デュプラメソッド「理想的な淡水水槽」
9.3.3. 水槽内での"栄養素の泉"
水草が育つ熱帯地方の河川において、水中で失われやすい特定の栄養素を永遠に補給し続ける「栄養素の泉」(9.1.5.栄養素の泉参照)の発見と研究が、水槽内でも同様に、継続して必要な栄養素を水草に与える必要があることを我々に教えてくれた。
水草の成長に欠かせない栄養素の中で水中から失われやすいものに鉄、マンガンその他トレーサー元素がある。成長を維持するために水草はこれらをわずかな量しか必要としないが、もしどれか1つでも欠けるものがあると、水草にとって致命的なダメージとなる(リービヒの最小率)。水草と栄養素に関する問題としては、栄養素の供給が少なすぎても多すぎても水草が直接大きな損傷を受けること、さらにこれらの栄養素は水草が利用する前に水中で即座に酸化し沈殿してしまうことにある。
キレート(9.3.2.それぞれの水草に適した肥料参照)効果による失われやすい栄養素の結合に関する発見は、水槽での水草育成の研究に大きな進歩をもたらした。今日水槽の中で育成されている水草の多くは、ほんの数年前には見ることができなかったものばかりなのである。
最新の調査で、特定の条件下以外ではこれらの失われやすい栄養素の補給が水交換と水交換の間に連続して行われることは不可能とされた。水槽内の酸素濃度、pH値、水草の数・大きさ、光の量、魚の数、そして塩分の含有量がキレート類の栄養素の反応を左右する要素なのである。
こうした理由から、肥料は水交換の際に水槽に入れられる新鮮な水の量に応じて、水交換のサイクルと1日分の量を計算した上で理想的な配分を割り出して添加することが望ましい。
しかし最も良い方法は、魚に毎日エサを与えるように、失われやすい栄養素を「24時間ごとの施肥」という形で水草に供給することである。この際デュプラテストFe(鉄分試薬)を使い、各水槽の1日分の理想的な施肥量を見つけ出すことが重要である。
我々が提唱する24時間ごとに行う施肥方法のベースには、以下のような考え方がある。酸素濃度やpH値、またその他の水質を決定する要素に対して、様々な種類のトレーサー元素は全体として鉄分とほぼ同様の反応を見せ、特定の栄養素の沈殿と消費を抑えているのだ。ここでは0.1mg/ℓという理想的な鉄分濃度が理想値として求められる。比較的高い鉄分濃度(例えば1.0~2.0mg/ℓ)が様々な調査や実験から報告されることもあるが、これらの報告を何度聞いても、その値は我々には高過ぎる、あるいは不自然であると思われるため、採用するには至っていない。
Gert Kassebeer(ゲルト・カッセベール)博士は「Aquarium heute」誌88年3号の中で、ドライフィルターを使用している水槽では、特にキレートがバクテリアのエサとして消費されることに注意するよう述べている。確かにバクテリアが人工キレートをエサとして摂取するようになるまでにはとても長い時間がかかるが、この特殊なバクテリアの繁殖率は、水槽にキレートを添加することで上昇する。その結果、この特殊なバクテリアが繁殖した水槽では、一般の試薬では鉄分は検出されなかった。
写真左
熱帯の川で見られる典型的な「栄養素の泉」。鉄をはじめとする栄養素が高濃度で含まれた湧水が、川の中に流れ出している。
写真右
継続的かつ理想的な施肥を行うために開発されたデュプラプランツ(DuplaPlant)とデュプラプランツ24(DuplaPlant 24)。
※写真の製品パッケージは1992年頃のものです。
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