きみの靴の中の砂

ガラスの動物園

 

 

 アメリカ東部で『田舎』と同意語が『アイオワ州』。

 そのさらに片田舎の大学に短期留学制度を使って来て以来、本当のところ、授業にあまり身が入りません。方言も概ねわかるので不自由はないのですが、そんなことも理由なのか、講義に面白味が感じられなくて困っているところです。それで、日本にいるきみのことばかり考えて暮らしています。

 ところで、こちらのBarは日中は喫茶・軽食屋も兼ねるので、日本の飲食店同様、遅くても午前11時半には店が開きます。

 最近、講義をサボっては”Kenny's”というBarに入り浸っています。五十代後半と覚しきバーテンダーと親しくなりました(Kennyというのは創業者である彼の祖父の名前だとか)。

 ぼくが、あまりに入り浸るので、彼にとうとう言われました。

「ぼくの爺さんが若かった頃、つまり、ここに爺さんが立っていた頃のことだけど、きみのように講義をサボってビールばかり飲んでいる学生がいたそうだ。それでも彼は、卒業制作に“The Glass Menagerie”という傑作を書いて卒業していったそうだよ」

 The Glass Menagerie...、The Glass Menagerie...、口の中で繰り返した。『ガラスの動物園』か!?エーッ、テネシー・ウィリアムズじゃないか!

 ぼくは、その不真面目な大学の先輩に敬意を表して、バーテンダーに一杯のエールをおごり、二人で乾杯しました。そしてぼくは、彼テネシー・ウィリアムズの、まだ日本では未訳のドラマ“Suddenly, Last Summer 『去年の夏突然に』”があったのを思いだして、それを翻訳できないものかと考えはじめています。

 これからは、少しくらい真面目な学生生活をきみに報告しないと、とも思ってはいるんですが...。

 

 

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