もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

古関裕而氏と隊歌「海を行く」

2020年10月20日 | 自衛隊

 NHKの朝ドラ「エール」ついての報道を読んだ。

 ドラマは全く見ないので記事に基づく感想であることをお断りした上での展開である。記事によると、主人公「古関裕而」氏がインパール作戦の最前線で再会した小学校の恩師「遠藤喜美治氏」が戦死する場面を描いているが、古関氏のビルマ慰問行は事実であるもの前線慰問は中止され、遠藤氏も復員後80才の天寿を全うされたとされている。歴史物・伝記物の制作は難しいとされ、忠実に描くと単なる年譜になってしまい、最も輝いた一時期のみ抜き出して描けば人格・人間味を描けないと云われている。そのため、多くの場合、虚構の人物を登場させる等の創作が加わえられるのが一般的で視聴者も一定の虚構を承知しているが、NHKの手法はチョット度が過ぎるようにも感じられる。記事にも、視聴者の嫌悪感が強い軍歌・軍国歌謡まで挿入して古関氏を描く努力が窺えるだけに残念な創作としている。閑話休題。
 海上自衛官にとって古関裕而氏は、隊歌「海を行く」の作曲者として知られているが、音楽に暗い自分ながら本日は古関氏の足跡を勉強し、海上自衛隊歌を紹介することとした。
 古関氏は 1909(明治42)年に福島県に生まれ1989(平成元)年に亡くなられている。年譜を辿ると、幾人かの作曲家に師事したとされているが、音楽学校での教育は受けておらず、いわば独学に近い研鑽で多くの楽曲を世に送り出され、クラシックから歌謡曲と幅広く、生涯に5000曲もの楽曲を発表されたとされていた。世に知られたのは1935(昭和10)年の「船頭可愛や(詩:高橋掬太郎、唄:音丸)」のヒットとされているが、真骨頂は哀調を帯びた「愛国の花」「暁に祈る」「露営の歌」「若鷲の歌(予科練の歌)」「ラバウル海軍航空隊」などの戦時歌謡・軍歌であるように思う。
 戦後は、「長崎の鐘」「フランチェスカの鐘」「高原列車は行く」「君の名は」などを発表する傍ら、夏の甲子園高校野球大会歌「栄冠は君に輝く」「東京オリンピック開会式のオリンピック・マーチ」「巨人・阪神・中日球団歌」「各学校の校歌」と、今に歌い継がれる多くの作品を発表しておられる。中でも先に挙げた「海上自衛隊歌:海を行く」は海上自衛隊員必須のもので、着隊(入営)して2・3日後に行われる入隊式で斉唱する必要があることから、敬礼と同時に修得しなければならないものである。入隊後も、多くの儀式や集会で歌う必要があることから、現役・OBを問わず、歌詞は100%暗記していると思う。

 隊歌「海をゆく」は、海上警備隊発足(1952(昭和27)年)から歌われていたが、海上自衛隊開50周年(2004(平成16)年)には、1番歌詞の冒頭「男と生まれ・・・」が時代にそぐわなくなったとして曲はそのままに新しい歌詞に変更された。それ以前に退職したために、「新・海を行く」を歌う機会な無かったが、新旧歌詞を比べると新しい作詞家には申し訳ないが、旧「海を行く」に軍配を挙げたくなるのは、単なる郷愁の故であろうか。ブログ読者を含め多くの人には無縁で興味も湧かないと思うものの、新旧の歌詞を併記させて頂くので、御一覧を懇請するものである。

「海をゆく」
作詞 旧(佐久間正門)、(新)松瀬節夫
作曲 古関 裕而

旧・男と生まれ海をゆく 若い命の血は燃える
  かおれ桜よ黒潮に 備え揺るがぬ旗印
  おお選ばれた海上自衛隊(じえいたい) 海を守る我等

  怒涛よ騒げ 雲よ鳴れ 力黒金たじろがず
  常に鍛えて逞しく 越える苦難の雨嵐
  おお灼熱の海上自衛隊 海を守る我等

  紅の意気 昼も夜も 重い使命にたぎり立つ
  緑清しいあの山河 永久の栄えをただ祈る
  おお国担う海上自衛隊 海を守る我等

新・明け空告げる海をゆく 歓喜湧き立つ朝ぼらけ
  備え堅めて高らかに 今ぞ新たな陽が昇る
  おお堂々の海上自衛隊 海を守る我等

  黒潮薫る旗風に 映える使命の若桜
  熱い力の意気燃えて 凌ぐ波濤は虹と咲く
  おお精鋭の海上自衛隊 海を守る我等

  伴(きずな)に結ぶ伝統の 誇り支えるこの山河
  永久の平和を祈りつつ 祖国の明日を担う
  おお栄光の海上自衛隊 海を守る我等


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2 コメント

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旧歌詞 (onecat01)
2020-10-20 22:47:37
 管理人殿

 私も、旧の歌詞に軍配をあげます。
「男と生まれ海をゆく 若い命の血は燃える」

「明け空告げる海をゆく 歓喜湧き立つ朝ぼらけ」

 これではもう、軍人の歌でなく、そこいらの高校生が歌う「校歌」です。

 国花としての「桜」、日本を囲む「海」、揺るがぬ旗印「日の丸」・・と、大切なものをみんな消し去っています。

 古関氏も、落胆されたでしょうね。
有難うございます (管理人)
2020-10-21 09:10:54
onecat01様  おはようございます。
 コメントを有難うございました。
 旧歌詞に軍配を頂き、自分の郷愁だけではなかったと安堵しています。ブログ投稿後、改めて古関氏の楽曲をライブラリイから抜き出して聴いております。
 古関氏に 合掌

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