アンファン宣言の取材記事ブログ

アンファン宣言 新川明日菜と光本歩が
子どもの立場の声を取材記事にしてブログに配信していきます。

ケース9~母ちゃんと親父と母ちゃんの元カレ~

2010-05-11 14:32:27 | 日記
今回は新川明日菜が取材してきました。
私が取材をしてきたのは21歳のさとし君。
さとし君は私にとって地元の後輩にあたります。
私は彼のお母さんとも面識があります。
彼の家族構成や家庭状況は身近に知っていたので、あまり深い話を
することは聞いちゃいけない気がして避けていたこともあります。
少し奇妙な家庭環境にあったからです。

さとし君と知り合ってから、私はその変わったな家族関係を知りました。
当時、さとし君は高校生、お兄ちゃん・お姉ちゃんはすでに家を出ており
お母さん、妹、さとし君、お父さんで住んでいました。
でも家にお父さんの姿はいつもなく、さとし君の家族の傍には
お母さんの元カレ、ヒゲさんがいつも一緒にいました。
まるでヒゲさんと妹は親子のようにいつも一緒にいました。
でもヒゲさんは結婚をしており、妻がいました。

そして、さとし君のお父さんが家に帰ってくるのは月に1度程度。

**********************************
さとし君と会って話をしたのは2、3年ぶり。
取材をさせてほしいという話になんのためらいもなく
地元の居酒屋でビールを淡々と喉に流し込みながら、話をしてくれました。


ええっと。。何から聞けばいいかとまどうね…
こういう話を改めてしたこともないもんね(笑)
まず…家族構成から教えて。
親父、母ちゃん、兄貴が25で姉ちゃんが29、妹が14歳。

【妹は母ちゃんの元カレとの子】

さとし君の一番下の14歳の妹はお母さんの元カレ(ヒゲさん)との子。
自分とは父親違い。それをさとし君も兄弟も知っていました。
そしてお父さんもその事実を知っているようです。

そもそもさ、ヒゲさんはなんなの?
周りの誰もが抱く疑問と少しの怒りで私は聞きました。

「俺の知る限りでは母ちゃんの元カレ」

ヒゲさんはいつから傍にいたの?

「妹が生まれてからずっと、今考えると…そう。
妹が生まれるちょっと前位からだと思う。
初めは知らないおじさんみたいな。
こいつ誰?的な。」

お父さんはヒゲさんの存在を知ってるの?
会ったことあるの?

「あるよ。」

えっ?!どういう成り行きで?

「よく知らないけど。」

お父さんはヒゲさんの存在を認知してたってこと?

「うん。」

妹はヒゲさんの子なんでしょ?
さとし君はなんでそれを知ったの?お母さんから言われたの?

「勝手に気付いただけだよ。
親父もその話はしないし、家族も誰もその話はしないけどみんなわかってる。」

いつ気付いたの?

「俺が高校2年のとき。」

そんなに最近…
なんで気付いたの?

「学校で習ったの。血液型。」

じゃあ少なからず、ヒゲさんのこと疑っていたってこと?

「ううん。まったく。
ヒゲさんのことはただの元カレなんだなとしか
思ってなかった。母ちゃんが学生のときに付き合ってた人みたいな。
でも、血液型を知って何かが全部繋がって。」

疑ってはいなかったけど、疑問を抱えていたからこそ
血液型と出産の関係を知って気付いてしまったんだと思います。
それで?お姉ちゃんとかお兄ちゃんはなんて?

「兄弟同士その話はしない。妹にも言わない俺からは。
妹ももう気付いてるみたいだけど。」

妹は最近、その事実に気付き、ヒゲさんとの縁を切った
という話を聞きました。妹はどんな思いを抱えているんだろう。
一番問題を抱えているのは妹だと思います。

【手紙で知った離婚】

私は最近まで、さとし君の両親が離婚したことを知りませんでした。
両親はいつ離婚したの?なんで?

「えー、最近だよ。俺が二十歳になるのを待ってた。」

そうなんだ…お父さんはいつも存在なかったけど
あんまり家にいない人だったの?

「うんそうだよ。たまにしか。」

それずっと小さい時から?

「ガキの頃ってあんまりね覚えてないの。ガキの頃は曖昧ですね。
ポケモンやってたとか。ドラクエやったり保育園で落ちちゃったとか?
そういう記憶しか俺はない。」

いつからの記憶があるの?

「うんとね、保育園のときに家族でどっかに行った記憶はあるけど
どこかわからない。俺は一人で行方不明になっておおごとになった。」

そのときはお母さんとお父さんはまだ、仲良かったってことでしょ?

「わかんない。」

一緒に暮らしててさ、お母さんとお父さんがあんま仲良くないなとか思ってた?

「うん。ほんとうにダメだなって思ってた。物心ついたころには会話もしないし。
それに、俺が物心ついたころにはあの2人とも家にあんまりいませんでしたから。」

さとし君のお父さんは常に仕事で家におらず、お母さんは公務員をやりながら
近所の友達やヒゲさんと飲みに出てることが多かったようです。

「姉ちゃん兄ちゃんが子どもの時は家にいたらしい。
俺が子どもの時あたりからだんだんいなくなった。」

で、どうやって離婚を知ったの?

「手紙がきてたから。」

なんの手紙?

「市役所から離婚を受理しましたって手紙。
俺宛てかと思って開けたらその手紙だった(笑)」

お父さんは離婚して、帰ってこなくなったの?

「来るよ、うちには。」
今さとし君は家の近くで一人暮らしをしています。

じゃあ離婚したって言っても紙の問題だけ?

「ってか、俺の生活は離婚してもしなくても変わんないもん。
特になにも高校生からずっと一緒ですよ。
親権の問題が出てきちゃうので、二十歳すぎないと。
だから離婚は俺が二十歳になるのを待ってた。」

妹はそのこと知ってるの?

「ううん。知らない。それに妹と親父はあんまり。
会わないよあいつら。だって親父はあれだし。ずっと知ってるから。」

お父さんも妹が自分の子どもではないことを知っている。
でも私が一番不思議なのは、どうして親は子どもに何も伝えないんだろう?
どうしてお互いが何かを触れないようにしているんだろう?

【お母さんは話を逃げる】

お母さんとそういう話しないんだ。

「しないね。あいつそういう話逃げるもん。」

聞いた事ある?

「あるよ。カマかけたりすると『出かけてくんね~』みたいに話しそらす。」

どうやってカマかけるの?

「例えばでいうと、俺がそれを知った高校生のときくらいに妹に
『なんで私A型なの?』って無邪気に聞かれて、
知ってるか?A型からO型からは絶対に生まれないんだよ~ん」とか言ってみたり。
それを母ちゃんの前とかで言うと、話をそらす。そんであとで俺にめっちゃ八つ当たりしてくる。話そらしてキレてくるからこっちもキレて、みたいな。母ちゃんが泣いて、
目真っ赤にして「もういい」って話にならない。」

全部知ってるのに。知られていることを知っているのに。


【親父】

このあいだ親父の友達と飲んだのね。すごかったよ。
親父の友達はうちの状況全部知ってるからさ、言われたのが
「お前らは親がダメだけどすごい」って。

お父さんがいるまえで?(笑)お父さんはなんていうの?

「確かに親はダメだ」って。

お父さんはそんなにダメな人?

「ダメっちゃだめなんじゃん。
社会人としてはすげー優秀だけど。仕方ないんじゃん。
親父の環境もそうだったから。親父も親抜きで育ったようなもんらしいし。
親はいたけどね。子どもは放っておいても育つって言ってたし。
それを聞いたのもつい最近、先週だけど。」

でもお父さんに対して恨みとかはない?

「ない。」

もっとかまってほしかったとかもない?

「ない。俺親父に嫌われてたと思ってたもん。うちの上2人って優秀だったからさ。
なんか差があった。親父の態度が、上に対してと俺に対してと。
でも、最近は飲みにさそってきたりするから、
俺のことも好きなのかな?って気付いたけど。」

お父さんの口からも離婚のこと言ってこないの?

「うん。俺がその手紙を見てなかったら
気付かなかったと思う。封が開いてるから親父も俺が見たこと気付いてると思う。」

「17くらいのときに兄弟呼び出されたことがあって。親父に、夜。
離婚しようと思ってるけどどう思う?って言われて、俺ら3人どうでもいいから
どうぞ好きにすればみたいな。姉ちゃんと兄ちゃんも二十歳越えてたから私たち別に関係ないしみたいな。でも姉ちゃんが
『あぁこいつ関係ある』みたいになって。俺のことね。未成年だから親権の問題が。
だからたぶん離婚したのは俺が二十歳になるの待ってたんだと思う。」


【支えは友達だった】

めずらしい家庭だよね。

「うんよく言われる。
なんで親とそんな関係で普通にいられるの?って言われる。」

うん私も聞きたい、なんで?

「それは周りに恵まれたから。あいつらに俺は救われた。」

さとし君には地元の親友のような家族のようなそんな仲間がいます。
その親友もまた、家庭環境に少し苦労しています。

お互いそういう話ってするの?

「いやっ、しない。
例えば彼女と付き合ったときは『なんでそんな友達ばっかにお金使うの?』って言われて
俺はあいつらには返し切れない恩があるから。って」

でもそれは別にそういう話をするわけじゃないんでしょ?
ただ一緒にいるってこと?それが救われるってこと?

「そう。今考えると毎日のように会って、俺が荒れてる時も一緒にいてくれたし。
俺は家族で言うと姉ちゃんがいたから。俺にとったら姉ちゃんが母ちゃんだね。」

お母さんは?

「金はくれたよ。1日1000円。」

ご飯作って待ってるとかないの?

「ないよ。
俺が18で一人暮らししはじめてから、ご飯食べにくればとか言うようになったけど。
うち基本放置だよ。2カ月に1回くらいしかメールくれねぇやつが何言ってんのみたいな。」

お姉ちゃんとかはなんて言ってるの?そういうお母さんに対して。

「俺が高校入るまえにいなくなったから姉ちゃんは、なんで私が面倒みなきゃいけないの的な気持ちが合ったみたい。姉ちゃん・兄ちゃんのときは母ちゃんも割と家にいたらしいから。だけど俺が物心ついたころにはだんだんくずれたみたいな。
だから俺は親の愛ってのは金をあげることなんだった学んだんだよ。
放置されたんだなって気付いた。」

それって高校になってから?中学のときは?

「保護者面談とか外では表向きいいけど、家では普通になにもない。
小学生は家庭での記憶ってのはあんまない。覚えてない。よくわかんない。」


じゃあどうしてほしかった?お母さんっぽいことしてほしかった?

「いまさらだな…いまさらだね。」

でも、もしそれが元々あったらよかった?

「あったら?それを考えたことがねぇけど。」


お父さんのこともお母さんのことも恨んでいない。
俺には友達がいるしもう成人した。両親に過度な期待はしてない。
そんな印象が伝わってきました。でも愛されたいって願望が今でも強く残っている。
私にはそう感じました。幼児期の心残りがあるのかもしれません。

妹が心配だね、話聞こうか?って私が言うと

俺もこう見えて心配してんだよ。俺の妹だから俺が見るから大丈夫!
と頼もしい普通のお兄ちゃんでした。



ケース8 父子離婚家庭 ~ぼくはお父さんみたいになる~

2010-04-20 15:19:27 | 日記




こんにちは。光本歩です。


昨日はNPO法人Winkがつくった記念日、「養育費の日」でした。
アンファン宣言もトークセッションを行いました。
会場に来ていただき、このブログをみてくれている方も
いらっしゃるかもしれないですね。



本日はアンファン宣言の取材が始まって以来初の、父子家庭の男の子に取材しました。



***********************



颯太くんは現在小学5年生。
颯太君のお父さんは学校の先生をしており、
私が塾を立ち上げる際にお世話になった方です。
そういうわけで、私は颯太君のお父さんに、よく話を聞いていました。



【お父さんに聞いたこと】

「9年前に私達夫婦は離婚しました。颯太が2歳の誕生日を迎える前のことです。」
お父さんは話してくれました。

「お互い教師をやっていて、仕事が一番だったんです。」
夫婦共々、小学校の先生。
そして当時は別の小学校でお互いに6年生の担任をされていました。

「颯太が産まれたにも関わらず、家族の時間はほぼゼロ。もともとどちらも育児休暇をとる予定はなかったんです。むしろ妻は『この子が産まれても仕事がしたい・・大丈夫かしら』と子育てよりも仕事復帰を心配していたんです。」

颯太君を妊娠したことがわかったときに、夫婦は新しい命が宿ったことにとても喜んだと言います。しかし、

「ずっと教師になることが夢だったし、自分の生徒も自分の子どものように可愛がっていたから、辞めたくも休みたくもなかった。」

私も将来の夢は学校の先生になることでした。
だから、その気持ちは分からなくもありませんでした。

でも、育てられるかどうかという不安な気持ちがあったのに、“颯太君を産んだのは何故?”私は聞いてみました。

「本当に無責任を承知ですが、率直にいうと、中絶に抵抗があったからなんです・・」

私は寂しく思いました。もちろん颯太君の妊娠は嬉しかった。でも、それが仕事との兼ね合いを考えない結果だったこと。お父さんは振り返って言います。

「颯太には本当に申し訳ないことをしたと思っているし、反省している。だからこそ颯太は僕の手で、必ず幸せにします。」

夫婦はそうして、颯太君に手をかけられない日々を原因に喧嘩が続いたと言います。
「颯太のことは2人とも愛している。でも、すれ違いからパートナーを嫌いになってしまったんです。」
その後、夫婦は離婚しました。

「颯太は僕たちのことを好きではないと思う。」お父さんはそう言います。
「でも仕方ないと思っている。好きになってもらう資格はないんですよ。」



・・・・さあ、颯太君に話を聞いてみましょうか。




【リコンしてないみたいなんだよ!】


颯太君は1人でいる時間がとても多いです。
お父さんは小学校の先生を続けていて、朝も早く夜も遅い。

寂しくない?と聞いてみました。
「寂しくないよ」

ママとは会ったりするの?
「おうちが近いから毎日会うよ。週に一回一緒に御飯も食べるし。リコンしてないみたい!パパとママはとってもなかよしだよ。」

そっか!離婚したのはパパにきいたの?
「ぼくが2さいくらいのときにリコンしたんだよ~。ぼく覚えてるよ!」

私はとても驚きました。

覚えてるの!?すごい!!
「あのときはパパとママはいつも喧嘩してた。リコンしてからのほうが仲良しだよ。リコンしてよかった~。」

きらきらした笑顔で素直に話す颯太君。
同時に颯太君は、とてもしっかりして見えました。

「ママとはお出かけもするよ。その時ぼくにおこづかいもくれる。パパにもいつもおこづかいを封筒にいれて渡してるよ。」

養育費の事です。お父さんから聞いていました。月に一度5万円を元妻からもらっているんだそうです。『子育てより仕事を選んだ身分ですから、お金くらいはきちんと』と。




【もういやだって思わないよ】


「もっとちっちゃい時は、ママがいないのがとっても嫌だった。」
颯太君は教えてくれました。

「なんでママはいないのって、パパに聞いたらお仕事だって嘘つかれたの」
颯太君は全て知っていました。パパが嘘をついたことも、ママは戻ってこないことも。

颯太君は何てパパに言ったの?
「うそつきはどろぼうの始まりだよ~って(笑)」
笑いながら颯太君は言いました。

それって何歳くらいの時?
「小学校はいった時くらい。」

子どもは良く覚えているものですね。
それに親のことをよく見ている。
昨日の養育費の日のイベントでもお話しましたが、まさに“子どもは親が思っている以上に子どもじゃないな”と改めて感じました。

「でももう5年生だし、放課後クラブもあるから寂しくない」

パパに早く帰ってきてほしいとか思わないの?
「パパはお仕事忙しいから。ぼくの先生もいつも“ざんぎょう”してる。パパもおんなじ。」




【お父さんへの気持ち】


一番聞きたいことを聞いてみます。
“颯太君、お父さんのこと、好き?”

お父さんは、先述にもあったように、「颯太はお父さんが嫌い」と思っています。
颯太君の本当の気持ちは・・・


「好き。お休みの日はキャッチボールしたり、一緒に掃除したりする。ママにも会わせてくれるし」


私はほほえましかったのと同時に、“ママにも会わせてくれるし”という部分に胸を打たれました。あえて聞きませんでしたが、颯太君の中には「リコンしたら普通はママに会っちゃいけない」というイメージがあるのかもしれません。


また、子どもたちに取材すると、親の職業に憧れるケースが多いと感じます。
颯太君もそんな一人でした。

「パパみたいに先生になりたい」

どうして先生になりたいの?
「パパと一緒に働きたい」


颯太君のお父さん、颯太君はパパのことが大好きなようですよ。



アンファン宣言では、子どもたちに必ず聞く質問を用意しています。
颯太君にも少し噛み砕いて聞いていきました。
最後にこんなことを聞いてみました。


「颯太君のパパとママのリコンってさ、颯太君にはどんな影響があったと思う?寂しくなったとか、色々あると思うんだけど・・・」

颯太君はきっぱり言います。
「リコンはぼくには関係ない」

小学校5年生の子どもが言う言葉とは信じられませんでした。

きっと影響はたくさんあったと思います。
心の中にそれを上手く隠しているのかもしれません。



もちろん子どもにとっての親は、お父さんとお母さんの2人です。
今まで言ってきたように、その2人こそが一番信頼できる人で、一番近い存在の人で、一番大好きな人です。


でも、親の人生が子どもの人生ではないし、子どもの人生が親の人生ではない。


小学校5年生の颯太君は、立派にそれを理解しているようでした。




ケース7家族不仲家庭~家族って何?~

2010-04-10 11:13:14 | 日記
今回新川明日菜が取材をしてきたのは
山本あかねさん。
彼女は私たちの活動に興味を持ってくれ、一度だけ
交流会に参加してくれた25歳のOLさん。
美人で白い百合の花のような女性。

彼女が「うちは離婚したのは最近だけど、元々母子家庭のようなものだった」
「家庭環境は子どもの恋愛観、将来の家庭感に影響する」
と言った発言の真相が聞きたくて取材をお願いしました。
私自身、彼女とすごく気が合うような気がしました。

休日の晴れたお昼に、お洒落なランチのお店に入った私たちは
まず、取材は後にして、ランチをしながらお互いについて話をしました。
そこで一番共感した話題は「家庭環境は子どもの恋愛観、将来の家庭感に影響する」。

“付き合った人を信じることができない”
“必要以上に相手を束縛してしまう”
“甘え方、頼りかたがわからない”
あかねさんはそう話してくれました。


あかねさんのお父さんは会社経営者。物心ついた時から不倫を繰り返し、
いつも家にはお母さんと二人っきり。“母子家庭のような生活”でした。
経済的には不自由することなく、大学に進学したのち、フランスに2年間の
留学。現在は企業に就職してバリバリ働くOLです。


【本当に愛し合って結婚したの?】

物心ついた時からお父さんは外に女がいたんだよね?
そもそも親が結婚してどれくらいで、あかねさんが生まれたの?

「ちょうど1年後くらい。父親が30で母親が23、
結婚前にあんまり付き合いとかもしてないと思う」

そういう恋愛の話とか親に聞かないんだ?

「うん全然聞かない。小さい頃は無邪気に聞いたりしたこともあるし
父親と母親がどうやって出会ったかくらいは知ってるけど
なんか親の恋愛観とかは聞けなかったね。」

“だって生々しく仲が悪かったからさ”

物心ついたときって何歳の頃?

「たぶん一番最初に、母親から“父親は外におんなの人がいる”って
聞いたのは小学校3年くらいかな」

「仲のいい二人の姿を見たことがないの。だからほんとうに愛があったのか?
ってのが私にはわからないんだよね。父親が母親にすごく一目ぼれして追いかけて結婚したのは聞いたけど
で??その後は??みたいな(笑)

母親に「なんで父親と結婚したの?」って聞いたら「楽そうだったから」って。
それもよくわからないし、うーん、謎なんだよねほんとうに。
父親と母親が仲良く会話をしてるってイメージは小さい頃からないし
母親が父親を褒めたりとかその反対とか一切聞いたことがないと思うの。」

書いてもらったアンケートで、親の離婚について聞きたくても
聞けなかったことはありますか?の欄に
「本当に愛し合って結婚したのか。修復しようとしなかったのか」
と書いてありました。取材の中でも何回も出てきた「謎、わからない」
の言葉。


【記憶がない】

「小学校3年生で父親の浮気の事実を聞かされて…
…基本的にその前の記憶とかあんまないじゃん?」

ないんだ??幼稚園のころの記憶とかも??

「えー、うん。その前の家族の記憶とかがないんだよね…
だからもともと団欒のある家庭じゃなかったのかもしれない。
父親も忙しかったし、別に父親と母親の共通の趣味とかもなかったと思うし」

「団欒って記憶がなくて、わりと記憶がある頃になったら
もう“そういう状態”だったから。」

えっ、でもさ幼稚園時代とかの記憶って普通あるよね??

「ゼロではないけどほんとうにないんだよね…。
それが親の家庭の環境と関係があるのかわからないけど、ほんとうに
覚えてない。幼稚園の劇でどんな役やったとか、あっ、あとおじいちゃんとおばあちゃんにすごく可愛がってもらったとかの記憶はあるけど…
家族でご飯食べたりした記憶もないなぁ。」

あかねさんは「覚えていない」と言う。
小学校3年生以前の家族の記憶がないなんて普通はありえないと思う。
きっと忘れたいことだから、忘れてしまったんだ。
今まで取材した子達みんなが口を揃えて言うように。


【父親の存在】

それで、自分とお父さんとの交流って物心ついたときからないの?

「うん。お互いどうしていいかわからなかったとは思うんだけど。
普段から一緒にいないと話すこともなくなってくるじゃん。
父親とはほんとうに何を話した記憶もないんだよね。きまずいよね。
父親と母親自身もコミニケーションが下手な人なんだって大人になってから
思うけど。ほんと昔からそんな感じだった。」

「父親も父親で、なんていうのかな、お金があったから経済的な問題は
何もなかったけど、物質的なことで解決しようとする人だったの。
ご飯に連れていけばいいとか、旅行に連れて行けばいいとか。」
でもだからってそこにちゃんと会話があるかとか、そういうのって別じゃん。


「小さい頃から親が自分に心を開いてるとか自分が親に心を開いてるとか、
そういう事実はない。」

あかねさんにとって、父親は“お父さん”ではなく、
ただの自分の血の繋がりのある人。

世間でいう父親とはどういう
存在なのか?それがわからない。
両親揃った家庭でも家族が家族でないケースがあるんです。

【母親との間の溝】

じゃあほんとに母子家庭みたいな感じでお母さんと2人だったんだね。
さっき会話で、お母さんとは微妙な関係って言ってたけど…?

「うん、母親は過保護すぎるんだよね。たぶん小さい頃は、すごく仲よかったんだと思うの。母親がいないと不安だくらいの、
寂しがり屋で不安定な子どもだったと思う。けど、やっぱり大人になってくると束縛されることに息苦しくなってある時ちょっと大喧嘩をして…」

なんで??

「なんでだっけな、たぶん門限がどうのこうのって話だったと思うんだけど
そのときに、今まで思ってたこととか全部出ちゃって…

「今までずっと父親が家にいなくて、母親のことが可愛そう
だと思ってたから、門限とか言う事全部聞いていい子でいたけど、もう嫌だ!」

みたいなこと言って、そしたら「そんな可愛そうなんて思われてるなんて嫌だ」
って母親が泣きだして…ちょっと激しくもめたんだよね。
そのときにどうしても、家庭の話になって、なんかお互いに、もう知らない!
みたいになったのね。それ以来ずっと親とは溝がある」

「それがたぶんね二十歳、二十一くらいかな。それまでは色々ありつつも
うまくやってたけど、それ依頼、ずっと積み重なっていたものが私は
限界になっちゃって、今は一緒に住んでるけど全然ひとり。」

でもなぜ今でも家を出ないの?って聞いた私に

母親は私が出て行ったら一人になるし、どうしていいかわからない。
仕方ないけど、今は考えたくない。と言っていました。


【父親の不倫について】

物心ついた時からそれを聞いて、どう思ってたの?

「そりゃあ他に女がいるって聞いてすごいショックだったよ。
すごいショックだったけど…どうしようもないじゃん。
すでに父親と母親で揉めてるから私が父親を攻める必要もないじゃん。
そこに私が加わっても物事がこじれるだけだと思って、なんか黙ってたのかなぁ。
いつも私の目の前で、生々しく離婚の話し合いみたいなことしてたけど
その度に父親は、別れたくないって言ってたんだよね。

離婚に至るまでに、女は何人かいたと思う。
で、女ができるとその女にマンション借りてあげて自分もそこにいるみたいなのを繰り返していた。
そんな父親が女と別れたからってたまに家に戻ってきたって話すこともないじゃん。どうしていいかわからないじゃん。」

お母さんは別れようと思わなかったのかね?

「母親はずっと専業主婦だから、たぶん別れても
やっていけないってのがあったんだと思うし、でもどう思ってたんだろうね。
どうにかなると思ってたのかね。でもそんなの繰り返してたらさ愛情とか冷めそう
じゃん。どうするつもりだったのかね。ほんとわかんないんだよねその辺が。」

【離婚は突然終わっていた】

で、実際に離婚したのは最近って聞いたけど…?

「そう、大学出てからフランスに留学行ってたのね。
それであるとき、いつものように不倫をしていた父親が不倫相手の
中国人の女の人と本気で結婚したいって言いだしたらしく、私がフランスにいる間に
気付いたら別れていたの。日本に一時帰国したときに家に父親の荷物がなくなっていて。」

えっ?!何も説明なかったんだ?

「何もなかった。で、パパは?って聞いたら「離婚しちゃったのごめんね」
って言われて、母親に土下座をされ…ちょっとねそれも辛かった。

それからは何にも聞いてない。で、父親は手紙を書いてたんだよね私に。
何書いてあったか忘れたけど。たぶんごめんねみたいなことが書いてあったと
思う。内容は覚えてない。なんか見たくなかったの。泣いちゃうなと思って。
それが22か23歳頃かな。」

結局父親はその中国人ともすぐ別れたみたいだけど。



【会っても気まずいだけ】

それからお父さんとは会った?

「えーたぶん離婚してから3回くらいは会ったのかなぁ。」

ふたりで??

「いや、ふたりでご飯とか面会チックな感じじゃなくって、父親がうちに用が合ってふらっと来るみたいな感じで。
でも別に話すことないし話したくないしさ、降りていかなかったこともドア開けなかったこともあるよ。」

それは怒り??

「いや、気まずいからさ。話すことないじゃん。」

そっか、父親って感じでもないのか。

「そう、ただ精子もらった人みたいな(笑)」
お金以外、何もしてもらったことないからね。
お金もありがたいことだし留学して大学院まで入れてもらったけど、なんか違うじゃん。
そういうことじゃないんだよってすごい思うから。ほんとに。そこじゃないよ。」

今だにお父さんは生活費払ってるの??

「うん、たぶん。そこはよくわかんないんだよね。あんまり聞けない。
いくら入ってるかとか知らないし、遺産とかどうなるかとかも全然知らないし。
家が全部そのまんまでってのが、たぶん慰謝料代わり?」

そういう話は親とできないんだ??
「うんできない…いつかしないといけないのかなって思うけど、自分が泣いちゃいそう
、だから絶対まだ聞けないね。このまま聞けないで終わるかもしれないね。」

【家庭環境と恋愛観】

さっきの話しだけど、家庭環境は子どもの恋愛観、将来の家庭感に影響する
って話しね。

「そう…私ね、誰かを大事にするとか、愛するとか、人の面倒の見方とか
そういうのがわからないの。」

人の面倒の見方??

「なんていうのかな、何をしてあげることが愛なのかっていうのもあるし。」

それは同性だと問題ない??

「うーん、同性だとないんじゃないかな。でも私あんまり女の子の友達いないんだけどね(笑)
こういう真面目な語りのができるのは男の人ばっかりなんだよね。
女の子で仲いい子は5人とかじゃないかな。もちろん友達は沢山いるし
会社の人ともうまくやってるけど、基本的に人に心を開かないのかな。
だから甘えるとか、心を開くとかは苦手かもねやっぱり。」

「相手にどこまで踏み込んでいいのかもわからない。親に対してもそうだけど。
ぶつかるとかもできないしね。どうすればいいんだろうね。」

じゃあパートナーに何を求める??

「うーん。安心できる人で…全部話し合える人がいい。
コミニケーションが成り立つ人がいいね。誰とも交わした覚えがない気がするけど、
話し合いがちゃんとできて、話し合えば解決ができる人がいい。」

でものりかさんの今の悩みは、男性を信用できない。
甘える、頼ることができない。
それは私も大変共感することでした。母と父が愛し合って続いている姿を
見たことがないから、そんなものが存在するのか自体が信じられないんだと思う。


家庭のこと悩んだときはどうしてたの?

「本を読んでた。ひとり解決。でも解決できてないからこういう大人になってるんだけど(笑)
今でもそうかな。本読むか寝ちゃうかどっちか。」

そのとき彼にわーって気持ちを聞いてもらうとかはない??

「ないない。ゼロではないけど100%でそういう気持ちを
出したことがあるかって言われるとないかな。なんか引かれそうじゃん。
しかもそういう家庭に育ってるってこと自体がなんのメリットもないじゃん。
結婚とかするにしても片親だってことは何の得にもならないと思うし、
むしろ障害になるもんね。」

「だからほんとうに言えないねぇ。。
最近ほんとに結婚を考える歳になって、影響があるっていうか、
自分の中で過去っていうのは大きいんだなっていうのはすごい思う。

「付き合う人に保護者的なものを求めるかな。おかしいけど…
無条件に受け入れてほしいっておもってるんだよね。
親が子供にするみたいに。
家族レベルの近さを相手に求めちゃって、でも家族って何かよくわかってないから
幻想のものすごい100%の家族を相手に求めすぎてうまくいかないって
いうのがあるかもしれないね。

たぶんさ普通の仲のいい家族でもさ、絶対みんな100%ではないはずじゃん。
ケンカしたりとか、距離があったりとかあると思うけど、そういう経験がないから
自分の想像した100%の理想しかなくて…
100%のものが欲しいじゃん。昔なかったからますます欲しいじゃん。
だからほんとに理想が高くなっちゃって。」

【幸せの定義】

「たぶんさ幸せってこういうものなんだっていうのって、小さいときの
家族の中で生まれるもののような気がするのね。
だからその人自身の幸せの定義が家族の中で形成されるとしたら
持ってないわけじゃん、そういうのを。

幸せになり方がわからないっていうか
何が幸せかわからないってのが私はすごいあるの。
ご飯がおいしいとか楽しいことをしてるとか、そういうのは幸せだと感じるけど、もっとこう大きな、大前提の幸せ?
がなんなのかな?ってのがすごいあるかも。不安定なんだろうね。」

私たち大変だねこれからが。
どうしよう~結婚できないかもしれない~
子どもは欲しいけど、家庭って何かの実感がないから~
そもそも、自分が子どもを持つ自信もないよね~

なんて話はつきませんでした。

【思い描く家庭像】

じゃあ思い描く家庭像は?

「仕事があるから毎日早く帰ってきてほしいとかは
ないけど、理由ない外泊とかはもちろんしないで、私との家庭を
居場所だと思ってくれて普通の会話をして、たまには出かけたり
とかもできて、私のことを必要だと思ってくれる人がいいよね。
いてもいなくてもいいみたいなのは絶対嫌だし、“どうしても私のことを
必要としてくれる人”がいい。私が愛されてる実感をちゃんとくれる人がいい。
お互い愛し合っていることが信じられる人だよね。そういう人がいいなぁ。」

周りに同じような友達とか話す友達はいる?

「うーん一人いるけど男の子で、わりと最近両親が離婚して、
自分と同じような立場すぎて、逆に気をつかっちゃって細かい話しはしたことないね。
あんまり聞かれたくないしさ。その人も困るだろうなと思って。」

取材が終わって、お互いがんばろうね!
素敵な家庭を築くために!なんて話しながら歩いていると

エレベーターに乗る時に、あかねさんが一言。

「でも…自分のこういう家庭環境とか生い立ちってマイナス要素じゃん。
だからわざわざ自分を下げることって知られたくないよね。」



あかねさんのケースの場合、問題なのは両親の離婚じゃない。
お父さんとの関係、両親の関係、家族の関係が問題。
“家庭”が元々なかった。“父親”ってどんな存在?
どうして結婚して、どうして私を産んだの?

そんな疑問を抱き続けて、あかねさんは今でも
その答えを聞くことはできていません。

育った家庭環境が
子どもの結婚観や将来にまで影響するって知っていましたか?





ケース6母子離婚家庭 ~新たなスタート~

2010-03-21 00:53:47 | 日記


こんにちは、光本歩です。
今日はまた、私の教え子を一人、紹介したいと思います。
中学3年生の小澤舞花さんです。


舞花さんはとても明るく元気な女の子。
そんな彼女はクラスでも人気者です。


その風貌からは両親の離婚と言った悲しみを微塵も感じさせません。
話を聞いていくと、悲しみを乗り越えて彼女なりに頑張ってきた過去が明らかになっていきました。



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舞花さんの両親は、舞花さんが11歳のときに離婚しました。
中学3年生と言えば15歳。
離婚からの月日が浅い分、今は離れて暮らすお父さんの記憶も鮮明に残っています。



【お父さんはキライっ。】


「お父さんはキライっ。」と、よく舞花さんは言います。

お父さんは養育費もきちんと払っていて、月に一回の面会交流もあります。
それでも舞花さんの中でお父さんのイメージは良いものではないようです。

「なんでお父さん嫌いなの?」

『家族のことを考えないから』


実は、舞花さんのお父さんと私の父はよく関わりがあります。
それは同じ「釣り」の趣味があり、釣り公園に行くと会うのだそうです。
私の父からは
「娘がいつも塾でお世話になっています。」
「娘が無事高校に合格したと聞きました。ありがとうございました。」
と彼女のお父さんに言われたよ、なんてことをよく聞いていました。


それを聞けば、お父さんも子どものことをきちんと考えている・・・と思えるのかもしれません。
でも、実際には舞花さんに伝わっていないのです。
それは舞花さんが悪いのではなく、きちんと伝えられなかった大人の責任となるのでしょう。




【冷めた感情】


親の離婚が自分の結婚観に影響を与えたと思う?

『思わない。』

離婚を聞いた時どう思った?

『べつにいいと思ったから。』

一人親家庭に育って良かったって思ったことある?

『ない。』

親の恋愛ってどう思う?

『勝手にすればいいと思う。』


舞花さんに親の離婚の本質やそれにまつわる話を聞くと、こんなに冷たく返ってきます。
それはいつもの優しくて気兼ねなく話かけてきてくれる舞花さんとは全く違う形相です。
ひしひしと感じるのは“親の離婚は私に関係ない”と割り切っている感情です。




【それでも見せる悲しい一面】



そんな感情の中でも、舞花さんらしい解答も返ってきました。


親の離婚が自分の人生の環境に影響を与えたと思う?

『うんうん。家が静か。』

寂しい?

『相手にしてもらえないときもあるから・・・』

・・子どものことを考えてほしいというSOSがここからもまた聞こえました。




【お母さんとは仲良し】



舞花さんが塾に来ている時、お母さんとよく電話をしています。

『迎えにきてー!』
『忘れ物しちゃった!』

お母さんと話している舞花さんはまるでお友達と話しているかのようです。
親子でプリクラをとることだってあります。



私には舞花さんとお母さんが仲良しな理由が少しわかります。




【舞花は宝物】



舞花さんのお母さんが、舞花さんの志望校のことで相談にきたことがありました。

『どうでもいいといって適当に高校を選んでいたけど、将来を見据えて行きたい高校に行かせたい。』

その言葉を聞いて、志望校の変更を進めました。

そのお母さんの目は真剣で、心から舞花さんのことを考えているのが手に取るように分かりました。
親にとって、子どもは宝物なのです。だから、後悔してほしくないんだと仰っていました。


舞花さんは見事志望校に合格し、公立高校への入学を決めました。

舞花さんは「兄弟いるし、親離婚してるから私立の併願をしたかったけど、お金かかるしやめた」と言います。

それでもお母さんの気持ちは届いていました。

『合格したよ!』

弾けるようなその言葉には、お母さんが娘のことを一緒に考えてサポートした軌跡が表れていました。




【中学校の卒業式】



3月19日、舞花さんは中学校の卒業式を迎えました。

そこで、舞花さんのお母さんに声をかけられました。

『本当に・・・ありがとうございました!!良かったですよ~!!!!』

私の体を揺さぶりながら、満面の笑みで言ってくれました。
舞花さんの節目に対する心からの悦びを感じました。



卒業証書を手にした直後、舞台を降り、座席に戻る途中で舞花さんはお母さんに向かって一礼しました。
育ててくれてありがとう、という感謝の気持ちを込めてです。

卒業を迎えた舞花さんの目には光るものがありました。
もちろん、その姿を見るお母様にも込み上げてくるものがあったようです。


辛いこと、悲しいこと、受け入れられないことも一生懸命舞花さんなりに認めようとしてきたのです。
心も体も大きく成長した舞花さんを私も頼もしく感じました。

お父さんのことも、まだまだ「キライっ」と言ってしまうかもしれません。
でもそれは子どもから大人への率直な言葉。
離婚は元々マイナスイメージのものであり、子どもの中で完全に消化し、生きる糧として考えられるようになるまでには時間がかかるのです。





両親が離婚し、新たな家庭環境をスタートしてから早4年。
そしてまた新たなスタートラインに経った舞花さん。

将来の夢は、看護師になること。
それを達成したら結婚し、子どもは3~4人欲しいそうです。

『多い方が楽しい!楽しいのが一番だしっ!!』

きっと舞花さんの未来像は明るく楽しい家庭像なのでしょう。




ケース5母子離婚家庭~ふたりでも幸せ~

2010-03-13 11:23:30 | 日記
今回、私新川明日菜が取材をしたのは
山川美奈ちゃん、中学校1年生です。
今回美奈ちゃんと会うのは初めてでした。
お母さんからは、自分の気持ちを沢山表現するタイプではないし
一人っ子だから私には言えない気持ちがあるかもしれない。聞いてみてね。
と言われていました。

初めて会った美奈ちゃんはたんぽぽのようにふんわりとした天然の雰囲気を
かもちだす女の子。バレエをやっているせいかスタイル抜群で顔立ちも美人。
人見知りなのになぜか親しみやすさを感じるとても素直な女の子でした。


“取材”と録音機を取り出すと、少し緊張した面持ちになった美奈ちゃん。
緊張をほぐすためにまずは、中高生に行っている「家族観・結婚観」を調査する
アンケートを書いてもらいました。

【離婚はしたくない】

よし、じゃあアンケートで気になるところから聞こうかな。
☆項目と美奈ちゃんの回答

・もしいま妊娠したら産む NO
・降ろせと言われたら一人でも産む YES
・結婚願望が強い YES
・結婚はしたくないが子どもは欲しい NO
・理想の夫婦は自分の親だ NO

もし妊娠して降ろせと言われたら1人でも産むは
YESじゃん?それはどうして?
「だって自分の子どもだから、生きてるんだから産んであげなきゃ」
とハッキリとした口調で答えた美奈ちゃん。
私としては、結婚願望が強いにYESが意外だったんだけど!」と私の発言に
「結婚はしたい」と照れながらも。

【お父さんはいなくてもいい】

理想の夫婦は自分の親だ にNOはなんで??
「離婚したくないから!」
あまりに素早くハッキリと答えたので思わず私も取材を忘れて
「そうだよねぇ!!!」なんて答えていました。

寂しいなぁとか、お父さんがいればいいなとか思う?
「うーん、小さい頃はお父さんがいれば遊んだりできたなぁって、
思ったけど今は怒られるときに2人から怒られるのは嫌だから
いなくてもよかったかなって(笑)」

思った以上に美奈ちゃんはお父さんへの執着心はない様子。
お父さんはいなくてもいいというのは心の底から出ている
本音だなと私は感じました。それほど美奈ちゃんは素直だし真っ白な女の子だからです。
今までの取材では「心の傷」を追った子ども達の現状を紹介しましたが、
美奈ちゃんのように「傷のない姿」も少なからず存在するケースです。
大人が思ってる以上に、子どもは大人だしケロッとしているんです。
そもそもお父さんという存在が初めからないのだから執着心もあるわけないんですけどね。

「友達の家を見て凄く羨ましくなるとかもない。
でも“おもしろいお父さん”はいるといいなぁって思う。
友達のお父さんでおもしろくてよく遊んでくれるお父さんがいるんだよね。
それはいいなぁって思った。
お出迎えとかがすごいんだ!おぉ、いらっしゃい!みたいな元気でおもしろい感じ」

【寂しいけど、ひとり親でも恵まれている】

「美奈ちゃんは、結婚したらどういう夫婦になりたい?」
「うーん、どうなんだろ。働いてみたいのはあるけど子どももお母さんが
家にいないと寂しいだろうし。どっちかといえば家にいてご飯作ったりしたいな」

それはさママが仕事してるじゃん?おうちにいないことも多いし
寂しいってのがあったりするの?
美奈ちゃんのお母さんは大手マスコミに働くキャリアウーマン。
仕事もこなして美奈ちゃんを育てています。
「うん。友達の家は家に帰ったらお母さんがいて、憧れる」
でも経済的に悩んだことも、親の離婚で悩んだこともない。
とアンケート回答した美奈ちゃんにとって、ママは学校のこと、相談、なんでも話せて友達のように仲良しな存在。
ふたりを見ていても信頼関係が深いんだなぁと温かい気持ちになります。

【親の離婚について聞き出しにくいことはある】

お父さんのこととか聞いてもいい?
答えたくないこととかはいいからね。

ママとパパはいつ離婚したの?
「パパとママが別居しはじめたのがうちが1歳くらいで
離婚したのが2歳くらいだったと思う。」
それはママから聞いた情報?
「ううん。お父さんと会ったときに聞いた」
養育費ってわかる?
「わかんない…あっでも今でも月に5万円送られてきてるってママが言ってた」

アンケート項目に
・親の離婚に関して聞きたくても聞けないことはありますか?
の回答に「今までママとあまりパパの話をしなかったから
聞き出しにくいことはある」との回答。
でも私は、その“聞き出しにくいこと”の詳細は聞けませんでした。

じゃあ、離婚した理由を親から伝えられたことはある?
「ない、お父さんからちょっと聞いて、結婚してしばらくは
仲良かったけどお父さんに他に好きな人ができちゃって、それで離婚したって言ってた」
ママとは何も話してないんだ?「うん」

【10年経ってはじめて会ったパパは…】

話をしている美奈ちゃん宅のダイニングテーブルには1冊の本と、その間に
挟まった1枚の写真。そこには美奈ちゃんとパパが2人で写ってる写真がありました。
美奈ちゃんは去年の8月、10年ぶりにお父さんと会いました。

パパと会ってみてどうだった?
「もうちょっとカッコイイかと思った(笑)」
と、なんとも間の抜けたかわいい回答に2人で大爆笑

なんでさ、会うことになったの?だって10年も会ってなかったわけじゃない?
どういうきっかけで会ったの?
「ある日、突然ママからお父さんが会いたいって言ってるんだけど会ってみる?
って言われて。それまではこっちが会いたいって言ってもパパが、まだ時間をおいたほうがいいって会わなかったから。」

そういう話は前からママとしてたんだ?
「うん、時々ね」

どう思った最初?
「最初は会いたいなって思ったけどなんか、だんだん緊張してきて
やっぱやめればよかったかなって思ったりして」
「会ったのは去年の8月」
どうやって会ったの?
「品川で待ち合わせして、ママと3人でご飯食べて、それからママは仕事に行って、
ふたりで水族館行ったり喫茶店みたいなところに入って話したりした。」
どうだった最初さ緊張するじゃん?

「なんか10年も会ってないから緊張するなぁとか言われたけど。
お父さんがどういう人か知りたかったし、会えたのはよかった。
ママが面食いだからもうちょっとかっこいいと思ったんだけど、
あっ普通だなみたいな(笑)」

パパとはまた会いたい?
「うーん微妙…」
なんで?!
「なんか気まずい。なんか慣れるまでに時間がかかるから人と」
「水族館行ってカフェ行って、話して、でも時間があまっちゃって。
どっか行こうかって、すごく子ども向けのアトラクションに乗って、またカフェに入って
みたいな(笑)ふたりとも口下手で似てるから。
パパは今再婚していて妹が2人いるの。だから妹には会ってみたいな!
でも今はメールのやり取りもしてないよ、大阪に住んでいるの」

【お父さんって実感はできない】

親の離婚が自分の結婚観に影響を与えたと思いますか?の質問
「いやっ、あーでも親が離婚してるからそのぶん自分が
結婚したら仲良くしたいなってのは思うけど、そんなに影響はないかな」

「会ってもこの人がお父さんなんだってわかんなくて。
お父さんが家庭にいることが想像できないし(笑)」

って、おっとりした美奈ちゃんから想像もつかない
発言が出て私は少し驚きました。でもお父さんの話をする美奈ちゃんは、
楽しそうでどこか照れくさそうでもあります。
でも私はすごく共感するところがありました。
そうだよね、物心ついた時からママとふたりが当たり前なんだもんね。
お父さんなんて実感できるわけはない。

「友達の家にお父さんがいるのは、お父さんだってわかるけど
いざ自分の家にお父さんがいたとしても実感湧かない。
この人誰?どんな人?みたいな」

「この家に引っ越したのは小学校2年生、元々は同じ地域のマンションにいて
そこには友達もいっぱい住んでたけど、やっぱりおばあちゃんとおじいちゃんが隣にいるほうがいい」
今美奈ちゃんはおばあちゃんとおじいちゃんのお宅の隣に素敵な一軒家を立てて
ママとりく君(犬)と3人で暮らしています。

【聞けなかった少しの本音】

この取材で私がわかったことは、両親の離婚によって美奈ちゃんが傷を負ったり、
辛い思いをしていないということ。
それはママが仕事を頑張って、経済的にも不自由を感じさせずに育てているから。
そして一緒にいられる時間は、相談や悩みを聞いてあげ、手の込んだ料理を作ってあげ、
何よりも美奈ちゃんを一番に考えているから。
私から見ても「こんなママだったら幸せだろうな」と羨ましく思うほんとうに素敵なママ。
そして美奈ちゃんはその愛情を受けて真っすぐに素直に育っています。

もちろん、おばあちゃんとおじいちゃんのサポートや、地域の家庭との繋がりも支えになっていると思います。
“ひとり親”というのは決してマイナス要素ではありません。
大切なのは親がどうあるか。どう愛情を注いであげれるか。
そして地域や学校で多くの大人が連携して子どもに関ってあげられるかが重要です。
“ひとり親”でも幸せに育つケースは沢山あります。

美奈ちゃんの寂しいの原因は
“パパがいない”ことにはなく、“一人っ子”という理由みたいですし。
でも美奈ちゃんには弟のような存在のりく君(犬)がいるから大丈夫みたいです♪

でも最後に1つ…。
アンケート項目に

親や大人に対して思うことは何ですか?
(子どもの立場からのほんとうの気持ち)

という質問があります。そこに書いてあった美奈ちゃんの回答は

「自分の意見ばかりおしつけないで。子どもの話もきいてほしい。」

これはどういう意味?と私が聞くと
「うーん…でもママいるから…」と美奈ちゃんはママを気遣って話してくれませんでした。

パパに対してなのか、ママに対してなのか、それとも他の大人に対してなのか、
わからなかったけれど、美奈ちゃんなりに感じている気持ちはあるんだと思います。
私は当事者として近い距離で取材をするけれど、それでも聞けないことも、踏み込めない
こともまだまだあるのです。
もし、また話をできる機会があれば、その時は内緒で教えてもらおうと思っています。