眼を開けば僕がいる。 **BNCTに夢を託して**

悪性脳腫瘍の妻との闘病生活を最新の治験療法(BNCT)や免疫療法の体験を交えて・・・。

光尽きるまで

2011-12-01 14:47:20 | 日常
今回を最後の投稿にしようと思います。

前回の更新から早いもので一年が、あっという間の一年が過ぎ去りました。
転移性肺腫瘍はラジオ波治療後の経過観察の中でその勢いを増し
昨年その治療の選択肢を奪い去りました。

大阪の大学病院に戻って「腫瘍が増殖し気管支を閉塞するようなら
放射線治療をしましょう。」と言って下さった放射線科の担当医の言葉を
拠り所に経過観察が続いた・・・そうして先月の事です。

右肺は腫瘍に埋め尽くされ完全に肺機能は失われています。
左肺にも数カ所の腫瘍がその増殖速度を速めているようです。
左鎖骨の転移部は見た目にも明らかに大きくふくれあがり、リンパの流れを
遮断しているのでしょうか、顔と左手がひどく浮腫むようになってきました。
放射線治療で一時は気管支を開く事が出来るかもしれない。
鎖骨の腫瘍を縮小できるかもしれない・・しかし今の妻の体力ではそれすら
かなわない状態になってしまったようです。

「今入院して治療を始めたら・・もう家に帰る事が出来なくなると思います。」
放射線の担当医も脳外科の主治医も「私の家族ならここから先の治療は考えません。」
と・・私は視線を合わせる事が出来ませんでした。
結局全ての治療を放棄して家に帰る事を選択するしかありませんでした。

今年に入ってからはそれでも元気に過ごせていました。
6月に体調を崩し入院した時も担当医の「帰れるうちに家に帰してあげましょう。」
と言う言葉を人ごとのように聞いていましたし、
二度の定位放射線治療で再発増殖した腫瘍を叩きながらも9月までは
それでも元気に過ごせていました。

しかしながら10月に入ると妻の体調は明らかに一段階下がったようでした。
6月の退院時に用意された在宅酸素は24時間稼働するようになってしまい、
その供給量が1㍑が2㍑になりあっという間に機械の限界値の5㍑に・・。
昨日まで出来ていた事が今日には出来なくなると言う恐怖、やるせなさ、むなしさを
妻はどう受け止めているのでしょう。
自分の思う言葉さえ口にする事が難しくなりました。

太陽のようにエネルギッシュに輝いていた妻が放つ弱々しい光を見て
私は今、失うものの大きさを実感しています。

それでも今日が終わりまた明日がくる事を願いながら一緒に過ごします。
その光尽きるまで・・・。


何も分からないまま立ち上げたブログでしたが、皆様のおかげで正面から
この病と向き合う事が出来ました。
最後になりましたが皆様の平穏な時が続く事を念じております。
長らくありがとうございました。

経過観察 その3

2010-11-17 19:53:11 | 希望
PETとMRIを受けた翌日、
11月4日がビクビクものの診察日でした。
結果、前回の画像に出現したものは影も形もありませんでした。
見えていたものが見えないと言うことは、見えていないものも存在する可能性が・・・。
考えすぎても結論が出るわけではないので今回は取りあえずホッとしておきます。

ただ5か月前のPETでは集積の見られなかった肺に数カ所の集積が確認されました。
少なくともこの半年までの間に何かが目を覚ましつつあるという思いは確かなもの
だったようです。
さていよいよ今月末に肺の術後3か月の経過観察が待っています。
私達にもう少し時間を下さい・・今の私にはただ祈ることしかできません。

そうそう、その時に主治医からBNCTが自費診療ではありますが来月より再開される旨の
話を聞くことが出来ました。
どれほどの病種まで対応して頂けるのかは定かではありませんが病に苦しむ皆様の救いに
なることを心より祈ります。

経過観察 その2

2010-11-15 11:01:41 | 不安と絶望
10月4日
3ヶ月ぶりのMRI、そして診察の日でした。
目の前のディスプレイに撮ったばかりの画像がアップになっています。
その一部に視線が釘付けになりました。

今までとは全く違う位置に明らかに異様なものが映し出されています。
「再発する時は前回の手術痕の側からでるでしょうから・・大丈夫これは放射線壊死でしょう。」
と言う主治医の言葉に納得しがたいままに病院を後にしました。

胸の内にあの画像がグズグズくすぶり続けているそんなときに携帯に電話が入りました。
主治医からでした。
「ポラリスさん・・実は少し気になるんです。」
「はい私もすごく気がかりです。」と少し時期は早いのですがPETを受けてみる事にしました。
一ヶ月後のPETと再度のMRIが予約されました。

再発が分かったからと言って選択肢もない状態の悶々とした日々が過ぎていきます。
頭が痛いと言っては、体の動きが悪いのを見ては、眠っているその寝顔を見ても不吉な予感が
湧き上がってきます。
のろのろと一日が時間が過ぎていきます。

経過観察 その1

2010-11-12 11:07:05 | 不安と絶望
ラジオ波治療一ヶ月後の経過観察のため去る9月24日にO大学病院に行って参りました。
CTの画像判断では治療部位に問題はありませんでしたが、3カ所残っていたはずの
腫瘍が新たに2カ所見つかり合計5カ所の腫瘍が確認されました。

同時に行われた肺機能検査では術前の60%に肺機能が落ちている事が解り、この状態では
到底ラジオ波治療は出来ないという事です。
術後の肺や横隔膜付近の痛みのため検査数値は落ちているものの実質の肺機能はここまで
落ちていないはずという担当医の言葉にすがる想いです。
次回の2ヶ月後の経過観察で判断するという事になりました。

今回病院に行くに当たって初めて新幹線を使用しました。
障害者手帳を交付されているという事で介助者を含めて一人分の費用で乗車する事が出来
多目的室(個室のコンパートメント)を提供していただきました。
案内や介助も万全で快適な往復の小旅行気分を楽しめました。

ここに来て一斉に目を覚ましたかのような腫瘍の出現には目をそらす事も出来ず
不安感に苛まれる事は否めません。
今日のある事に感謝して今日一日を精一杯行きようという思いで何とか踏みとどまっています。
さて来月は原発巣の経過観察が待っています。
肺の治療に専念できる事を祈るばかりです。

父の退院

2010-09-02 15:15:21 | 日常
昨日、父が退院し家に帰ってまいりました。
5月の連休中に下血を訴えたため救急診療に連れて行ったところ、たまたま担当医がおられ
大腸内視鏡検査をして頂ける事になったのです。

20㎝入ったところで腸内は完全に塞がっており、その先の状況は分からなかったのですが
大腸癌の診断を下され即日入院となり手術の日程まで決められてしまいました。

今年85歳になる父です、少し認知症の傾向もあり穏やかに過ごせるものなら緩和ケアをと考えもしたのですが、
放置すれば週単位で腸閉塞が起こり得る・・そしてそれは非常な苦痛を伴いますよという主治医の言葉に
手術以外の選択肢を考慮する事は出来ませんでした。

幸い手術こそ無事に終えたものの一時は息子の私を見ても
分からない状態にまで、危惧した認知症が一気に進んでしまいました。
そんな状態になっても父にあるのは、唯々帰宅願望・・・。

治療を重ね3ヶ月を過ぎ病院側の落ち着かぬげな物言いの中で(今の老人医療システムでは仕方のない事ですが)
4ヶ月を前にした昨日家に帰ってまいりました。
涙ながらに家に入っていく父を見て・・まあこれで良かったんだなと、
割り切れぬ思いを少し残しながらも・・ほっと一息ついた気分ではあります。

介護に携わって頂く皆さんの力添えをいただいて、また私達の日常が始まります。

ラジオ波焼灼療法

2010-08-27 09:09:10 | 迷い
ラジオ波焼灼療法のため入院していたO大学病院を一昨日退院いたしました。
5カ所の腫瘍のうち1カ所を11日と2カ所を18日の2度に分けて施術を行いました。
残る2カ所は2~3mm程度の大きさという事もあり今回は見送り経過観察という事になりました。
見えているものの全てを処置しておきたいという気持ちではあるのですが、
1週置きに3回続けてというのは体への負担が大きすぎるという判断のようです。

1回目の術後の副作用は思ったほど出ず意外と楽に終わりました。
しかし2回目は2カ所とも胸膜に近くなおかつ心臓に近接しており、CT画像上ではラジオ波電極針が心臓まで
4mmくらいの位置まで刺入したため術後の副作用は厳しいものでした。
38度半ばの発熱と患部の痛みに、胸水がたまったための息苦しさなどです。
炎症を抑えるためのステロイド投与によってやっと炎症反応が治まり退院する事となりました。

胸に十数カ所の傷跡と未だに痛み止めを欠かす事の出来ない疼痛が残っています。
術後のカンファレンスで2カ所残った腫瘍の経過観察等の説明とともに新たな転移が出てきた時には
処置する事が出来ない旨の示唆を受けました。
外科手術や放射線治療と違い何度でも行えるという事に望みをかけた治療法であった筈でしたが・・・。

まあ見えない先の事を不安に思っても仕方がありません。
今やれる事を一つずつ、足元を見て一歩ずつ歩いて行こうと思います。

遠隔転移・・・

2010-08-24 15:18:58 | 不安と絶望
未来に生を繋いでいただいた者の使命だと大上段に構えた切先が・・・
いつのまにやら下を向いています。

1月に入院をして続けていたリハビリの成果はそれなりに上がっていたのですが
左足の動きは6度目の手術前の状態には回復せず、そんな中で受けたMRIの結果脳に腫れが。
今ならアバスチン投与で左足の動きは改善するかも・・という主治医の言葉にリハビリを中断し
再びアバスチン投与のために退院する事を決断しました。

しかしながら、この頃から左鎖骨の転移部あたりの痛みを訴えるようになり胸部CTを撮り
経過観察のつもりが、とんでもないものが・・・多発性肺転移でした。
両肺に5カ所の腫瘍が確認されました。

転移性のしかも多発性肺腫瘍に対しては外科的手術はほぼNGです。
定位放射線治療もこと肺についてはピンポイントに照射するのは難しく腫瘍周りを広範囲に
照射せざるを得ないため残存肺機能に大きなダメージを与えます。

残された選択肢は以前から情報を収集していたラジオ波焼灼療法か凍結療法に絞られてしまいました。
後者は東京のK大学病院で行われ前者は中国地方のO大学病院が症例数の多さから考えられます。
今後の経過観察を考えると地理的な事も含めO大学病院のラジオ波焼灼療法に賭ける事にしました。
もちろん根治療法ではなく対症療法である事は承知の上ですが・・・。
今回は3カ所の腫瘍に治療を施し残る2カ所は経過観察という事になります。

妻の脳腫瘍が根治する事はないであろう事を理解はしていましたし、
早晩、遠隔転移も起こってはくるだろうと予測もしていました。
しかしそれが現実のものとなると・・・ほとほと自分自身の覚悟の甘さに呆れてしまいます。
きれい事だけではなく、ありのままの姿を病変を書いていかなければと思う気持ちが、
現実から目を背けたいと思う気持ちに負けてしまったということなのでしょう。
厳しいこれが現実です・・・。


今BNCTはどこへ・・・

2010-08-17 20:23:01 | 不安と絶望
昨年末来、どうしようもない状況に陥り、思うことをどうしても文字にすることが出来ず
このままブログを閉鎖してしまおうかとずっと考えておりました。
そんな時に妻の主治医から電話がありました・・・。
非常に微妙な問題で訪問される皆様から批判されることを覚悟の上で、それでもやはり書かずにはおれません。

BNCTは東海と熊取の両原子炉が停止する以前から治験療法として行われておりました。
治療を受けられる患者は未知のリスクを背負うことで無償で治療を受けることが出来たのです。
両原子炉が再開され、わずかながらの国からの補助金を使って治療が継続されてきました。
その費用も今まさに枯渇しようとしています。
治験を継続することも出来ず、確固としたエビデンスが確立されていないという認識の中、
自由診療として患者の自費負担での治療を受けることも出来ず彷徨っているかのようです。

必死になって情報を収集し、すがりつく思いで受診し、軽い負担とは到底言えない治療費用を
自己負担してでもという患者が置き去りにされようとしています。
お金のないものには治療を受ける権利は無いのかという批判には、敢えて目をつぶらせてください。
どうすることも出来ないやるせない気持ちをブログに書かずにはおれませんでした。

此の地でBNCTという先端治療が行われていると言うことを目を背けずに真摯に見つめて欲しい。
街興しだとかいう低次元な目線ではなく、今この時を必死に生きようとしている患者がいることを
真剣に見て欲しい。
真剣に前を向き取り組む医療関係者及び患者家族の方々を揶揄する意図は毛頭ありません。

血を吐くような患者、家族の声をどこへ届ければよいのでしょうか。
リスクを負う覚悟でいる者に、せめてその覚悟に真摯に向き合って欲しい・・ただそう思うだけです。

パーソナライズド・メディシン

2010-04-27 14:41:22 | 日常
先日、日経メディカルに興味深い記事が掲載されていました。
(論旨を変える事のない程度で編集させて頂きました。)
指数関数的に変化・変遷する現代社会ですが、生命科学の分野においても例外ではありません。
DNAの二重らせん構造に遺伝情報が隠されている事が発見されたのは1953年です。
そして1990年に始まったヒトゲノムプロジェクトにおいて13年の歳月と30億ドル以上の経費をかけて、
人間のゲノムのすべての塩基配列を解読するのに成功しました。
その後の技術的進歩によって2008年の終わりには、すべての塩基配列の解読を
5000ドルで24時間以内にできるまでになったのです。
このような生命科学の急速な進歩は、既に現場の医療を変え始めているのです。

「Business Week」誌によると、たいていの薬は服用者の50%くらいにしか効かず、
ある統計によれば2008年にアメリカで処方された3000億ドルの処方薬のうち、
約1500億ドル分は、その薬が有効でない患者のために使われたとのことです。
しかもその上、効かない薬で引き起こされた副作用を治療するために、
何百億ドルもの医療費が費やされたそうです。
こうした状況を打開する方法は、ある薬が効く人と効かない人の遺伝子の違いを調べ、
効く遺伝子を持っている人だけに当該の薬を処方すればよいのです。

現在では、技術的にも経済的にも充分に可能なことです。
アメリカのベンチャー企業Navigenics社ではオンラインで申し込んでから7日で検査キットが到着し
唾液サンプルを送り返して11日後パスワードで保護されたウェブサイトで結果が見られるようになるそうです。
999ドルの費用で脳動脈瘤をはじめとする28の疾患にかかるリスクの有無を分かりやすく
説明してくれます(2010年3月現在)。
究極の個人情報である遺伝子情報を取り扱うことなしには成り立たないパーソナライズド・メディシンが
根付くためには「自分の体は自分で守る」という意識改革が必要かもしれません。

4月24日の毎日新聞に金沢大・子どものこころ発達研究センターの以下のような発表が配信されています。
「オキシトシンは出産時に大量に分泌され、子宮や乳腺の収縮などに作用、陣痛促進剤などとして使われ、
他者を認識したり、愛着を感じる機能に関係するとの研究結果も最近出され、知能の高い自閉症の
アスペルガー症候群で効果が実証されたとの報告もある。」
この報告を読まれた同センターに通院する20代の男性患者のご両親が
08年にオキシトシンの点鼻薬を輸入し数カ月服用したところ、
(1)主治医の目を見て話す(2)対話で笑顔を浮かべる(3)IQテストが受けられるようになるなど症状が改善、
10カ月間投与し改善状態の持続も確認できたそうです。

男性は3歳で自閉症と診断され、服用前は他者と目を合わせず、
質問におうむ返しの反応しかできなかったそうです。
お子さんの障害、病態そして成長をつぶさに観察し積極的に情報収集を行い、
適用例もない薬剤の手配および投与に至る決断をされたご両親に敬意を表します。
お子さんに対する深い愛情と治療に対する前向きな姿勢には感動を覚えます。
つまるところ私達は如何に「患者力」を磨き上げていくか
という事にかかっているのだ、という想いを新たにさせられました。


テモダール点滴静注用製剤が製造承認

2010-03-30 07:07:10 | 日常
昨年来報道のありましたテモダール点滴静注用製剤が製造承認されました。
現在使用されているカプセル製剤とこの点滴静注用製剤が全ての方の選択肢になるかどうかは
定かではありませんが内服できなかった方にとっては福音になるかと思います。
テモダールを服用されている方にとっての辛い副作用である悪心・嘔吐が解消されるのかどうかは今後の
情報を待ちたいと思います。
ただ多くの方が血管が出づらくなり静注に苦労されているのを見ますと悩ましい選択肢ではあります。
以下は2010.3.26 日経メディカルオンラインに掲載された記事です。

2010年1月20日、抗悪性腫瘍薬テモゾロミドの注射製剤(商品名:テモダール点滴静注用100mg)が製造承認を取得した。
テモゾロミドを主成分とする薬剤としては、2006年7月にカプセル製剤が「悪性神経膠腫」の適応で承認されているが、
今回承認された点滴注射製剤はカプセル製剤と生物学的同等性が検証された結果、カプセル剤と同じ適応で承認されている。
悪性神経膠腫とは、脳腫瘍の神経膠腫に分類される腫瘍群のうち、悪性度の高い腫瘍の総称である。
この悪性神経膠腫は、脳組織内に発生し周囲の脳組織内に浸潤しながら発育することから
脳機能を保持するために外科的手術、術後放射線療法、術後補助化学療法を組み合わせた治療が行われる。
このうち術後補助化学療法ではニムスチン塩酸塩(商品名:ニドラン)、ラニムスチン(商品名:サイメリン)、
インターフェロンβ(商品名:フエロン、IFNβモチダ)などが用いられ、
さらに2005年にはニムスチン塩酸塩、プロカルバジン塩酸塩(商品名:塩酸プロカルバジン)、ビンクリスチン硫酸塩(商品名:オンコビン)の
3剤併用療法(PAV療法)が悪性星細胞腫または乏突起膠腫成分を有する神経膠腫に対する治療として認められてきた。
テモゾロミドのカプセル製剤は、国内の脳腫瘍関連の適応を持つ抗悪性腫瘍薬として19年ぶりに承認された薬剤であり、
現在、局所放射線照射との併用及びその後の単独療法、また再発の悪性神経膠腫の治療薬として広く使用されている。
テモゾロミドは抗悪性腫瘍薬の中ではアルキル化薬に分類され、肝臓での代謝を必要とせずに生体内でメチルジアゾニウムイオンになり、
DNAをメチル化することによってDNA損傷を引き起こす。これにより、細胞周期の停止およびアポトーシスを誘導し、細胞増殖を抑制する。
さらにテモゾロミドは、血液脳関門を通過しやすく、脳脊髄液への移行性も良好という特徴がある薬剤である。
テモゾロミドの点滴注射製剤は、頭蓋内圧上昇に伴う悪心・嘔吐や、脳幹への腫瘍の浸潤などによって、
カプセル製剤の服用が困難な症例などに対して、有用な治療選択肢である。
海外では、1991年にEU(欧州連合)で承認されて以降、カプセル及び注射製剤を合わせて世界90カ国で承認されており
点滴注射製剤は33カ国で承認されている。
テモゾロミドの点滴注射製剤の承認で、悪性神経膠腫患者における治療選択肢が拡大されることになる。
なお、今回承認された点滴注射製剤は、従来のカプセル製剤と生物学的同等性が確認されていることから、
悪性神経膠腫に対する新たな有効性と安全性の検討を主目的とした臨床試験は行われていない。
したがって点滴注射投与においても、カプセル製剤と同様に、白血球減少や血小板減少など骨髄抑制、
ニューモシスチス肺炎、感染症、間質性肺炎、脳出血、アナフィラキシー様症状などの重大な副作用の発現に十分注意することが必要である。