富島健夫作品 読書ノート ~ふみの実験記録

富島健夫の青春小説を読み感じたことを記録していきます。

純白の季節

2010-04-13 18:26:28 | コバルト
連載:週刊セブンティーン(集英社 1968・昭和43年)

集英社 コバルトブックス 初版:昭和44年6月
装丁・さしえ:吉田郁也

集英社文庫 コバルトシリーズ 初版:昭和52年12月
カバー:赤坂三好
カット:佐川節子

(ちよっと↑のを意識したカバー?)


<純白の季節>

何冊か読み進めてきた作品にはいくつかのパターンがあった。
そのひとつが、一人の男の子をタイプの違うふたりの女の子が好きになるというもの。

今回の作品もまさにそれで、
おとなしい静代とちょっとワルな眉子の、啓介をめぐるお話。

しかし、ただ、それだけだ。
しいて言うなら「父とおばの不倫」「暴行未遂」がスパイスか?
でも塩味も何もない。おばさんはそんなのにはだまされないぞ。
正直「つまらなかったです」とここに書くことを想像しながら読んでいた。

ところが、中盤からいきなり盛り上がってきた!
OH!ふみさんの好きなレジスタンス、そしてアジテーション!
さながらプチ学生運動か?

好きなパターンと別にそうでもないパターンが入り混じる、なんとも不思議な読感だ。


(「戦う男の子」がふみさんは好きらしい。
しかし、実際は生徒会にも反抗分子にも無関心な学生だったし、
作品のような事態が起こっても、彼らにはきっと協力しないだろう)


もうひとつの盛り上がりは、眉子と啓介の入浴シーン。
『純愛一路』では大興奮したが、今回のそれはさながら少年誌のお色気マンガを連想させる。

学校やPTA会長に立ち向かったり、不良と戦ったり、女の子にモテモテだったりと、
啓介はある意味ヒーローだ。

ロマンチックな題名とカバー絵にそぐわず、これはどちらかといえば男の子向けの作品と言えるかもしれない。

しかし自分の嫉妬心や欲望と葛藤する静代と啓介の姿には、やはり「まじめ」さが見える。
対して眉子が、途中珍しく“イヤな女”。
いつもはこの手のキャラも、なんだかんだいって愛すべきものなのだが。

「父とおばの関係の真偽は?」「赤い髪の女は結局誰だったのか?」など、
瑣末な疑問は残ったが、ラストでまたドキドキしたからいいや。

でもストーリー展開は当時としては結構過激かも。
そういう意味でも男の子向けの印象がある作品だった。


※ちなみに『湖は慕っている』にも同名の作品が収録されていますが、まったく別ものです。


2010年4月13日読了


>>次は…『これが男の子だ』


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