寺子屋ぶろぐ

日記から身近な法律問題の解説まで。

相続人って誰なのよ⑧(代襲相続って)

2010年05月18日 | 相続制度

相続には、代襲相続(ダイシュウソウゾク)という制度があります。

代襲相続が発生する際のキーワードは、次の3つです。

廃除
欠格事由該当
③死亡。

「肺結核死亡」と語呂合わせで覚えられます。

代襲相続について、具体例でご説明します。
代襲相続の原因として最多の死亡を例にします。

お父さん、お母さん、お兄ちゃん、僕、お爺ちゃん(父方)の5人家族がいました。
お爺ちゃんの子どもは、お父さんだけです。
お父さんは、お爺ちゃんが亡くなった時には、既に死亡していました。

では、お爺ちゃんの相続人は、誰でしょうか。

お父さんが生きていればお父さんのみでしたが、既に死亡しています。
したがって、お父さんは相続人にはなれません。

ここで発生するのが、お父さんの死亡を原因とした代襲相続です。

これにより、お父さんが相続するはずだった分を、お父さんの子ども(お爺ちゃんの直系卑属)であるお兄ちゃんと僕とが、平等に相続します。

つまり、代襲相続とは、本来であれば相続人だが上記3つの原因で相続人になれなかった場合に、その人に代わって別の人が相続権を手にします、ということです。

では、代襲相続人となれる人は誰(「別の人」とは誰)でしょうか。
キーポイントは、以下の3つです。

①直系卑属が相続人となる場合にはどこまでも生じ続けます。
②兄弟姉妹が相続人となる場合には、1回しか発生しません。
③直系尊属では代襲相続は発生しません。

①直系卑属が相続人となる場合にはどこまでも生じ続けます。

直系卑属とは、家系図で誰かを起点にして、直系で下にさがって続いていく血縁者のことです。
つまり、僕(起点)→僕の子→僕の孫→僕の曾孫→僕の玄孫・・・が、直系卑属です。

先の例で、お爺ちゃんの代襲相続人は、お兄ちゃんと僕でした。
ここで、お兄ちゃんに一人息子がいたとします。
更に、お兄ちゃんは、お爺ちゃんの死亡前に亡くなっていたとします。
すると、お爺ちゃんの財産について、お父さんが相続するはずだった分を代襲相続によりお兄ちゃん(孫)と僕(孫)が相続することになるけれども、そのお兄ちゃんが代襲相続するはずだった分は、お兄ちゃんの一人息子(曾孫)が、お爺ちゃんの再代襲相続人として相続します。

更に更に、その一人息子に一人娘がいたとします。
一人息子は、お爺ちゃんの死亡前に亡くなっていたとします。
すると、お爺ちゃんの財産について、お父さんが相続するはずだった分を代襲相続によりお兄ちゃん(孫)と僕(孫)が相続することになるけれども、そのお兄ちゃんが代襲相続するはずだった分は、お兄ちゃんの一人息子(曾孫)が、お爺ちゃんの再代襲相続人として相続するはずだったが、その一人息子が再代襲相続するはずだった分は、一人娘(玄孫)が、お爺ちゃんの再々代襲相続人として相続します。

更に更に更に、その一人娘が一人っ子の母親であり、お爺ちゃんの死亡前に亡くなっていたとします。
すると・・・。
という具合に、直系卑属の代襲相続は、どこまでも下に引き継がれていきます。

お爺ちゃんが長命で、その子どもや孫などが短命である限り、再々々々々・・・代襲相続人が発生します。

②兄弟姉妹が相続人となる場合には、1回しか発生しません。

具体例を設定します。

既に両親を亡くしている3人兄弟がいました。長男、次男、三男です。

長男は独身です。

ここで、長男が亡くなると第三順位相続(兄弟姉妹相続)が発生します。
つまり、相続人は、次男と三男です。

しかし、長男が死亡する前に次男が死亡していたとします。
次男には、一人息子がいました。

すると、長男の財産について、次男が相続するはずだった分を代襲相続により一人息子が相続します(もちろん、三男は直接に相続しています)。

更に、その一人息子も、長男が死亡する前に死亡していたとします。
一人息子には、一人娘がいました。
すると、長男の財産について、次男が相続するはずだった分を代襲相続により一人息子が相続することになるけれども、その一人息子が代襲相続するはずだった分は、次男の再代襲相続人として一人娘が相続・・・できません。
兄弟姉妹相続の場合、再代襲相続は認められていません。代襲相続までです。

したがって、この場合、長男の相続人は三男だけになります。

③直系尊属では代襲相続は発生しません。

直系尊属とは、家系図で誰かを起点にして、直系で上にのぼって続いていく血縁者のことです。
つまり、僕(起点)←父母←祖父母←曾祖父母←・・・が、直系尊属です。

直系尊属は、代襲相続の対象になりません。
それは、直系尊属が相続人となる要件が、「直系尊属であること」そのものだからです。
つまり、代襲相続という概念を使わなくて良いのです。

第一順位相続の相続人となるための要件は、であることです。
第三順位相続の相続人となるための要件は、兄弟姉妹であることです。
この2つの場合、「子や兄弟姉妹が先に死んでいたらどうするの?」という点をカヴァーする必要があります。
だから、代襲相続制度を設け、孫・曾孫・玄孫・・・の場合も相続できるよ又は死亡した人の姪・甥まで相続を認めるよ、と定めました。

第二順位相続の場合には、このカヴァーが必要ないのです。

例えば。

天涯孤独の身の上の僕が死にました。
祖父母、父母、配偶者や子もいません。

けれども、戸籍謄本等で相続人調査をした司法書士が、発見しました。

年齢が130歳の曾祖母(父方の祖母の母親)が生きているのを。

この場合、この曾祖母は、第二順位相続の相続人として、直接、僕の相続人になります。
直系尊属だから。
したがって、第二順位相続で代襲相続制度を設ける必要はありません。


代襲相続原因が廃除及び欠格事由該当のケースでも、上記の全ての事は同様です。

・・・「相続人って誰なのよ⑨(養子縁組すると)」につづく。