2013年12月11日(水)08:02
(読売新聞)
中国が初の月面着陸を目指すなど、大国間の宇宙開発競争が再び激しさを増してきた。
米国は有人飛行復活へ、民間と連携して巻き返しを図る。一方、若田光一さんも乗り込んだ唯一の有人宇宙船を持つロシアの宇宙技術は、スマートフォンでも利用される。国威発揚か、商業利用か。現状を探った。
◆17年にも再開
1969年のアポロ11号の月面着陸以来、世界の宇宙探査をリードしてきた米国。2011年に財政難からスペースシャトルを引退させた後、独自の有人宇宙船を持たない状況が続く。11月、約400キロ・メートル上空の国際宇宙ステーション(ISS)に若田さんらを運んだのも、ロシアの有人宇宙船ソユーズだった。
「これ以上ロシアに運賃を支払わなくて済むよう、米国は再び自分たちの手で飛行士を宇宙に送り出す必要がある」
米航空宇宙局(NASA)のチャールズ・ボールデン長官は11月17日、米フロリダ州のNASAケネディ宇宙センターで職員らを前に、危機感をあらわにした。ロシアはソユーズの運賃を毎年のように値上げし、今年4月のNASAと露宇宙庁の契約では1人あたり7100万ドル(約72億円)に達した。08年比で1・5倍だ。
ロシアだけでなく、後発の中国、インドも追い上げる中、オバマ政権は威信をかけ、復権に乗り出した。14年度のNASAの予算要求額は前年度とほぼ同じ177億ドル(約1兆8000億円)と制約がある中、NASAは、スペースX社やボーイング社など民間企業に委託し、ISSを往復する有人宇宙船の開発を進め、17年の初飛行を目指す。
ISSより遠い小惑星や火星の探査用には、NASAが自前で有人宇宙船「オリオン」を開発中だ。来年9月に無人試験飛行、21年に有人飛行に挑む予定だ。30年代までに有人火星探査の実現を目指す。