ずっと探していたブリギッド姉様に再会して、すごく嬉しい筈なのに、今、心がざわつくのは、仲良さそうに話す二人を見ているから。
「相変わらず美しい方ですね」
ブリギッド姉様に再会したとき、ミデェールがそう、シグルド様と話しているのを聞いてしまった。
子供の頃からミデェールは姉様に弓の特訓を受け、まるで姉弟のように仲が良かった。
そして今、大人になった二人はお互いどう思うのだろう。
楽しそうに話す二人を見てドロドロとした感情に支配されそうになる。
何の話をしているのだろう。
私と話す時より緊張が和らいでいるように見える。
この気持ちを振り払いたくて、二人に声をかけてしまおうと、一歩重い足を踏み出した、その時。
「…………っ!」
ブリギッド姉様が少し背伸びをして、ミデェールの耳元に何か呟いた。
ミデェールの頬に唇が触れそうなほど近付いた二人はまるで恋人同士だ。
何かを呟かれたミデェールはかっと顔を赤く染めて、何やら照れている。
気付けば二人に背中を向けて走り出していた。
あれ以上見ていられない。
駄目だ駄目だ駄目だ。
黒い感情が止まらない。
ブリギッド姉様と再会なんてしなければ良かった。
ミデェールなんかブリギッド姉様に嫌われてしまえばいい。
そんな事ばかり考えてしまう。
「エーディン様」
突然後ろから声を掛けられる。
「どうしたの、ミデェール」
振り向くことをせず、努めて普通の声色を作る。
「走って行くエーディン様が見えたので追いかけてきてしまいました。……どうかなさいましたか?」
「…………ごめんなさい」
「?」
振り返るとミデェールと目が合った。
私を慰めるようににこりと笑ってくれる彼を見て、さっきまでのドロドロが消えていく。
「エーディン様。昨日クッキーを作ったんです。食べてくださいませんか?」
「…………ありがとう。頂くわ」
今、ミデェールが側にいてくれることに感謝しよう。
ミデェールが側に居る間くらいは綺麗な自分でいよう。
そう心に決めて、歩みを合わせてくれるミデェールの側をゆっくり進んだ。
言い訳
うちのミデェールは女子力最高です。