毒吐き娘の現実日記。

 
忘れた頃にやってくる
溢れそうな毒を吐き出すために
 

【Day of the remainder】第一章『欠如』 ~第二話~

2008年06月12日 00時12分45秒 | 小説

「悟くん、座っても良いのよ?」


俺はその言葉を聞き、ソファーに力なく座り込んだ。


ショックと絶望。
その二つが身体を駆けめぐっていて・・・怠い。



「悟くん、夏蓮さんと何かあったの?」


座ったまま俯いている俺に、先生が話しかける。
俺は答えない。
否、答えたくても答える気力すらない。

長い沈黙が、二人の間に流れる。



「夏蓮さん、私のことも何も分からないの。」


ポツリポツリと言葉を紡ぎ出すように、先生が話し始めた。
黙って聞いていた。聞くしかなかった。

 

「私が部屋に入ったとき、夏蓮さんはさっきのような虚ろな目で私を見てきたわ。

  昨日の帰りに「さようなら。」って挨拶してくれた夏蓮さんとは大違い。
  違いすぎていて・・・最初は同一人物だと信じられなかった。


  ・・・ご両親は夏蓮さんを諦められたの。


     「親のことが分からない娘がいるものか。
       こんな奴は娘でも何でもない。汚らわしい、寄るな!

     「この子が私のお腹から出てきた?
       ふざけた事を言わないで頂戴、このダメ教師。
       あなた、早く行きましょう。こんな子、私たちは知らないのですよ。



  酷い言われようだったわ。
  私も酷いことを言われたけど・・・夏蓮さんのショックは一番大きいと思うの。
  ご両親に見放されるほど、子供にとって悲しいことは・・・無いわ。」




俺は聞いていて、ただ驚くばかりだった。
夏蓮と親の話はあまりしなかった。「厳しい親」としか聞いていない。

まさか、そこまで酷いなんて・・・


何も知らないでのほほんとしていた自分が恨めしい。
何で、もっと早く気づいてやれなかったのだろう。


「夏蓮さんに、貴方のことは言っていないわ。」


声が震えている。


「私に出来ることなら何でもしたつもりよ。」


必死で何かを堪えている。


「でも、夏蓮さんは何も変わらなかったの。だから・・・」


早く、助けてあげて。

俺は黙って部屋を出た。最後に見た先生の頬には、涙が一筋。
目から溢れそうになっていた大粒の涙に・・・俺は誓った。


   夏蓮を助ける、と・・・―――



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