?宗昌氏医案 気陰両虚 濁邪阻滞案
BUN233、Cre7 放置しておけば死亡もありえた尿毒症の漢方治療
(中華伝世医方より)
患者:卓某 65歳 男性
初診年月日:1991年2月28日
病歴:慢性腎炎の病歴30年間
初診時所見:面色痿黄、貧血、口干、食欲低下、乏力、咳嗽は多くないが、喀痰は不暢で粘る、苔黄?辺尖紅、脈細数、右下肺呼吸音減弱、脈拍数80/分、期外収縮が頻発する、血圧146/95mmHg、
尿検査;蛋白(2+)赤血球0~2/HP、赤血球(2+)、尿比重1.020、BUN 38.91mmol/L(233mg/dl)クレアチニン619μmol/L(7.0mmg/dl)。
心電図検査:心室ブロックを伴い、左心室肥大、胸部レントゲン検査では高血圧性の心疾患を認めた。
西洋医診断:慢性腎不全(尿毒症)
中医弁証:気陰両虚 濁邪阻帯
治則:益気和胃 降濁解毒
処方:
生晒参(生干人参)10g 蘇葉30g 川黄連6g 黄芩12g 白花蛇舌草30g 半枝蓮30g 土茯苓20g 晩蚕沙30g 六月雪30g 半夏12g 丹参15g 茯苓15g 薏苡仁30g 玉米須30g 水煎服用 毎日1剤
コメント:
玉米須:とうもろこしの茶色いヒゲ(ナンバの毛)を乾燥させたものです。中国民間では蛋白尿の軽減や利尿目的に玉米須をお茶代わりに服用します。
六月雪:祛風,利湿,清熱,解毒に作用します。解毒利水消腫作用が腎内科で利用されます。http://blog.goo.ne.jp/doctorkojin/d/20121101
晩蚕沙(ばんばんしゃ)(蚕沙が一般の呼称です)甘辛温 闢穢(汚いものを除くという意味)化濁 袪風除湿に作用します。蚕の糞便が蚕沙であり、死んだ蚕の乾燥物が平肝熄風薬の白僵蚕(びゃっきょうさん)になります。
経過:
上方を40余剤服用後、精神状態が好転し、食欲も出て、口は既に渇かなくなってきたが、ただ背部の酸痛があり、大便は軟便気味であり、1日便通は1~2回であった。
約3年後の1994年4月16日再度血液検査をした。 BUN 34.27mmol/L(205mmg/dl)、クレアチニン552μmol/L(6.23mg/dl)、上方から白花蛇舌草、半枝蓮を去り、赤芍15g 制大黄2g 薏苡仁30gを加え、活血利水、胃気を庇護した。
評析
翻案は謝氏の経験方である蘇葉黄連湯(蘇葉30g 川黄連5~6g 半夏12g 丹参15g 茯苓15g 玉米須30g)の加減方治療である。
方中
蘇葉は行気寛中、黄連を配伍して、清熱燥湿、降逆止嘔の作用が顕著である;
半夏、茯苓は健脾燥湿 降逆和胃に作用し、丹参は活血化瘀に、玉米須は清利湿熱に作用し、共奏して和胃降濁解毒の効果がある。
謝氏の経験によれば、本方を臨床応用する場合には随証加減を行う。
気陰両虚者には、気虚には生干人参、生黄耆を;陰虚には生地、山茱萸を加える。
素体病機がち、或いは脾虚湿勝、健運失司、胃脘虚痞、苔白?の者には、蒼朮、懐山薬、薏苡仁、砂仁を加え、腎エコー検査で腎の萎縮、あるいは両腎の皮質が薄くなっていて、クレアチニンがさほど上昇していなく、尿量が少ない、血瘀が明らかな場合には、赤芍、益母草、炮山甲を加える。
但し、出血傾向を有する患者、たとえば衄血があるばあいには慎用する;
クレアチニン、BUNが上昇し、濁毒邪実の者には、先ず大黄(生或いは制)、白花蛇舌草、半枝蓮、土茯苓、晩蚕沙、六月雪、蒲公英、緑豆衣を加え、1ヶ月を1クールとして2~3クールの治療を行う。
治療期間中は飲食養生に注意し、減塩、低蛋白、低燐、高カロリー食を主体とする。
尿毒症期患者には中薬を灌腸保留する方法がある、薬用:生大黄、煅?牡(煅竜骨、煅牡蠣)槐花各30g、濃く煎じて200mlとして、毎日1回、一ヶ月を1クールとして、2~3クール治療する。
中医治療の他に、水分電解質平衡に注意し、アシドーシスを補正し、血圧が高いものには西洋降圧剤投与も考慮する。
ドクター康仁のコメント
BUN200以上で3年も人工透析をしないで、生存し続けたとは、脱帽です。尿毒症性肺炎、心不全、肺水腫よくも、防げましたね。
2013年4月9日 記