ファミリー メンタル クリニック

児童精神医学,サッカー,時にテレビや映画、Macのネタ。
要するにひとりごと・・・

女王の教室から考えたこと 5 理想自我

2005年09月22日 | 児童精神医学
最終回を見て勢いで書いているこのblogですが,今回の理想自我については,少し難しいテーマになります。
「自分の理想を追い求める」自分自身が,「理想自我」と考えて下さい。
ワールドカップに出たいとか,勉強で東大に入るでも良いです。
目標や夢といっても良いかもしれません。でも果たしてどれだけの人が自分の夢や理想を手にすることが出来るでしょうか。
阿久津先生がいう6%の人しか幸せになれません・・・そんなことかもしれません。自分の生き方が子どもの頃の夢と一致するのは。
皆,健全な形で夢をあきらめて大人になっていきます。(次回は自我理想について述べます。ですからここであきらめるという表現はマイナスのイメージではないのです。)
漫画家になる夢,サッカー選手になる夢(これが理想自我です)をあきらめろと,阿久津先生は言っているわけではないのです。
中田選手のように,サッカーだけではなくて勉強も必要だということです。世界に活躍するプレーヤーになりたかったら,イタリア・イギリス・スペインのチームでしょう。勉強もしないでサッカーばかりしてたら中田の成功はなかったでしょう。
イタリアに渡る前からイタリア語の勉強をしていたはずです。

また仮に少年がJリーガーになったとしましょう。プレーで生活できるのは数年です。それで一生の稼ぎがあるのでしょうか。
仮に契約金を1億円もらうような選手になったとして,次の年怪我で選手生命を絶たれることもあります。
もっと「大人」になりなさいと,その辺の子どもたちに諭しているのです。
理想自我には罠があるのです。

さてこのドラマの最終回で 理想自我をめぐるパラドックスが面白かったです。脚本家がそんなこと考えたかはわかりませんが。
現実直視のこのドラマで最終回だけは,マンガの様な無理な展開がありました。阿久津先生の部屋と行動パターンです。
24時間子どもたちを見守っている姿と,「何か事件を起こせば真矢が助けにくるぜ」と彼女を理想化したところです。
阿久津先生が常々言っていることは,そんな夢みたいな話はないんだと言っているのです。
生徒たちは最終回で真矢をまるでスーパーマンと勘違いしたようでした。
でも脚本家は,「私は自分が素晴らしい先生だと思わないし,どんな先生が素晴らしいのかも分かりません」ときちんとした科白を用意していました。

きっと子どもたちは阿久津先生を「理想」化しながらも,でも俺たちのために夜も寝ないで倒れるなんて真矢も駄目だよな・・・と笑いながら,脱「理想」化していく仕掛けが隠されていたのです。

理想自我の世界から抜け出せなくなると,一部のニートや引きこもりのような人の持つ完璧ではない自分は世の中で生きていく資格がないんだと,大きな勘違いをしてしまいます。
将来や自分への不安は,この理想自我と自分がかけ離れているときに痛感するものです。
その罠にはまらないため,今をしっかり生きなさい!と,教室から去っていくとき,皆に話したのです。

自分の出来る範囲の中で精一杯頑張ることは,理想自我のみ追い求め,現実から乖離してしまい,神経症化を防ぐ方法です
(そのためには自分の限界を知ることが大切です。阿久津先生が教えてきたことは,早く自分の限界に目覚めなさい ということだったのでしょう。ドラマの方法論としてかなり反対意見があったのですが。)

(注)
サッカー部員集団万引き! 
たまたまサッカーばかりやってないでと例えであげたら こんなニュースがありました。
甲子園出場で全国版ヒーローになる高校生は,授業免除で朝から野球をやっているのが汗・青春・感動の背景ですからね。
スポーツは何のためにやるのか指導者やサッカー協会・高野連はもっと徹底的に指導して欲しいですね。

番外編 私らしく生きること Macについてのコメントです。
「その6 自我理想」へ続く

最新の画像もっと見る