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ニューヨーク州司法長官がIntel社を反トラスト法違反で起訴陪審へ(その2完)

2011-12-27 17:16:04 | 消費者保護法制・法執行

 

(3)ニューヨーク州 反トラスト法“General Business”(GBS)の内容
 反トラスト法である“General Business”(GBS)の内容について逐一解説は行わないが、経済司法部反トラスト局のサイトの同州反トラスト法の解説内容を概観する。


 ニューヨーク州の反トラスト法(340-347 of New York’ General Business law )は一般には「ドネリー法」といわれ1899年に制定された。一部重要な点で異なる部分もあるが、その後の法改正や解釈により緊密なかたちで連邦シャーマン法の内容との整合性が図られてきた。すなわち同法は、価格吊り上げ、地域や顧客配分(territorial and customer allocation)、ボイコット、談合入札(bid rigging)および抱き合せ販売(tying arrangements)を禁止する。
 同法は、司法長官に法人の場合は最高100万ドル、個人の場合は最高10万ドルの民事罰を求める訴訟提起の権限を定める。またプライベート・パーティ(被害者たる訴訟当事者)はこれらの違法行為を禁止させまた三倍賠償を得るため訴訟の提起が出来る。ドネリー法違反は重罪(felony)であり、法人の場合は最高100万ドル、個人の場合は最高10万ドルと4年の拘禁刑が科される。

3.今後の国際的非競争法強化に対応した研究課題についての私見
 わが国では日本企業の海外進出とともにわが国の企業のEUや米国における非競争法違反・制裁問題に危機感をもっており、最近ではあるが経済産業省は経済産業政策局長の私的研究会として、「競争法コンプライアンス体制に関する研究会」を設置し、 第1回会合を2009年8月4日に開催し、以降月1回ベースで開催されている。
 第1回会合配布の「資料4」に指摘されているとおり、同研究会は制裁金・課徴金という行政制裁の強化によるか罰金・禁固刑という刑事制裁の強化によるかという手法の違いは別として、現在、日米欧いずれの競争当局においても、カルテル等の競争法違反行為の抑止という観点から、執行強化がなされているという問題意識から検討が行われている。
 なお、同研究会は、2009年8月から11月にかけてのべ4回開催し、2010年1月29に報告書「『国際的な競争法執行強化を踏まえた企業・事業者団体のカルテルに係る対応策』について」を取りまとめている。

 一方、筆者自身、今回ブログの原稿作成を通じて次のような具体的課題を整理した。①世界的独占企業の非競争戦略の「法的きわどさ」、②中小企業も含むわが国企業の国際化が急速に進む一方で、海外の非競争法の正確な理解の不足や執行機関に関する研究の遅れ、③ニューヨーク司法長官府サイト等で見るとおり非競争行為はわが国でいう「ニューヨーク州内部通報者保護法(New York State False Claims Act)」の機能に期待する点が極めて大である問題であり、各州の運用実態調査の重要性、④連邦司法省サイトで見るとおり、被害者保護面からのオンブズマン制度の機能の実態調査の重要性、⑤わが国の司法関係者や法執行機関のデジタル・フォレンジックに対する意識の低さ。
 これらの課題については、順次最新情報を追いながら解説していくつもりである。いずれにしても、わが国の独占禁止法も含め非競争規制法は経済規制法という側面から消費者保護(消費者の権利保護)法の側面に焦点を当てたさらなる研究が求められよう。(筆者注14)

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(筆者注14) このような問題意識はすでに「第14次国民生活審議会(1992年12月12日~1994年12月11日)消費者行政問題検討委員会報告」において指摘されていた点である。しかし、その後の運用はいかがか。

〔参照URL〕
http://www.oag.state.ny.us/media_center/2009/nov/nov4a_09.html
http://www.oag.state.ny.us/media_center/2009/nov/NYAG_v_Intel_COMPLAINT_FINAL.pdf

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