土茯苓(菝葜、山帰来)は清熱解毒と萆薢は化湿濁、祛(風)湿に作用しますが、尿酸を下げる効果があるとされます。張琪氏の今までの医案でもカップルで使用されているようです。( )内に私の印象を付記します。
患者:黄某 70歳 女性
初診年月日:2006年4月26日
主訴:乏力、腰酸不快1年間。
病歴:
1年前軽度乏力、腰酸不快、診察治療を受けず。2005年11月15日検査にて腎機能やや悪化、Cre146μmol/L(1.65mg/dL)、BUN9.06mmol/L(54.36mg/dL)、ハルピン工業大学病院で腎衰寧などの中薬治療を受けた。2005年12月、血尿が生じたが未治療。平時、腎衰寧を服用していた。(付記:腎衰宁は中成薬の一つ。丹参、大黄、太子参、黄連、牛膝、半夏(制)、紅花、茯苓、陳皮、甘草からなるカプセル製剤)2006年1月24日:Cre131μmol/L(1.48mg/dL)、4月10日、Cre132μmol/L(1.49mg/dL)、BUN7.05mmol/L(42.3mg/dL)、尿酸522μmol/L(8.77mg/dL)、二酸化炭素結合力19.6mmol/L。系統的治療を求め氏を受診。
初診時所見:
乏力、腰酸あり、時に関節痛、舌質紅、苔白厚、脈沈滑。尿沈渣RBC満視野/HP、潜血(2+)、尿蛋白(+)。血清脂質、心電図、末梢血検査正常域。超音波検査:双腎結石(直径0.7~0.5mm)。Cre132μmol/L(1.49mg/dL)、BUN7.05(42.3mg/dL)、尿酸522μmol/L(8.77mg/dL)、二酸化炭素結合力19.6mmol/L。
(付記:4月10日と初診4月26日の検査値がほぼ一致しています。強い顕微鏡学的血尿を伴う腎機能障害がありますが、腎不全状態は軽度です。腎結石の存在場所と個数が不明です。超音波検査で直径1mm以下の結石の個数を確定することはやや難しい作業です。尿酸値が高いことと、結石があることから、腎結石を伴った慢性腎炎という診断も可能です。ただし、痛風腎の診断まで可能かと言えば、まだ不可能でしょう。いわゆる典型的な痛風の関節症状はありません。私は、尿酸値の高い慢性腎炎の症例は可及的にアロプリノール等で尿酸値を下げるようにしています。尿酸沈着による腎機能の低下を予防するためです。)
中医弁証:脾腎両虚 湿熱内蘊
西医診断:慢性腎不全
治法:清熱利湿涼血 補脾腎
方薬:
土茯苓30g 萆薢20g 桃仁20g 赤芍20g 丹参20g 大黄10g 小薊30g 白茅根30g 側柏葉20g 茜草20g 藕節(収斂止血)20g 蒲黄15g 山茱萸20g 熟地黄20g 山薬20g 茯苓20g 牡丹皮15g 澤瀉15g甘草15g 紅花15g
水煎服用1日1剤。
(付記:下焦熱盛、舌質紅 苔白厚から湿熱内蘊の診断になります。尿路結石、腎結石は湿熱が原因であるとは中医診断学の基礎事項です。土茯苓(菝葜、山帰来)は清熱解毒と萆薢は化湿濁、祛(風)湿に、桃仁、赤芍、丹参、紅花は活血祛瘀に、大黄は通腑泄濁、活血に、小薊から蒲黄までは(涼血、収斂、活血)止血に、山茱萸以下甘草までの六味は六味地黄湯の組成です。標本の立場からすれば標本兼治、標本同治の方薬内容です。)
二診 2006年5月10日。
上薬服用後病症減軽、身体は以前に比べ有力、関節痛の発作無し。内因性クレアチニンクリアランス97.9ml/min。Cre121.9μmol/L(1.38mg/dL)。弁証同前、上方加減治療を継続。
方薬:
土茯苓30g 萆薢20g 桃仁20g 赤芍20g 丹参20g 大黄10g 小薊