Desert Rose

昔々は本を読む時、音があってはダメだった。
集中力の足りない自分に音楽を聴きながら
活字を追うという行為は無理だった。

年をとると集中力が高まる。
と言うワケにはいかなかったが、
鈍感さが増し、インプットが重なっても
その中の一つに意識は持って行かれ
他は静かなバックミュージックの様な
扱いになるという有難い技を身につけた。

それでも日本語の歌詞は
時々その世界に連れ込むわかり易さがあるので
本を読む時は専ら洋楽を聴いている。
そしてそれは
不思議なプレゼントをくれる事がある。

電車の吊革を握って窓の外を眺めていると
StingのDesert Roseが流れた。

「蛍の森」

この本を初めて読んだ時、
なんのきっかけかDesert Roseを
ヘビーローテーションで聴いていた。
歌えるくらい聴いた。
そのせいだろう
曲が流れてすぐ
意識が「蛍の森」におちた。

本の内容と
曲の歌詞が重なるなんてものでは無いが
空気感にどこか通じるところを感じて
あの悲しい世界を思い出すと
この曲がテーマ曲になって
世界が振動した。

また読もう。
そう思った。

あんなに泣いた本はまだ無い。
あんなに小さく微かな救いを
ありがたく思った事も。

小春たちが見た
蛍の無数の光を
いつかもし
自分が見れたとして
やはり自分は泣くのだろうか。
この曲が流れるんだろうか。

何回目かのリピートを押すと
すでに胸がいっぱいになっていた。

三体牛鞭
狼一号