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環境を考える
風力・太陽光発電:蓄電池が開く道 天候頼みで不安定…「安定電源」に
*2011/3/30 計画停電に関連して追記*
再生可能エネルギーである風力、太陽光発電の普及に大きな障害だったのが、「天候頼みで発電が不安定になる」という点だった。しかし大容量の「蓄電池」と組み合わせることで、弱点が克服されつつある。電気を蓄え、必要に応じて放出できるようになり、「安定電源」への道が開けてきた。【江口一】
毎日新聞 2008年4月28日 東京朝刊
http://mainichi.jp/life/ecology/news/20080428ddm016040009000c.html
日本風力開発の青森県二又風力発電所が5月に蓄電池併設風車の試験運転を開始。
先日、NHKニュースで特集で紹介されていたが、毎日新聞にも掲載されていた。
この記事では、NAS蓄電池がすばらしい!ということが強調されている。
では、NAS電池とはどんなものなのか?
開発したのは日本ガイシと東京電力。日本ガイシのホームページに記載があった。
日本ガイシ NAS電池
http://www.ngk.co.jp/product/insulator/nas/index.html
「従来の鉛蓄電池に比べて体積、重量が1/3程度」というのが大きな特徴か。
気になるのが、電池の寿命。
使用期間15年(4500サイクル)
2500サイクル以降では定格容量を下回りますが引き続きご利用できます。
http://www.ngk.co.jp/product/insulator/nas/nas_data_02.html
15年は、「長寿命」なのだろうか?
もう一つ、「電池の運転温度は約300℃であり、昇温と保温を目的に
ヒーターが適用されています」というのも気になるところ。
300℃とはかなりの高温。ヒーターで加熱しては効率が悪くなる気が
する。効率の記載がないので、これは分からない。
二又風力発電の蓄電池はNEDOの補助を受けて設置されている。
NEDO平成19年度「風力発電系統連系対策助成事業」に係る一部交付決定について
(平成19年4月11日)
http://www.nedo.go.jp/informations/koubo/190411_5/190411_5.html
風力発電出力51,000kWに対しナトリウム硫黄電池34,000kWを併設し、
出力一定制御を行う。
とある。毎日新聞によると、このNAS電池の価格は1kWあたり25万円以上。
34,000kWの蓄電池で85億以上になる。この風力発電施設の総事業費は約
220億円とのことなので、約4割の費用をこの電池が占めていることになる。
*2011/3/30 追記*
Nas電池容量の34000kw(34MW)は定格出力です。
こちらの記事によると、最大8時間の出力ということなので、蓄電池容量は下記の通り。(推計値)
34,000kW x 8 h = 272,000 kWh
NaS電池は動作温度が300~350度と高いため、定格以上の過出力は難しいと思われます。(27万kwを1時間出力というのはまず無理)
*追記 終わり*
http://www.daily-tohoku.co.jp/news/2007/05/31/new0705311102.htm
実際の価格がはっきり分からないが、もし、これで合っていたら、
これはあまりにも高いと思う。
ちなみにNEDOの補助率は1/3なので、蓄電池だけで約28億の負担。
蓄電池併設風車に関してこんな報告書も見つけた。(PDF)
http://www.meti.go.jp/committee/downloadfiles/g40422a42j.pdf
P6によると、レドックスフロー、Nas、鉛蓄電池、どれも安全性、信頼性
問題なしになっている。価格はNas>レドックスフロー>鉛蓄電池の順。
毎日新聞の記載のように、Nas電池でないとダメということはなさそう。
ちなみに電源開発は苫前風力発電所でレドックスフロー電池の実証実験を
行っている。
http://www.nedo.go.jp/informations/other/181107_1/181107_1.html
東京電力が作成した資料も見つけた。
風力発電導入拡大のための蓄電池の活用について(PDF)
http://www.meti.go.jp/committee/downloadfiles/g40603b60j.pdf
蓄電池導入では系統側への集中設置もできるが、東京電力としては風力
発電事業者が費用を負担して、分散設置してほしい。しかも、東京電力が
開発したNAS電池を使ってほしい。と読みとれる。
蓄電池併用風力発電の系統連結は今回の二又風力発電が世界初とのこと。
なぜ日本では風力発電の系統連結がこんなに問題があるのか?
これが一番の疑問。運用方法でなんとかならないんだろうか?
蓄電池併用自体は悪いとは思わないが、現状ではあまりに高額。
しかも電力会社の思惑も働いているよう。蓄電池がなしでは系統連結させ
ない。とならないかも不安だ。特に、東京電力は自分達が開発したNAS
電池に限定しかねない。
もしどうしても必要というのであれば、10~20%の自然エネルギー電力の
定額での買い取りを電力会社に義務づけ、蓄電池は電力会社からの貸出
にしてはどうだろう。前にも書いたが、蓄電池、風力発電の建設、設置時
に国から補助金を支給するのではなく、電力の買い取り金額に補助する形
の方が良いと思う。特に蓄電池の場合は、定率補助ではコスト削減意欲は
出にくい。(電力会社自身が開発した蓄電池を設置するのに補助金を支給
というのは何かおかしい)
現状では、電力会社の温暖化対策は非常に消極的。
東京電力の「地球温暖化問題に関する懇談会」における見解を見るとよく
わかる。
http://www.tepco.co.jp/cc/direct/08042402-j.html
基本的に温暖化対策は原子力に頼っており、自然エネルギーとしては水力
のみ。日本の二酸化炭素の約30%は発電時に電力会社から排出されている。
電力会社が二酸化炭素の削減に消極的なままでは有効な対策はできない。
国としても電力会社への対応を義務づける必要があるだろう。
「チームマイナス6%」で家庭の省エネが進んだとしても、発電時の排出
量が増えてはどうしようもないのだから。
4/30 更新。旧暦では3月25日です。
暫定税率復活するようですね。この1ヶ月何だったんでしょう。
5/1追加
関連ページ
日本の蓄電池併設という風力発電政策を批判
風力の専門誌『WINDPOWER MONTHLY』2007年6月号
http://www.priee.org/modules/pico2/index.php?content_id=52
季報 エネルギー総合工学 Vol25 No.4(2003年. 1)
蓄電池併設風力発電導入可能性調査
http://www.iae.or.jp/publish/kihou/25-4/06.html
再生可能エネルギーである風力、太陽光発電の普及に大きな障害だったのが、「天候頼みで発電が不安定になる」という点だった。しかし大容量の「蓄電池」と組み合わせることで、弱点が克服されつつある。電気を蓄え、必要に応じて放出できるようになり、「安定電源」への道が開けてきた。【江口一】
毎日新聞 2008年4月28日 東京朝刊
http://mainichi.jp/life/ecology/news/20080428ddm016040009000c.html
日本風力開発の青森県二又風力発電所が5月に蓄電池併設風車の試験運転を開始。
先日、NHKニュースで特集で紹介されていたが、毎日新聞にも掲載されていた。
この記事では、NAS蓄電池がすばらしい!ということが強調されている。
では、NAS電池とはどんなものなのか?
開発したのは日本ガイシと東京電力。日本ガイシのホームページに記載があった。
日本ガイシ NAS電池
http://www.ngk.co.jp/product/insulator/nas/index.html
「従来の鉛蓄電池に比べて体積、重量が1/3程度」というのが大きな特徴か。
気になるのが、電池の寿命。
使用期間15年(4500サイクル)
2500サイクル以降では定格容量を下回りますが引き続きご利用できます。
http://www.ngk.co.jp/product/insulator/nas/nas_data_02.html
15年は、「長寿命」なのだろうか?
もう一つ、「電池の運転温度は約300℃であり、昇温と保温を目的に
ヒーターが適用されています」というのも気になるところ。
300℃とはかなりの高温。ヒーターで加熱しては効率が悪くなる気が
する。効率の記載がないので、これは分からない。
二又風力発電の蓄電池はNEDOの補助を受けて設置されている。
NEDO平成19年度「風力発電系統連系対策助成事業」に係る一部交付決定について
(平成19年4月11日)
http://www.nedo.go.jp/informations/koubo/190411_5/190411_5.html
風力発電出力51,000kWに対しナトリウム硫黄電池34,000kWを併設し、
出力一定制御を行う。
とある。毎日新聞によると、このNAS電池の価格は1kWあたり25万円以上。
34,000kWの蓄電池で85億以上になる。この風力発電施設の総事業費は約
220億円とのことなので、約4割の費用をこの電池が占めていることになる。
*2011/3/30 追記*
Nas電池容量の34000kw(34MW)は定格出力です。
こちらの記事によると、最大8時間の出力ということなので、蓄電池容量は下記の通り。(推計値)
34,000kW x 8 h = 272,000 kWh
NaS電池は動作温度が300~350度と高いため、定格以上の過出力は難しいと思われます。(27万kwを1時間出力というのはまず無理)
*追記 終わり*
http://www.daily-tohoku.co.jp/news/2007/05/31/new0705311102.htm
実際の価格がはっきり分からないが、もし、これで合っていたら、
これはあまりにも高いと思う。
ちなみにNEDOの補助率は1/3なので、蓄電池だけで約28億の負担。
蓄電池併設風車に関してこんな報告書も見つけた。(PDF)
http://www.meti.go.jp/committee/downloadfiles/g40422a42j.pdf
P6によると、レドックスフロー、Nas、鉛蓄電池、どれも安全性、信頼性
問題なしになっている。価格はNas>レドックスフロー>鉛蓄電池の順。
毎日新聞の記載のように、Nas電池でないとダメということはなさそう。
ちなみに電源開発は苫前風力発電所でレドックスフロー電池の実証実験を
行っている。
http://www.nedo.go.jp/informations/other/181107_1/181107_1.html
東京電力が作成した資料も見つけた。
風力発電導入拡大のための蓄電池の活用について(PDF)
http://www.meti.go.jp/committee/downloadfiles/g40603b60j.pdf
蓄電池導入では系統側への集中設置もできるが、東京電力としては風力
発電事業者が費用を負担して、分散設置してほしい。しかも、東京電力が
開発したNAS電池を使ってほしい。と読みとれる。
蓄電池併用風力発電の系統連結は今回の二又風力発電が世界初とのこと。
なぜ日本では風力発電の系統連結がこんなに問題があるのか?
これが一番の疑問。運用方法でなんとかならないんだろうか?
蓄電池併用自体は悪いとは思わないが、現状ではあまりに高額。
しかも電力会社の思惑も働いているよう。蓄電池がなしでは系統連結させ
ない。とならないかも不安だ。特に、東京電力は自分達が開発したNAS
電池に限定しかねない。
もしどうしても必要というのであれば、10~20%の自然エネルギー電力の
定額での買い取りを電力会社に義務づけ、蓄電池は電力会社からの貸出
にしてはどうだろう。前にも書いたが、蓄電池、風力発電の建設、設置時
に国から補助金を支給するのではなく、電力の買い取り金額に補助する形
の方が良いと思う。特に蓄電池の場合は、定率補助ではコスト削減意欲は
出にくい。(電力会社自身が開発した蓄電池を設置するのに補助金を支給
というのは何かおかしい)
現状では、電力会社の温暖化対策は非常に消極的。
東京電力の「地球温暖化問題に関する懇談会」における見解を見るとよく
わかる。
http://www.tepco.co.jp/cc/direct/08042402-j.html
基本的に温暖化対策は原子力に頼っており、自然エネルギーとしては水力
のみ。日本の二酸化炭素の約30%は発電時に電力会社から排出されている。
電力会社が二酸化炭素の削減に消極的なままでは有効な対策はできない。
国としても電力会社への対応を義務づける必要があるだろう。
「チームマイナス6%」で家庭の省エネが進んだとしても、発電時の排出
量が増えてはどうしようもないのだから。
4/30 更新。旧暦では3月25日です。
暫定税率復活するようですね。この1ヶ月何だったんでしょう。
5/1追加
関連ページ
日本の蓄電池併設という風力発電政策を批判
風力の専門誌『WINDPOWER MONTHLY』2007年6月号
http://www.priee.org/modules/pico2/index.php?content_id=52
季報 エネルギー総合工学 Vol25 No.4(2003年. 1)
蓄電池併設風力発電導入可能性調査
http://www.iae.or.jp/publish/kihou/25-4/06.html
コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )
« 税制関連法案... | 勝手に提案!... » |
7時間定格出力を維持した場合のKw単価はNasが
一番安いです。
(つまり沢山溜め込んだ場合は他形式より割安)
資料自体の作りに問題があってKwh単価でNasが
一見一番高そうに見えますけど、実際はNasが有望です
(新技術でまだ量産効果が出てないですが)
それと、Nasで相当大容量ですから、恐らく夜間風力
発電した電力を昼間のピークに高値で売ることが
できるでしょう。
【ここがポイント】
電池なしでは夜間6-7円でしか買ってもらえない電力
が昼間ピークに21円で買ってもらえるなら、新エネ
業者としても電池にカネかけるのは悪い話では
ありません。
電力会社としては、
1)自分で電力作って売ったほうが買電より得。
2)天候次第で電力出力が変わり、霍乱するのは
新エネ業者のほうなのだから、霍乱するほうが
安定化装置を買うべき(Nasでなくてもいいけど)
不安定なら沢山は買電できないが、安定して
ピークカットなら高値で沢山買ってもよい
・火力発電もそんなに瞬間的には出力を変動できない
・それにそもそもGHG排出をカットするので、将来
は火力は停止する
3)FITは結構だけど、電力需要以上に新エネルギー
業者が無計画にボコボコ建てて、電力会社が
まだ寿命の残っている設備を捨てる羽目になる
のはおかしい
両者ともハッピーなすみわけは
1)電力は原子力でベース電源を担当する
2)新エネルギー会社は自前で電池を購入して
火力発電が担っているピーク発電を担当する
3)電力会社は昼間比較的高値で買電するが
新エネ会社は、放出電力は電力会社の指示に従う
新エネ業者Aの風力がダウンしたら、新エネ業者
Bは電力会社の指示にしたがい、電池から緊急
電力放出しして穴を埋める
4)火力発電の新設は禁止して、寿命の残っている
火力発電は二酸化炭素貯留で寿命が切れるまで
運転するか、国が補助を出して分解・移設して (40年寿命切れ)原子力発電の建替用の部品として
転用して寿命を使い切る=火力前倒し解体で
新エネ導入枠が広がる
5)国が高速道路に架線してハイブリッドトロリー
バス・トラックの導入を促進して電力需要を
増やして、9電力も新エネ業者もハッピー
世界的に風力の安定化、昼間売電用でNASの輸出は
伸びており、NASを8円/kwhを切る価格にコスト
ダウンして輸出を伸ばすべきでしょう。
NASは東京電力と日本碍子を統合すべきかもしれません
一方で、リチウムイオンでの蓄電連合も開設して
コストダウン競争させて輸出を伸ばすべきでしょう
コメントありがとうございます。
Nas電池はおっしゃるとおり、輸出も進んでいるようですね。
日本風力開発がアメリカの風力発電施設にNas電池を設置
http://www.nikkei.co.jp/news/sangyo/20090317AT1D160BJ16032009.html
つい最近も、仏電力最大手からNAS電池を受注というニュースがありました。
http://www.nikkei.co.jp/news/sangyo/20090508AT1D0809M08052009.html
風力、太陽電池などに蓄電池を設置するというのが悪いとは思っておりません。
ただ日本の現状では、風力からの電力を高値で買い取るという制度がなく、しかも時には解列まで要求される。
風力発電は売電収入というよりも、初期の補助金目当てに開発が進んでいるような気がします。
今のままでは風力発電側に蓄電池の設置を求めるのは酷だと思います。
まずは、自然エネルギーからの電力買い取りを保証し、さらに蓄電池を導入した場合、買電価格を高値にする。となれば、自然と風力サイトが導入することになるでしょう。
蓄電池は今後発展が期待できる技術だと思います。
Nas、リチウムイオン、レドックスフローなど、競い合って日本の得意分野を増やして欲しいものです。