美と知

 美術・教育・成長するということを考える
( by HIGASHIURA Tetsuya )

関西学院所蔵の絵画展2「ART of the BIBLE」

2011年03月19日 | 教育美術
関西学院所蔵の絵画2
“ART of the BIBLE”―視る聖書の物語―


という企画を関西学院大学博物館開設準備室の方たちと進めています。



■日時: 2011年4月01日(金) 10時 00分 ~ 2011年06月10日(金) 16時 30分
無料。日曜、祝日は休館。
■場所・開催地:関西学院西宮上ケ原キャンパス 時計台2階展示室


普段目にすることが少ない関西学院所蔵の絵画20点ほどを企画展示します。
5月18日(水)には 神戸で制作を続けておられる画家作家・堀江 優氏に記念講演会「聖書の中から人間の弱さを描く」を行っていただく予定です。

■一般参加可、
■問い合わせ:博物館開設準備室(0798-54-6054)




テキストby東浦哲也

「関西学院とキリスト教美術」

関西学院は1889年にアメリカ人宣教師W.R.ランバスによって神戸原田の森に創立されました。そして、キリスト教主義にもとづく教育が、戦時中の大きな苦難の時を乗り越えて現在に受け継がれてきました。
第4代C.L.ベーツ院長が関西学院のキリスト教主義教育を表現した「Mastery for Service」という言葉、それは究極のデザインです。そして、1929年に神戸から西宮に移転する際のW.M.ヴォーリーズにより設計された中央芝生、時計台を中心とした「関西学院キャンパス・プラン」そのものがキリスト教精神を表現した芸術作品といえるものです。

芸術作品には、物事を知識として知るということではなく、人間の感性を通して心から心へ直接的に、体感的にメッセージを届ける力があります。
時を越えて、場所を越えて、優れた芸術作品は私たちの心に様々な感動を生み出します。
「感じ取ること。感動すること。」
深い感動によって私たちの心に宗教心が目覚めます。そしてその経験が他者への思いやりの心を深め、平和な社会を作り出す第一歩となるのです。
関西学院でキリスト教美術と出会う意味がここにあります。

聖書は、旧約聖書と新約聖書によって成り立っています。
旧約聖書は、もともとはイスラエルの民の口伝で、「神の天地創造」の物語から始まり、「アダムとイヴ」、その子「カインとアベル」…「ノアの洪水」…「アブラハムとその子イサク…ヤコブ…ヨセフ…モーセ…ダヴィデ…ソロモン…」と、イスラエル(ユダヤ)の民の歴史物語が描かれた紀元前600年頃のものといわれています。
新約聖書は、「受胎告知」「キリストの誕生」・・・「キリストの布教活動」・・・「最後の晩餐」「十字架」「復活」など、イエス・キリストの生涯に沿った物語が描かれています。

キリスト教美術はもともと文字が読めない人々にも、聖書の物語や神様の教えが体感的に伝わるようにとの目的で中世の頃までヨーロッパを中心に発達してきました。
人々は美術作品から神を直接的に感じ、神の子イエス・キリストの生きかたの中に人生の教訓、救いを見出してきたのです。
今私たちが知っている聖書の物語も、まず美術作品を通して出会った・・・ということが数多くあるのではないでしょうか。

紀元後のヨーロッパ社会はキリスト教を軸に展開してきました。4世紀にローマ帝国でキリスト教が国教となってから、キリスト教およびキリスト教美術も急速に発展しました。神の栄光を讃え、聖書の物語に題材をとった優れた芸術が数多く生まれてきたのです。
日本には鉄砲伝来とともに南蛮文化としてキリスト教およびその文化が入ってきました。その後、鎖国や禁教などの苦難の時を超えてキリスト教が根付いていき、明治以降、聖書の物語が美術の主題として登場するようになります。

今回の展覧会では、関西学院が所蔵する小磯良平(1903-1988)、田中忠雄(1903-1995)、渡辺禎男(1913-1996)、鴨居玲(1928-1985)、堀江優(1933-)ら、戦後日本近代美術を代表する画家たちが描いた、キリスト教を題材とした絵画作品を中心に聖書の物語をたどります。

関西学院発祥の地、神戸は異国の文化を大らかに受け止め、育んでいくことのできた町です。宣教師W.R.ランバスがこの地に学校を作ろうと思えるような要素が多くあったのではないでしょうか。その神戸に育ち、キリスト教が身近にあった画家、小磯良平、田中忠雄、堀江優、そして、中学時代に関西学院に在籍した鴨居玲が日本を代表するキリスト教美術を生み出したことは決して偶然ではないような気がします。キリスト教で結ばれた見えない糸がこの阪神間には沢山あるのです。

神に祈り、描き続けた画家たちの呼吸、精神を、絵画の一筆一筆の痕跡の中にダイレクトに感じ取ることができます。描くという行為により、自分を神の前にさらけ出し、自分の弱さを見つめ、そして、無心になって神と向き合い、真理に到達したいと願い続ける真摯な姿です。
今回の展覧会では、画家が自分の命をかけて生み出した表現の中に込められたメッセージを、時空を超えて感じ取り、そこから新たに生きる力を見出す機会になればと願います。
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