スズキスイフトRStに2時間ほど試乗したので、その時感じたことをまとめてみました。
スズキスイフトRSt (平成29年8月3日 木曜日)
2時間試乗での感想
もっさりした変速。まるでCVTのようだ。
スポーティーモデルで6速AT、ロックアップ付き。
マツダデミオ6速ATのような変速感を予想していたが、違っていた。加減速時の変速がもっさり。加速もふわっとしている。このような変速感に仕上げるのなら、ステップATである必要はない。CVTに擬似的段差を付ければいい話だ。何故意図的にCVTに似せた仕様にしたのかはわからない。
ロックアップは何速で、何回転からなされるのか知らないが、2時間の試乗ではわからなかった。私が鈍いだけなのかもしれない。
マニュアルモードにして加速するが、べた踏みでもレッドゾーンの6,300回転まで届かず、5,800回転くらいで切り替わる(最高出力発生時の回転数は5,500)。減速時もなかなか下のギアに入らず、ピピッ、ピピッと言うばかり( 減速時4,800回転以上になると判断すると変速しないようだ )。パドルシフトがついて雰囲気だけは出しているが… 。フロアシフトで変速できない。マニュアルモードなのに勝手に加減変速する。ここでもこの車の性格が分かる。乗っていて楽しくない。少し欲求不満になる。
スポーティーなのはRStの名称と乗り込んだ時視線に入る雰囲気だけのような気がする。売れるのだろうか? 私は買う気にならない。一体どういう人を対象にしてこの車を作ったのだろう。
駐車ブレーキがレバー式なのは良い。ペダル式ならこの車を蹴飛ばしている。試乗当初、本当にそう思った。
メーター周り。速度計と回転計が、ハンドルの隙間から見るには離れすぎているように感じる。工夫が必要。二つの計器に挟まれた中央のアナログ風デジタル時計は、見にくい。最初何の表示かと思ったが、自分の針式腕時計で現在時刻を見た時、初めて時計だと気づいた。上段に表示している時刻と温度の文字が小さい。
乗っていて違和感が段々強くなる。勝手に予想していた出来と違いすぎているためだ。RStの名前は刺激的。
ゆっくり加速すると1,900回転辺りで変速していく。少しアクセルを踏み込んでも、非常になめらかに加速していく。減速も然り。変速時の回転数を含めこの印象は、まるで以前乗ったアリオンやマークXのようなトヨタ車に酷似している。決して褒めていない。私は、一番嫌いな国産車はトヨタだ。
車外からの侵入音はよく消されていると思う。走行中の路面のザーザー音などは、乗り込んだ初めの頃はほとんど感じなかったが、しばらくして耳が慣れてくると、目が粗い舗装路からのザーザー音や、天井辺りからの風切り音が聞こえてくる。このザーザー音を消してほしいのだが、このクラスの車では難しいのだろう。それでも室内への侵入音は適度に消されていて、大きなストレスにはならない。
エンジン音も、当然回転が上がればそれなりに入ってはくるが、3,000回転くらいまで特に室内に不快な音は入らずエクゾーストノートだけが入り、また常用で不快と感じることはなかった。
速度がはっきりしないのでよくわからないが、高速走行で80km / h 程度の車線変更では、隣の車線に移ってから直進に戻る時ふらついて少々怖い。腕の問題かもしれないが、この車は一発でいつものように戻らない。数回試してそうだった。しかし、交差点からの右左折急発進加速では、スキッドはするが車体は揺るがず、そのままハンドルに修正を加えることもなく交差点を通過したという優れた点もある。
ハンドルを少し切ったときサッと向きを変える鋭さはスポーティー感を演出しているが、私はこの車のもっさりした変速を考えると車の性格に似合わず、あまり好きではない。というか、CVTではなくせっかくステップATを採用したのだから、もっさりではなくスパッと変速、素早く変速してほしい。
この点マツダデミオは、マニュアルは必要ないのではと思わせるほどのATの出来だったし、鈍い私でもロックアップされているのがわかった(試乗の時間は倍近かった)。切り返しの多い山道は余り得意としない車だが(特にディーゼル)、この点はかなり大きな違い。私はデミオを支持する。
スパッと、思い切りと割り切りのいいのがスズキの長所だと思っていたが、何だか変に八方美人向けに仕上げているような気もして、がっかりした。スズキでもこんな面白くない車を作るんだと。
とある場所。一方通行2車線。時速40㎞程では緩やかに感じる右旋回登り250m程。それから直線200m程して右旋回下り200m程。下りは時速60㎞を超えると腕が試されると思われる。右旋回で降りていく時のカーブでは途中金属の継ぎ目段差があるが、ある程度速度を上げて走行すると "ドン"といって通過後ハンドルを素早く左右に修正する必要に迫られ、怖い思いをした。前輪が一瞬空中に浮いているのだが、ゴルフ、ポロ、スプラッシュ、スイスポ等当然ハンドルの修正はあるが、怖い思いをしたことはない。緩衝装置の硬さにも原因があるのだろうか。もしもスポーティー車、スポーツ車だから緩衝装置を硬くしなければならないと考えているのであれば、その手の車を買う人がそれを求めていると考えているのであれば、自分勝手な意見ではあるが、違うのではないか。前後の均衡の取り方、設定の考え方などあるとは思うが、足はしなやかに動き、しかし強い入力がかかる時は踏ん張って腰砕けにならず不快な突き上げを感じない、低中速時にはよく動く、そんな足と車体がいいと私は思っている。コストのことなど何も考えない素人の意見ではあるが、それに近づけてほしいものだと思う。今回のRStの挙動は、論外と思う。
私はこの車を、街乗りで少しキビキビ感を味わい、パドルやメーター周り、ハンドル形状などでスポーティー感を楽しむ車だと勝手に思っている。この車で時には山道を走って楽しもうなどとは毛頭思わない。おそらく怖い思いをするだろうから。
一時期スイフトスポーツZC32Sの手動変速車に乗っていたことがあるが、当然と言えば当然だが、全然違う車。RStを買うくらいなら、スイスポのCVT車を買う(新型の1,400ccターボが出る前の話)。CVTながら変速が非常に好感できる車だし、それ以外も。
二、三十km程の速度域では、緩衝装置は硬いが車体(取付部)がそこそこしっかりしているのか、中程度の凹凸では嫌な衝撃もなく、いい仕事をしている。但し、原因が緩衝装置に起因しているのかその他にあるのかは分からない。この範囲に限っての初動は、以前所有していたスバルレガシィに装着されているビルシュタインの筋肉質感を僅かにではあるが想起したとは言い過ぎだろうか。しかし、凸凹が大きい時にあと少し突き上げを感じないような補強をお願いしたい。凸凹が増すと、不快ではないまでも感じるから。
加速時は、ターボが効くまでゆったりで、少しいらっとする。ターボの効き始めは、体感として2,000回転を少し超えてから。ポロはカタログ上1,400回転から最大トルクを発するので、スイフトも頑張ってほしい。
運転座席は、個人の好みかもしれないが、背骨真中部分が出っ張って支えるのは、左右で支えているといっても私は好きではない。ただし、背もたれ部分の硬さは、当たりはふんわりしているものの2時間程度の試乗では変形幅は小さく、好感が持てた。長時間乗車でどう変化するか興味がある。エブリイワゴンとは大違いだ。このふんわりが多くの人は好きなのかなぁ、と少し複雑な気持ちになった。あぁ、スプラッシュのシートが欲しい。
ハンドル下部はプラスチックで装飾されていて、かつ径が細く感じる。装飾は必要なく総革巻きでよい。 D型は必要ない。プラスチック装飾スポーク部分の裏処理が雑で、ハンドル操作中指を切るかもしれない。ハンドル下部を握って運転していると、長くは握っていたくない気持ちになる。ここは握るところではなく、単なる見てくれの飾りと私は理解した。下半分を持って運転する人は少なからずいると、自分がそうだから思ってる。
試乗車は直進性が非常によく、長距離走行での疲れは少ないと予測する。この点は、ルノールーテシアといい勝負か、勝っているかもしれない。フランス車のスタビリティーが好きなので、高く評価したい。
ハンドルのテレスコピック調整幅が、前側にもう少しあればよいと思う。手足が短い人のために。
アクセルを踏み込んだときの変速をもう少し早く。
アクセルペダルをもっと右に移動してほしい。
ハザードが遠い。ハザードは急制動時作動する仕様としたので遠くに設置可能と判断したのだろうか?
試乗車の平均燃費は11.5 km/ hと(自分以外を含む)、モード燃費との乖離はいつものことだ。
グローブボックスが小さい。エブリィワゴンもそうだし、スイフトもそうだし、スズキ車全般に言えることなのだろうか。
ドアポケットにはA4サイズの雑誌などを入れるといつものごとくたわむのではないかと思うが、何かいい方法はないか。行楽地などへの運転で、この点はいつも憂鬱だ。
〇せっかく6ATを使っているのにCVT感を出したのは残念だった。スイスポとの違いは興味がある。6ATを採用したのは評価。
〇遮音はよくされている。
〇緩衝装置が硬すぎ.かつ中速域以上で挙動が不安定になることがある。
〇雰囲気を楽しむ車だが、多少本気を出して走ったときは怖い思いをすることがある(技量の問題)。
〇どういう層を狙って作ったのか私にはわからない車。幅広い層を狙ったか? 敢えて言 えば、街乗りで少しキビキビ感を味わい、パドルやメーター周り、ハンドル形状など でスポーティー感を楽しむ車か?
〇スズキの車作りに失望した稀な1台。
今回、後部座席は試していない。