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旅つづり、日々つづり

旅先で思ったこと、日々の暮らしで感じたこと。そのまま言葉にのせてみました。

保育園にモノ申す。

2010年11月17日 20時26分40秒 | 日々のくらしあれこれ

地域の保育園見学にせっせと通っている。

来年春から息子を入れる園はどう考えても自宅近くの保育園しか選択肢がないので、迷う余地はないのだが、職業柄他の保育園をあちこち見て回るのは本当に勉強になるし、自分のこれまでの保育を見直すとてもいい機会にもなっている。

私が住む地域には比較的新しい保育園が多いので、設備面は「うっ、うらやましい・・・」とびっくりするばかりである。廊下の奥にさりげなく職員専用シャワーと記された看板をみて、思わず転職を考えてしまったぐらいである。(夏場、保育士はほぼ一日中クーラーのない炎天下、プール準備、プール掃除、そして汗だらけの子どもを抱えて過ごすのだよ。更衣室がどういう状況になっているか・・・それはとてもここでは言えない)

おもちゃや遊具に関しても、本物のいいものがしっかりと揃えられている園が多い。絵本のセンスも抜群だ。そして何より新しい設備はセキュリティーの面でかなり信頼がおける。

ハコに関しては文句のつけようがない園が数多くある中、今日訪れた保育園はその中でもピカイチの規模だった。

デザイナーが設計した園舎。間接照明を多様したホテルみたいな空間。オープンキッチン。1000冊を超える絵本コーナー。お茶室。などなど・・・

案内してくださる園長先生の話を聞いていると、その保育園がどこを向いて保育しているのかだいたい分かるものだが、今日の場合は完全に「大人にとって都合のよい、サービスを追求した保育」を目指しているように私には感じられた。

一人ひとりに与えられた羽毛布団、転ばないように敷き詰められたチップ材、手をかざすだけでお湯がでてくる蛇口、おそろいのブランド制服、明らかに大人の意思と手が加えられたことが分かる「作品展」、暗くなると自動で灯る間接照明・・・

そのひとつひとつが「子どもたちへの未来への贈り物」だそうだ。

どの子どもにも「未来を切り拓く力」をしっかりと身につけるのがこの園の保育目標。

私はこの園を批判したい訳ではない。憧れる部分はたくさんあるし、職員の対応も本当に素晴らしかった。(立ち止まって挨拶するだなんて、私の保育園ではありえない。いつも子どもが側にいるし、そうでないときは廊下をドタバタ走ってるのが現状)

だけどひとつ言いたい。これだけは言いたい。

保育園は福祉施設であること。これを忘れてないか?

私は園長先生に質問した。

「布おむつは使っても構いませんか?」

「うちではお母さんの負担を軽減することを最も重視しているので、荷物も洗濯物もなるべく少なくするようにしている。なので紙おむつしか使えません」

「冷凍母乳を与えてもらうことは可能ですか?」

「衛生面を考えて全て粉ミルクで対応しています」

「土曜日に登園しているお子さんはどのくらいいらっしゃいますか?」

「お医者さま(お医者さまって言った。さまって)のお子様など、土曜日仕事される保護者の方もいらっしゃるので、登園してくるお子さんはおられますよ」

この園がこの界隈でとても人気があることも納得。ここが福祉施設だとは誰も思うまい。

大学の時に教わったことで、今も心のまんなかにある言葉がある。

「これだけは覚えときやー。他の授業の事は全部忘れても現場ではやっていけるけど、これだけは忘れたらあかん!!これを忘れたら終わりや。あのな、福祉っちゅうもんは難しく考えたらあかん。“ふこうな、くらしを、しあわせにする”これが福祉や」

すごくおもしろい先生で学生にも人気があったけど、冗談言ってても目の奥は笑ってなくて、私はなんだかこの先生のことが怖かった。だけど、この言葉は大切に持っていようとその時誓った。そしてこうやって今も何か考えるたびにこの言葉を思い出す。

保育園は母親の自己実現の場ではないと思う。保育園は「命の現場」でないとあかんと思う。

それに母親をそこまで楽にさせて、その先にあるものは一体なんなんだろう?子育ては仕事のようには思い通りにいかないし、みっともないことや、格好悪いことがいっぱいだ。人に頭をさげてばかりになるし、子どもは思うようには(きっと)育たない。わざわざ苦労する必要はないと思うが、私から見てこの保育園は「育てる手間」を放棄しているように見えた。

保育園が福祉施設である限り、一番しんどい家族に寄り添わないとあかんと思う。中の上の暮らしを上に持っていくのではなく、下の下の暮らしをせめて精神的にだけでも中の下くらいにひきあげる役割を担える場所でないとあかんと思う。

子どもが眠ってから、コンビニに働きに出るお母さん。生活のためにトラック乗ってるお母さん。自分の髪の毛を切る時間がないから夜中に風呂場できっちゃうお母さん。朝4時に起きて、その日のご飯を全部作ってから出勤するお母さん。財布の中にお札が一枚も入っていないお母さん。ホステスやってるお母さん。たった一人で産院から子どもをアパートに連れて帰ったお母さん。お母さんいなくなって一人で育てているお父さん。

みーんな土曜日も働いてるよ。

「ふこうな、くらしを、しあわせに。」

その定義は人それぞれだ。だけど「命」を守る。つまり、安心して「食べて」「寝て」「遊べる」場所を提供する以外に保育園にできることはないと思う。子どもにとってはお母さんに変わるものは何一つないのだから。

それができるのは、緑いっぱいの芝生じゃない。絵本じゃない。ドイツ製の木製おもちゃじゃない。オープンキッチンの給食室じゃない。

私たち保育士の“手”や“まなざし”や“笑顔”だと信じたい。

 

 


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2 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

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初めまして (とも)
2010-11-29 13:21:10
とある記事を探していたところ、
こちらのブログに行きあたりました。
それ以来、ちょくちょくのぞいています。

私も福祉の仕事をしているので育児のこと、
保育園の在り方などなど、
共感しながら読ませてもらっています。

【「育てる手間」を放棄しているように見えた】

今の保育園の流れや福祉全体の流れを
象徴するフレーズだな、と思いました。

これからも応援させてもらいます。
返信する
はじめまして (kozue)
2010-11-29 19:46:25

>ともさま

はじめましてこんばんは。
同じ福祉の仕事をされている方からの
コメントは初めてで、少々緊張していると同時に
背筋の伸びる思いです。ありがとうございます。

ブログを見つけてくださったのも、きっと何かのご縁。
それぞれの場所でお互いにがんばりましょうね!

本当はきちんとお会いして「よろしくお願いします」と
ごあいさつしたいような気持ちですが、
よろしければまたともさんの意見なども
お聞かせください。
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