乳がんのあらゆる場合を想定した漢方治療(中医学治療)とは?
日本では漢方治療だけで乳がんを治療することはほとんど無い。したがって、手術療法、抗癌剤による化学療法、放射線療法、ホルモンリセプター阻害剤などによる治療と併用して行う場合がほとんどである。 日本では、中国での中医病院と事情が大いに異なる。乳がんのあらゆる場合を想定した漢方薬のがん治療の役割として、次のようなことがあげられる。
先日、同級生の一人が乳がんで亡くなったとの連絡メールが届いた。残念!医療関係者は、立場上なおさら、病院に遠慮して漢方治療などとは、とても言い出せなかったのであろう。
ご冥福を祈りたい。
漢方治療の役割 総論
(1)将来に妊娠を希望する若年の女性が、西洋抗癌剤の胎児の奇形などを引き起こす危険性をおそれ、西洋抗癌剤の投与を希望しない場合も含めて、
漢方抗癌生薬による抗癌剤としての役割
(2)免疫力の低下した状態を改善する役割
(3)西洋抗癌剤、放射線療法などの副作用防止という役割
(4)西洋抗癌療法が骨髄抑制のために続行不可能という事態にならないように、
骨髄抑制の回復を促進する役割
(5)がん悪液質を予防、あるいは改善する役割
(6)モルヒネにも抵抗性の痛みを、モルヒネ剤と共同で改善する役割
(7)精神不安、不眠傾向、うつ状態、いらいら状態を改善する役割
以上が、乳がん治療における漢方治療の役割である。
各論
(1)漢方抗癌生薬による抗癌剤としての役割
岡本康仁堂クリニックの症例から、使用している生薬をご紹介する。
その他、蒲公英根 白花蛇舌草 半枝蓮 栝楼根 蛇莓 夏枯草 七叶一枝花 龍葵 などの抗癌生薬を組み合わせる。威霊仙を組み合わせることも多い。
植物薬が多いが、動物薬も使用する。例えば、
全蝎(ゼンカツ中国語でチュアンシエ: さそり)
露蜂房(中国語でルーフェンファン: キホシアシナガバチの巣)
抗癌生薬の組み合わせと量の加減は各患者さんにより異なる。
さて、漢方の乳がん治療の基本は「温陽」を主とする。
「祛邪=がん細胞の殺傷」をもって「扶正=免疫力と生命力の回復」をもたらし、
同時に、扶正をもって祛邪をもたらす。なにか禅問答のようであるが、
要は、扶正と祛邪のバランスを重視する。
漢方抗癌生薬の多くは「清熱解毒利湿抗癌に属する」。露蜂房や栝楼根を除き、多くは「苦寒薬」に属し、いくら漢方生薬といえども、胃腸障害をもたらす場合がある。そういった胃腸障害を、漢方の世界では「中焦を損ねる」と言う。 中焦は後天性の「気」の生成場所である。「気」の作用のうちの「防御作用」は「免疫力」である。したがって漢方の世界では、祛邪=がん細胞の殺傷の単独治療はありえない。
祛邪と扶正のバランスのとり方は、患者ひとりひとりによって異なる。
乳がん治療で中国で市販されている漢方抗癌製剤を例に取れば、扶正と祛邪が平行して行われているのがわかる。 例えば、、、 続く