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自立支援法・後期高齢者医療制度の「廃止」に伴う混乱を防ぐために

ナショナルミニマム研究会が初会合

2009年12月13日 10時04分48秒 | ベーシックインカム
憲法に規定されている国が保障すべき「最低限度の生活=ナショナルミニマム」について、具体的な指標を検討する「ナショナルミニマム研究会」が発足し、11日に開催された。残念ながら研究会は非公開で、どのような議論がなされたのかは漏れ聞こえることから推測するしかない。非公開の研究会のため新聞報道もほとんどなく、国民の関心は低いまま。
ナショナルミニマムを考えることは、国民生活がどうあればよいか、国がどこまで関わるべきかを考えることであり、この研究会の運営方法では、あまりにも旧来型。積極的に情報公開していかないと、研究会で出された結論を実行に移そうとしても国民の理解を得られないだろう。非公開にすることで委員が安心して自由に発言できるメリットはある一方で、この研究会の成果を用いて制度見直しの方向性を示せないなどのデメリットもある。議論した結果が報告書として取りまとめられたとしても、その後の制度・政策の見直しにはつながらない(推進力が弱い)。これでは意味がない。このテーマに関しては、デメリットがメリットを上回ると思われる。ぜひとも、研究会の運営方針の見直しをお願いしたい。

「最低限度の生活」を議論=有識者研究会が初会合-厚労省
http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2009121100959

厚労省:生活保護水準の調査、検証を確認…研究会が初会合
http://mainichi.jp/select/today/news/20091212k0000m010050000c.html


研究会の主査は、岩田正美日本女子大教授。委員は、湯浅誠内閣府参与や作家の雨宮処凛氏ら。生活保護制度のあり方なども含めて議論し、来春をめどに意見を取りまとめるとのこと。生活保護の補足率が低いことなどが問題とされてきたが、これまで実態調査がなされておらず、具体的な数値=根拠がないために政策として取り組めなかった。そのため、この研究会で議論を進めるためのサンプル調査を実施する模様。今回は、その一部(速報)が研究会で報告されたらしい。

生活保護の母子家庭、就労4割 「健康に自信がない」
http://www.nikkei.co.jp/news/shakai/20091211AT1G1103511122009.html

生活保護の70%が健康不安 厚労省調査
http://www.47news.jp/CN/200912/CN2009121101000801.html

生活保護受給中の母子家庭を調査しているのは、12月から復活した生活保護の母子加算が念頭にあるものと思われる。今年度は予備費から捻出したが、来年度は「事項要求」に留まっており、予算は0円。このまま財源を確保できないと4月から再び母子加算がなくなってしまう。そのため、財務省に生活実態を知らせて予算確保につなげたいのだろうか。財務省では、事項要求は基本的に認めない方針で、厚生労働省内で予算を積み直して対応するか、4月から予備費を狙いにいくぐらいしか打つ手がなくなっている。

厚労と財務、予算編成巡り政務三役で初の協議
http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20091210AT3S1001U10122009.html


睡眠時間を削って働いていながら収入は生活保護の受給者世帯を下回ってしまう、基礎年金だけでは暮らしていけない... これが実態である。ナショナルミニマム研究会では、母子加算の予算確保や父子家庭への拡大のための根拠付けに留まることなく、雇用・労働政策を含む社会保障制度全体の見直しに取り組んでいただきたい。国が保障する「最低限度の生活」をどのように定義するかに関しては、社会福祉学で取り組まれてきたが、「貧困・生活困窮者」を取り巻く社会環境は大きく変わっている。生活保護から抜け出すことが「自立」だとし、自立に向かうレールに乗ることが良いことだとの価値観の下で制度の見直しがなされてきた(母子加算の廃止も、この文脈で決定されたこと)。どのような価値観をベースに生活扶助の仕組みを考えていくのか。ここまで遡って、国としてのあり方を議論してほしい。

「就労支援員」大幅増員へ=生活保護受給者の自立支援で-厚労相
http://news.goo.ne.jp/article/jiji/politics/jiji-091212X206.html