寺子屋ぶろぐ

日記から身近な法律問題の解説まで。

自筆証書遺言の身だしなみ⑯(共同遺言の禁止)

2010年06月10日 | 自筆証書遺言
…共同遺言。
何?ソレ。

という訳で。

民法975条
「遺言は、2人以上の者が同一の証書ですることができない。」

この規定は、「共同遺言の禁止」というタイトルが付けられています。

結局、遺言は一人一通でお願いします、という事です。

理由は、以下のとおりです。

人の最終意思を尊重するために設けられたのが遺言制度です。
したがって、人は、死ぬギリギリまで、遺言書を作成することが認められています。

そして、複数の遺言書が存在する場合、その内容で抵触する部分については、一番最後に作成された遺言書が、有効なものとされています。
このことは、遺言制度は、遺言者による撤回の自由を認めていると換言できます。
更に言えば、撤回の自由があるという事は、撤回しない自由もあるという事です。

仮に、AとBの二人が一通の遺言書(共同遺言書)を作成したとします。

Aは撤回したいけれどBは撤回したくないと考えていたら、どうしましょう。

・Aの撤回を認めないと、Aの撤回の自由が制約されます。
・Aの撤回を認めると、Bの撤回しない自由が侵害されます。

また、Aが、上の共同遺言書と内容が抵触する、A単独名義の遺言書(A単独遺言書)を作成したとします。
この場合でも、同じ問題が生じます。

・A単独遺言書を無効とすると、Aの撤回の自由が制約されます。
・A単独遺言書を有効とすると、共同遺言書を撤回しないというBの自由が侵害されます。

つまり、共同遺言を認めると、その撤回は、AB一緒でなければならないとの結論に行きつきます。
そして、そうなってしまった時点で、既に遺言の撤回の自由への制約になり、結果的に、遺言制度の根幹である人の最終意思の尊重が果たせない状態になってしまうのです。

なので。
共同遺言は、アカンっ!!

…「自筆証書遺言の身だしなみ⑰‐1(遺言執行者って?)」につづく。