと思います。
そういう騒ぎの中に自分の愛する作品を巻き込みたくなかったということでしょう。
●NHKスペシャルドラマ『坂の上の雲』放送予定
第1部2009年 総合テレビ 午後8:00~9:30
第1回 「少年の国」 11月29日(日)
第2回 「青雲」 12月 6日(日)
第3回 「国家鳴動」 12月13日(日)
第4回 「日清開戦」 12月20日(日)
第5回 「留学生」 12月27日(日)
第2部 2010年秋
第6回 「日英同盟」
第7回 「子規、逝く」
第8回 「日露開戦」
第9回 「広瀬、死す」
第3部 2011年秋
第10回 「旅順総攻撃」
第11回 「二〇三高地」
第12回 「敵艦見ユ」
第13回 「日本海海戦」(最終回)
製作したNHKもかなり力の入れた宣伝を繰り返していたので、
わたしも期待をして見ました!
産経新聞に連載されていた時から話題の作品だったから、
私もだいぶ前にこの小説は読んでいます。
ドラマを見た感想はどうかというと、
かなり原作を大事にしていて、丁寧に作っていますね!
ここ最近、NHK大河ドラマからは遠ざかっていた私ですが、
スペシャルドラマ『坂の上の雲』には、久々に堪能させてもらいました!
明治の映像ってけっこう残ってるんだなという、
意外な発見がありました。
「明治維新は士族による革命であった。」
明治維新を自らの手で成し遂げた「サムライ」たちの肖像写真の数々!
明治の日本人の顔やら姿かたちは、
なにか異様さを感じるほど、現代のわれわれからはかけ離れたものを感じました。
表情が発している「気合い」とでもいうのか、
「眼光」の強さには圧倒されるものがありました。
写真に写されると魂が吸いとられると言われた時代ですから、
カメラを警戒していただけかもしれませんが。
あんな目で、
司馬遼太郎に言わせれば、坂の上にぽっかりと浮かんだ雲を見つめながら、
明治という時代の坂道を一心に駆け上った人たちが確かにいたんだな。
また、『坂の上の雲』のクライマックスとなる日本海海戦の様子も、
バルチック艦隊側の記録フィルムや日本艦隊側の映像記録など、
フィルムに映像が残されているというのは凄いことだと思いました。
『坂の上の雲』の主人公たち
主人公は、伊予・松山出身の三人、
秋山好古、
秋山真之、
正岡子規。
秋山好古(よしふる)はのちに、日本陸軍に初めての騎兵隊を創り上げ、
やがて始まった日露戦争において、
世界最強の騎兵といわれたロシアのコサック騎兵隊を全滅させる働きをします。
秋山真之(さねゆき)は好古の弟で、こちらは海軍に入り、
日露戦争では戦いの命運を決めた日本海海戦において作戦参謀として参加し、
日本海軍の2倍の戦力を持つロシアのバルチック艦隊と戦い、これを撃滅します。
正岡子規(まさおかしき)は、学校の国語で習った通り、
俳句や短歌の革新運動を起こしました。
若くして結核をわずらい、喀血をした時から「子規」と号すようになります。
子規とはホトトギスの異名で、血を吐くまで啼くという伝説があり、
結核により喀血する自分と重ね合わせ、そう名乗ったものです。
物語の前半は、この三人とそれを取り巻く明治の青春群像が中心的に描かれます。
『坂の上の雲』第1回「少年の国」の感想
「第1回」の放送で印象的だったのは、
なんといっても秋山家の超「貧乏っぷり」です!
明治維新後の廃藩置県によって禄を解かれ、
多くの侍たちが貧乏のどん底に突き落とされました。
お徒歩組だった秋山家も例外ではありません。
明治維新を断行した本人たちに過酷な現実が襲ってくるのですが、
空腹を抱えながら、明日への希望だけは持ち続けている、
子供たちの姿がとても新鮮に映りました。
少年時代の秋山好古の青っ洟も、なかなかよかったな。
じっさいはもっと「棒状」に長く垂らしていたんだとは思うが。
師範学校や陸軍大学校などの無料で学べる学校ができたということは、
明治時代の唯一の読書階級であった旧士族に対しては、
なによりの「救貧対策」だったのでしょう。
西洋に後れをとる経済と軍事を発展させ、
「一等国」になるというのが明治維新のそもそもの目標だったわけで、
「殖産興業」「富国強兵」が明治国家のスローガンとなります。
富国強兵せねば中国のように亡国の憂き目にあうと、
当時の日本はさしせまった危機感に突き動かされていたと思います。
「治外法権」という壁が眼の前に立ちはだかっていました。
日本国内で外国人が犯罪を犯しても、日本の警察に取り締まる権利がなかったのです。
こういう不公平条約を是正するための前提として、
日本は「一等国」になって見せなければならなかったわけです。
つまり、西欧列強のルールにのっとって、
権利を勝ち取る道を日本は選んだというわけです。
とにかく前へ進むことを選択した日本という国家がそこに在りました。
成り立ての「国民」たちも、
国家の目標に人生の目標を重ねて「立身出世」に励むことになります。
政治に経済に行き詰まっている今の日本だからこそ、
「明治」という近代国家・日本の創業時代を見直すことに意味があるかも知れません。
日露戦争が題材の映画たち
『明治天皇と日露大戦争』
『日本海大海戦』
『203高地』
『日本海大海戦 海ゆかば』
『敵中横断三百里』
わたしがビデオ等で見たものだけでもこれぐらいあります。
また『八甲田山』のように「日露戦争前史」を題材にしたものも有ります。
おすすめは『明治天皇と日露大戦争』(1957年新東宝)と『日本海大海戦』(1969年・東宝作品)かな?
どちらも日露戦争の陸海軍の戦いを描いており、
前者は明治の錦絵を見るような鮮烈な戦場絵巻!
後者は特撮の神様・円谷英二特技監督の遺作となった、
日本海海戦を真正面から再現した堂々たる戦争特撮巨編!
どちらも日露戦争を正面から描きだすのは、
「好戦的作品」と受け取られかねない恐れがあり、
ずいぶんと勇気のいることだったと思います。
それでも「戦争」という国家を挙げた一大事業を通してしか、
表現できないものがあります。
そういえば、『坂の上の雲』の映像化を生前の司馬遼太郎は拒絶していたそうです。
やはり映像化されれば、どうしても「戦争」の方へ眼を奪われがちになるので、
作者の意図と違った受け取られ方をするのを恐れたのでしょう。
映像化したとたんにマスコミや市民団体が群がって、
好き勝手なことを言い始めるのは目に見えてますからね!
それに踊らされる一般の日本人を含めて、
司馬は信じていなかったということだろうと思います。
そういう騒ぎの中に自分の愛する作品を巻き込みたくなかったということでしょう。
●NHKスペシャルドラマ『坂の上の雲』放送予定
第1部2009年 総合テレビ 午後8:00~9:30
第1回 「少年の国」 11月29日(日)
第2回 「青雲」 12月 6日(日)
第3回 「国家鳴動」 12月13日(日)
第4回 「日清開戦」 12月20日(日)
第5回 「留学生」 12月27日(日)
第2部 2010年秋
第6回 「日英同盟」
第7回 「子規、逝く」
第8回 「日露開戦」
第9回 「広瀬、死す」
第3部 2011年秋
第10回 「旅順総攻撃」
第11回 「二〇三高地」
第12回 「敵艦見ユ」
第13回 「日本海海戦」(最終回)