心の音

日々感じたこと、思ったことなど、心の中で音を奏でたことや、心に残っている言葉等を書いてみたいと思います。

福岡ソフトバンクホークス川崎宗則物語10(最終回)

2005-04-10 11:41:51 | Weblog
 西日本スポーツの連載記事(4月6日)を要約します。
1「とんぼ返り」
 シーズン最終戦でプロ初の1軍を経験し、おぼろげながら未来のビジョンが見え始めていた2001年。高知での秋季キャンプに参加した川崎は、震える足で先輩の前に立っていた。「来年の自主トレにボクも連れていっていただけないでしょうか」。勇気を振り絞った川崎の志願を目の前で聞いていたのは、当時のチームリーダー、小久保だった。
 翌年1月、鹿児島・奄美大島。先輩に必死に食らいつきながらハードメニューをこなす川崎の姿があった。初めて体感した小久保の背中。それは新鮮な驚きに満ちあふれていた。「一流と呼ばれる人の考えを知りたかった。小久保さんは風邪気味だと言いながら、決して手を抜いたりすることもなかった。練習も取り組む姿勢も、ボクにとって本当に勉強になることばかりだった」。
 14日、鹿児島県姶良町の成人式。前夜から1時帰郷の許可をもらっていた川崎は、式後、友人たちとの懇親会に出席するかどうか迷っていた。小久保には式が終わったら帰ると告げている。予定を一泊延期しようかとも思っていたとき、父・正継は諭すように息子に語りかけた。「どうして、小久保さんのもとでやろうと思ったんだ?」。ハッとした川崎はすぐに思いなおして出発の準備に取り掛かったという。
 「その日、奄美から電話で、お父さんやっぱり戻ってよかったよ、と言ってきました。空港まで迎えに来てくれた、夜はみんなでお祝いまでしてもらった。驚いた、うれしかった」と。プロとして、人間として、外から見ているだけでは分からないもの。日々の練習中に感じたことを書きとめておく「日記」をつけ始めたのも、小久保に啓発されたからだった。
2「48年ぶり・・」
 大収穫の自主トレを終えた川崎は、プロ3年目で初めて1軍の春季キャンプに抜擢された。開幕直前にファーム落ちしたものの、6月には1軍昇格。プロ初安打、初盗塁、初タイムリー・・と次々に足跡を刻んでいく過程で、忘れられない試練にも直面した。
 「もう2軍には戻らない」と決意して臨んだ1軍の舞台だったが、結果にとらわれるあまり打率は1割台をウロウロ。そんな時の大失態だった。6月29日の近鉄戦、王監督も首をすくめたチャンスでのバント失敗。三振からの「三重殺」は48年ぶり。屈辱を携え川崎は2軍に逆戻りした。背中に突き刺さったファンの悲鳴とベンチのため息。のしかかる現実を真摯に受け止めて、川崎は日記を読み返してみた。
 当時合宿所の寮長だった河埜敬幸(現2軍コーチ)は、それから後の川崎をこう述懐する。「消灯時間になっても練習場に明かりがついている。誰かと思って見に行くと、川崎だった」。試合があってもなくても、時間さえあれば河埜に「ノックしてください」と、申し出た。遠征に出れば、宿舎の廊下でボールを転がしてもらい捕球練習。野球と出合った幼少時代、自宅の前で壁当てに夢中になっていたころと同じ、ただうまくなりたい思いだけが体を突き動かした。
 試練の夏を超え、やがてダイヤの原石が本物の輝きを放つときがやってきた。8月、秋山幸二(現2軍監督)が引退を表明。時代は新たなスターを欲していた。そんなタイミングを待っていたかのように、21歳の新星は勢いよく飛び出した。
3「聖地で頂点」
 すでにV奪回が絶望となっていた9月。レギュラーの井口が右肩手術で離脱すると、王監督は翌年を見据え真っ先に川崎を呼び寄せた。日記にも書いてあった小久保の教えを忠実に実践して、シーズン終了までの24試合で打率263.コツコツと努力を重ねてきた成果だった。
 「もう3年目ですから。そろそろ1軍に定着しないとヤバい。危機感を持ってやらないといけません」。入団直後の挫折、2軍で流したドロまみれの汗、先輩の教え。すべてが体の中に染み付いているからこそ自然に出てくる言葉だったのだろう。募る危機感はエネルギーとなり、男はついにスターダムの階段を駆け上がった。
 2003年10月、阪神との日本シリーズ。川崎は満員の観衆で膨れあがった甲子園のグラウンドに立っていた。文集に「夢はプロ野球でおもいっきりプレーすること」と記した小学生のころ。高校時代は「聖地・甲子園」に目もくれずプロの夢だけを追い求めた。鹿児島ではテレビ中継のなかった第7戦、電話で「日本一」の一報を受け取った父・正継と母・絹代の目には、次々に涙があふれてきた。
 祖父・正則から一字をもらって授けられた「宗則」という名。「宗」には「天下を取る」との意味が込められているという。「今日がよくても明日は分からないのがプロの世界。そのことを肝に銘じた上で、これから先も謙虚に野球と向き合っていきたい」。果てしなく続く道のりに、さらなる物語が待っている。(山本泰明氏の記事より)

2 コメント

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川崎選手は「本物」だっ!! (ほっしぃ☆)
2007-02-07 20:55:17
全て1~10まで読ませていただきました。つらかった日々を乗り越えてきた川崎選手は、本物だと思います。野球以外のことにも、手を抜かず取り組む姿勢はとても尊敬しますね。わたしはWBCからファンになりましたが、これを読んでもっと、川崎選手が好きになりました☆★☆ありがとうございました。
コメントありがとうございます (fwny9385)
2007-02-11 06:17:12
ほっしぃさん、コメントありがとうございます。
今年もさらに進化した川崎選手の姿を見ることができると思います。お互い応援しましょうね。