EQUAL PARTNERSHIP BLOG

(株)イコール・パートナーシップのブログです。

ビジュアルコミュニケーションツール-1

2006-11-01 19:05:06 | Weblog

今年の初めから2ヶ月に一度、ある企業の社員を対象に
スケッチの講師をしています。
私は、そんなに上手い訳ではないので上手な人に教える事はできませんが、
下手な人には教える自信があります。
何故なら、下手だった自分がプロとして、何とか通用する方法を実践し
マスターしたからです。^^

CGやCADが主流になり、プロでも絵の描けないデザイナーが結構います。
パソコンで表現することは今や必要不可欠ですが、
こころで感じたイメージを、すばやく表現できるスケッチも大切です。
要は、両方とも必要なのです。アイデアを山のようにエスキースした後、
パソコンの機動力でプレゼし細部をスケッチで確認しながらCAD化する。
“こころ”にあるデザインを、クライアントから職人の方まできちんと同じ様に
理解してもらう事が大切です。

実際の仕事の中で実践してる事を講習してますが、
内容の一部を載せようと思います。

この中で、私は不得意なことは習慣にすれば克服できると云っていますが
自分に置き換えると、企画書はそれなりに描けますが、文章がすご~く苦手です。
それなら人に言う以上実践しなければと思い、その企業の社員と一緒に
克服しようと思ったのがBLOGを始めたきっかけです。

私のBLOGを見ている方には、デザイナーを目指す若い学生諸君や
デザイン関係の方がいます。デザイン関係以外の方でも、
参考になるかどうかわかりませんが、是非どうぞ。でも、ちょっと長いのであしからず。




★上の写真は1回目の写真です。
 建築やデザイン関係の仕事をしてる方は誰でも『先生』と呼ばれます。
 20代のヒヨッコでも、現場に行くと業者からも先生と呼ばれるので
 決して偉くはありません。あの姉歯さんでも、最初は姉歯先生と呼ばれ
 てました。 最後は、呼び捨てでしたが・・・。


Ⅰ、スケッチ講習の目的について。

コミュニケーションツールとしてのスケッチをレクチャーし、
フリーハンドで考えられる、フレキシブルな発想の訓練と自分の考えを相手に
正確に伝えられる表現力を身に付けることで、
クオリティが高く無駄の無いモノ作りを指向する事が出来ます。
そしてこれはもちろん趣味としてではなく、デッサンより『クロッキー』を主体に、
すばやく描く表現力を身につけ、あくまでプロフェッショナルとしてマスターすることです。
そして、いくら上手でも時間がかかるのはいけません。
プロは時間が勝負なのです。話をしながら、
“こころ”に感じたイメージを、すばやく『フリーハンド』で描けるようになる事です。


Ⅱ、何故スケッチが必要なのか?

1、ソフト面から考えると。
 
私は自分にとっての仕事をこう考えています。

アイデアやデザインを考える時、使う人の気持ちで夢を見ます。
スキルは、その夢をカタチにする為に必要な事です。
私にとっての仕事とは、夢を見続ける事で叶う喜びでしょうか。


芸術とは違う商業デザインは、自分の好きなものや得意なものだけを依頼され
る訳ではありません。
 
必ずお金を出すクライアントがいて、そのクライアントの考え方を整理しなが
ら方向性を決めて行く訳です。
 
その場合、
使う人の夢を→自分の夢だと思って考えます。
スケッチと云うスキルは、自分の心⇒つまり考え方や想いを伝える為の手段です。

■デザインや設計業務だと、図面やパース&コンセプト作り。
 
■施工業務だと監理力や図面。
 
■営業だと言葉(会話力)やコンセプト作り。

になると思いますが、聞いたり、読んだりする他に、
見てわかってもらう手段がスケッチだと思います。

2、ハード面から考えると。

“モノ”作りに携わっている我々は、考えたモノを自分で製作するのではなく、
色々な人と協力し合って作り上げていかなければならないので、自分のデザイ
ンや考え方を正確に伝える、間違いの無い伝達方法が必要です。


言葉 書類 図面 そして老若男女、性別、国籍、ジェネレーションに係わらず、
誰でも分かり合えるものが、スケッチであると思います。

この 言葉 書類 図面 + スケッチがバランス良く表現出来ると、読んだり
聞いたりして理解するのではなく、
見て理解してもらう事が出来ると思っています。

一時、商業施設ではVMD(ビジュアルマーチャンダイジィング)視覚的効果
による商品化政策と云うのがありましたが、
スケッチの効果は視覚的効果による対話。
つまりビジュアルコミュニケーションだと思います。
MACなんかクリエーターに支持されているのは、この事が大きいと思います。

若い頃設計監理をしていると日常茶飯事なのが、図面で指示したり、
ちゃんと言葉で伝えたとしても、全然違うものが出来たりする事があります。
その時は作り直してもらう訳ですが、お互いに自分が正しいと思うし、気分が
悪くなったり頭にきますし、喧嘩になる場合があります。
いやいや直したものは、心を込めて作らないのでいつまでたっても
引渡しが完了しません。
そんな事を繰り返す内、何とかその行き違いを解消する方法がないかと考えました。
 
図面が分かりづらい時は納まりをスケッチで描くとか、打合せの書類にも
間違い易い所をスケッチを描いて相手に渡す事で、カナリ解消する事が出来ました。
何処が間違い易いかは図面を書いている時必ず分かります。

この事はクライアントに対するプレゼンテーションでも同じです。

お互いのイメージをビジュアルで確認しておかないと、出来てからこんな
イメージじゃないとか、ちゃんと言った筈だとかになり易いです。

イメージ全体やメインの部分は、3Dとかパースでプレゼしますが、
細部については、案外言葉だけで伝えたりしている様に思います。
クレームは日常的に使用する機能や細かい部分の方が、えてして多いものです。
ちょっとした事でも、その場でスケッチを描いて確認し合うとかしておけば、
トラブルは限りなく“0”に近くなります。

よくあのクライアントは細かくてうるさいとか、あの業者は頭が悪くて
理解力が無いとか云う人がいます。判っているなら対応の仕方を最初から
考えれば良いので、頭が悪いのはその本人だと思います。

それよりお金を出して使う人が、キチンと理解する様にする事が重要だと思うのです。

この事から、スケッチを描くにあたり一番大切なのは、“思いやりの心”
つまり、 人やモノに対する愛情の深さじゃないかと思っています。
きちんと相手に伝わるように、こころを込めて描くことなのです。
だから、もし上達しないのなら思いやりの心が足らないと思ってください。


Ⅲ、どうしたらスケッチがうまくなるか。

スケッチがキライな人に教えても、いやいややらされると思いながら描くと
上達する訳がありません。
じゃ、きらいだったり下手な人が上達する為にはどうしたら良いかと云うと、

結論は、毎日必ず描く事です。そして描く事が好きになる事です。

じゃどうしたら好きになるかと云うと、毎日描いて上手くなれば自然と好きになる筈です。
だからキイ・ワードは毎日描く事です。

昔から良く云うじゃないですか?不得意な事は習慣にすれば克服出来ると。
只やみくもに描いても効果はありません。
デザインに携わっているのならいざ知らず、特に営業の方が何でと思う筈です。
一番大切なのは、目標というか目的を明確にする事です。

スケッチがうまくなってどうしたいのか?という!!

■デザイナーやコーディネーターだと、クライアントにデザインを正確に伝えて
  夢をカタチにしたい。

■コーディネーター やバイヤー だと、わかり易い資料作りで間違いの無い
 効率の良い仕事をしてトラブルを0にしたい。

■現場監理だと、施工業者に難しい納まりを正確に伝えて無駄な間違いを無くし、
  効率の良い仕事をしたい。

■営業だと、クライアントの考えをすばやく整理して、
  誰でも分かるコンセプトを明確にして効率化を計る。

という様な事です。

毎日描いていると、ある時、対象となるモノの性質というか表層の内側にある
本質みたいなものを感じる筈です。
これはよーく観て描き続けた人にしかわからないと思いますが、
そこからが始まりだと思います。

目でみたモノを心で表現出来る様なモノです。


それ迄は徹底的に模写してください。

昔、ルーブル博物館で画家を目指す若い学生達が、毎日毎日、自分の好きな画
家の前で模写していました。
多分学生達は表層を模写し続ける事で、その画家の内面を感じ取る迄描き続け
たと思います。

目に見えるものを描くとか、模写するというのは基礎としては大事な事ですが、
只それだけでは喜びや楽しさにはつながりません。

何かを感じ、自分らしい描き方をしたいとか心を伝えたいと思う様になった時
から、スケッチを描く事が楽しくなる筈です。
つまりオリジナリティのあるスケッチを目指す事です。

アイデアやデザインというのは対象物の中に必ず答えがあります。


それが分かれば必ずデザインは出来ます。
雑念というか邪念を捨てて無垢になれば本質が見えて来る筈です。
そうすると一回のプレゼで決まります。

対象となる“モノ”をよく見る事なのです。


NHKのTVで『プロフェッショナル』という番組があります。
その中で、パテシエ杉野英美も言っていました。
『あたり前の事を積み重ねると特別になる』 いつも、私もそう思っています。

才能のある人だけがプロフェッショナルになれるのではありません。
普通の人でも“夢と情熱”があれば大抵の事は克服できると思います。


そして私は毎日描けと云いましたが、どの位の時間とかどの位の量を
描けとは言っていません。

忙しいからとか、用事があったからとか、出来なかった理由を弁解する人が
いますが、時間の無駄です。
出来ない理由を正当化するより出来る方法を一つだけ考えてください。

何故なら1日に○を1つだけでも良いのですから。たったの1秒です。


要は習慣にする事が大事です。そして好きなものだけを描いてはいけません。
心に感じたアイデアを相手に伝えるためのスキルなので、色々なもの
を沢山描いてください。大げさになりましたが、
要は、2ヶ月に1度の講習だけではほとんど効果はないと思います。
マスターしたいのであれば簡単な事です。

“毎日描く事なのです。”



★以上が第1回目の実習に入る前に話した、私の考え方です。
 実習は下記7つのカテゴリーに分け、その実際の仕事上のシーン別スケッチ
 の描き方を具体的に教えています。

①アイデアやデザインをクライアントにプレゼンテーションする場合の
 エスキース及びスケッチ。
 (デザイナー・設計・現場監理)

②クライアントと打合した場合、確認の為の打合議事録資料としてのスケッチ。
 (デザイナー・設計・営業)

③インテリアコーディネーターの家具買付け控のスケッチ、
 リフォーム等既存家具確認の為のスケッチ。
 (インテリアコーディネーター・デザイナー・バイヤー・営業)

④実施設計及び施工図のフリーハンド詳細の作成方法。
 (デザイナー・設計・現場監理)

⑤FAX等で詳細を打合する場合の収まりとしてのフリーハンドスケッチ。
 (デザイナー・設計・現場監理)

⑥設計監理及び現場監理の引渡等のチェックリスト作成の中のスケッチ。
 (デザイナー・設計・現場監理)

⑦考えを整理する為のコンセプトチャート作成及びフリーハンドの企画書作成。
 (デザイナー・営業)
 
気が向いたら、その内容を記事にしたいと思います。
寺山修二の『書を捨て街へ出よう』じゃないですが、若者よ“PCを捨てスケッチを描こう!”
長くてすいませ~ん。 お付き合いありがとう♪