歩くたんぽぽ

たんぽぽは根っこの太いたくましい花なんです。

夫の小さな言語世界

2023年11月30日 | 日記

数日前、夫と歩きながら動物の話をしていた。

理由は思い出せないけど、

あの動物は英語でなんていうのかというやりとりをしていた。

 

私「カエルは?」

夫「フロッグ」

私「うさぎは?」

夫「あれ、なんだっけ?」

私「あれ、えーっと絶対知ってるはずなんだけど。」

「………」

夫・私「あ、ラビット!」

 

なんでこんな初歩的なこと忘れてしまうのだろうか。

最近の私の「忘れた」は忘却というより消滅に近い。

なくなったら戻ってこない。

ラビットでさえあんなに遠くへ行ってしまっていたのだから、

日常会話で何でも反芻していかないといけない。

 

私「タカは?」

夫「タカとワシって同じなのかな。」

私「確かほとんど一緒だけど、大きさが違うって話だよ。」

夫「タカとワシも分かりそうなものなのにね。」

私「タカの方が小さいらしい。

厳密にはやっぱり大きさだけでもないらしいわ。」

 

気になるとすぐスマホで調べてしまう。

この行動について今までもいろいろ考えてきたけど、

なかなかやめられない。

わからないというプロセスが短かすぎるのは、

きっと脳に良くないだろうな。

ちなみにタカはホーク、ワシはイーグル。

 

夫「あれなんだっけ?あの動物、えーっと」

私「ん?」

夫「えーーロクデナシ!」

私「えっ?」

夫「違うな、うーんハタラカズ!」

 

ここで思わず吹き出した。

いや、言いたいことは伝わるけれどロクデナシはひどい。

ギャンブルで借金を作ってくるわけでもあるまいに。

ハタラカズもなかなかパンチがある。

動物に労働の概念を押し付けるとは、厳しいね。

アリは確かに働いているけれども。

 

夫「なんか違うな、、ウスノロマ!英語でなんていうんだっけ」

ひどい!もう完全に悪口。

あの動物だってそんないわれはないはずだ。

もはや英語どころの話ではない。

 

夫「えーっと、ウゴカサズ!」

これに至っては意味がわからない。

置物のような動物という方向からせめたのだろうか。

夫は名前を思い出せずブツブツつぶやいている。

 

英語では一般的に「遅い」「時間がかかって」の意を持つ「slow」から、

「sloth」と呼ばれるようになったらしい。

意外と日本と似たような名前で驚いた。

スロースって言ったら『グーニーズ』にも出てくるよね。

 

夫「あああ!ナマケモノだ!!」

君はキャット。

冬仕様のモコモコなお姿。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

電気をつけて

2023年10月11日 | 日記

夫は怖いものがめっきりダメだ。

お風呂で髪を洗うときはいつも背後の恐怖と戦っているし、

私がいない夜に家に入るときは「だれかいるのか!」とか一人で言っているらしい。

 

にもかかわらず、テレビのホラー番組を見たがるのはなぜなのだろう。

怖いもの見たさ?

先日も「一人で見れないから一緒に見てくれ」と録画していたドラマを見せられた。

私はまぁまぁなホラー好きなので、ありがたい申し出だ。

テレビだからあまり贅沢は言わないけれど、怖ければ怖いほどいい!

 

で見たのが『憑きそい』という同名漫画原作のドラマ。

これが思いの外面白かった。

因果のない得体の知れないものに憑かれる感じが新鮮で私の好みだった。

特に4話目の『審査員』で布を被せたら実体化する何者かがお気に入り。

 

しかしどうしても気に入らない表現がある。

主人公たちはなぜ電気をつけないのか。

ずっと暗すぎる。

「恐怖」という感情と「電気をつけない」という行動がどうも噛み合わない。

恐怖している人間が電気をつけないなんてあり得るのだろうか。

「魔は暗闇に巣食うため、明かりがあるだけである程度は滅することができるだろう」

と考えているのもあってなんだかもどかしい。

(ということは光に巣食う魔がいたら面白いかもな。)

あまりの暗さに作り手の意志を感じてしまい、冷めるなぁ〜とか思って見ていた。

 

 

しかし、次の日夜トイレに入ってはたと気づいた。

私も電気をつけてない。

そういえば私というやつはあまり電気をつけない人間なのだ。

キッチンで皿洗いしているときもよく夫に「電気をつけなさい」と言われる。

強い意志があるわけでなく、ほとんど無意識なので実際にトイレに入るまで忘れていた。

以前弟がうちに来たときも電気をつけない様子に驚いていた。

あちゃー、冷めてる場合じゃなかったよ。

そういう問題でもないか。

よくよく考えれば”何か”から身を隠す為に電気をつけないパターンもあるよね。

 

と自分を納得させて前に進むわけだが、人知れず進めていないやつがいた。

夫だ。

内容が面白かったので原作漫画についていろいろ調べたらどうやら実話ということらしく、

夫に「あれ実話が元になってるらしいよ〜」と軽い気持ちで言ったら、

ずーんと暗い顔をして「それは聞きたくなかった、、、」とぐったりしている。

どうしたん?と聞くと「それを聞くだけで1年は引きずるんだよ。

昨日だって怖くて寝るとき頭まで布団かぶって寝たんだよ。忘れられないんだよ。」とのこと。

でも録画して一緒に見ようと言ったのは君なんだが、、、本当に何を考えているのかわからない。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

美しいね、人間

2023年09月20日 | 空想日記

花を見て美しいと思う。

野生動物や虫を見て綺麗だなと思う。

どうして人間に対しては無条件で美しいと思えないんだろう。

 

花や動物を無条件で美しいと思うのは、個体で見ていないからだろうか。

人間である私が人間をメタ視点で捉えるのは難しい。

深く関わりすぎている。

一人ひとりの顔が違う(のがわかる)と綺麗じゃないのかも。

 

地球の生き物から程遠い生命体がいたら、人間を個体では見ないだろうね。

その場合この喜怒哀楽の激しい生き物を美しいと思うのだろうか。

戦争とか、環境汚染とか、差別とかいろいろ問題を抱えているけど、

一生懸命生きてて綺麗だなと思うのかな。

いや、そう思うには数が多すぎるか。

数が多いと見栄えが悪いものね。

 

生物として美しいかはわからないけれど、面白くはある。

雲の隙間からずっと眺めていたい。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

クローネンバーグが遠ざかる

2023年09月07日 | 日記

2年に一回関西で開かれる夏の展覧会が終わった。

思い返せば昨年の秋からここまで休みなく絵を描いてきた。

ちょっと一休みしようではないか。

 

山のギャラリーに12日間滞在して東京に帰ってくると、落ち着かない。

いいもの食べて、いい水浴びて、すっかりその気になってしまったのか。

空っぽの冷蔵庫を開け閉めし、ご飯作るためにスーパー行かなきゃとか思うと、

なんだかどっと疲れた。

ああ、こりゃあグロいアート映画でも観て心整えないといかんなぁと思い、

展覧会から帰った次の日にクローネンバーグ監督の最新作

『クライムズ・オブ・ザ・フューチャー』の座席を予約した。

元々観たくて本まで買ったのに忙しくて観に行けてなかったのだ。

私の好きなヴィゴ・モーテンセンも出ているしね。

 

して電車の時間が近づいていたので、

鏡で身だしなみチェックをしたらTシャツが汚れているではないか。

急いで替えの服を漁るも展覧会後なので洗濯が間に合っていない。

しょうがないのでハンガーにかかっていた派手なシャツを着て走って家を出た。

どうにか電車には間に合って、しばしぼーっとしていると聞き覚えのない駅名がアナウンスされた。

路線図を調べるとどうやら反対の電車に乗ってしまったらしい。

気づいたのは二駅過ぎてからだった。

とりあえず次の駅で降りてホームのベンチに座った。

どう考えても間に合わない。

湿気まとわりつく9月の夕方、10年前にやめたのにタバコでも吸いたい気分だった。

今日はそういう日なんだ、うん。

 

最寄の駅に帰ってくると雨が降り出した。

私は負けません。

折りたたみ傘があるもんねー!

そして家に着くと、眼鏡を忘れていたことに気がついた。

乱視なので映画館では眼鏡が必須なのだ。

結局何がどうなってもクローネンバーグの映画を観る日じゃなかったんだと妙に納得したのだった。

チケット代もったいなかったけど、教訓さ。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

雨と九龍

2023年06月20日 | 日記

新宿三丁目にはよく行くけれど、画材屋と寄席にしか用事はない。

だから、一歩奥に入ると飲食店がひしめき合っていて驚いた。

知っている町が、全く違う町に見える不思議な体験だ。

ついでに、目的以外は目に入らない自分の視野の狭さにも驚いた。

 

さっそく先日友達と三丁目で待ち合わせをした。

梅雨真っ只中にあって雨も降らず暑くもなくちょうどいい夕方、

週初めにも関わらずどんどん人が増えてくる。

 

私とその友達はお店の好みが似ている。

おじさんやおばさんがやっているような、気取ってないお店だ。

通りを2周して、最初に目星をつけた店に決めた。

東アジアの屋台を思わせる雑多な屋外席が気に入った。

その名も「香港屋台 九龍(クーロン)」。

これが大当たり。

兎にも角にも、料理が美味しかった。

中華料理といっても地域によって全然違うらしく、

四川などに比べて辛くないのでお腹を壊す心配もない。

香港料理が中華なのかは知らないけれど。

この店構え。裸電球がいい味出してる。

堂々と灰皿が置いてある感じがたまらなく好き。

 

最初は2組しかいなかった屋外席が暗くなると満席になっていた。

わかる!こんな日は開放感がある外がいいよね。

ピータン!友達が好きなので頼んだけれど、とんだグルメだよ。

子供の頃の苦い記憶が払拭できるかと思い一切れもらったけど、

その記憶も相まって「今一番苦手な食べ物」に昇格した。

小籠包ははずせない。

 

お店柄に反して、若いお客さんが多かった。

むしろこういう店が好まれる時代なのかもしれない。

30代も後半に差し掛かる二人が仕事や家族の話であーだこーだ言っていると、

隣の男子二人組が逆ナンされていて私たちは目配せをする。

なんかいいなぁ、こういうの楽しいよなぁと聞き耳を立てて遊んだ。

 

閉店まで居座り帰りはセブンでコーヒーを買って駅まで歩いた。

ちょっと酔っ払った二人がバカみたいな話でぎゃははと笑う。

そういうときに飲むコーヒーはなぜだかとても美味しい。

JRの駅前のスロープに腰掛け飲み干すまで喋った。

右から左へ人の波を観察する。

その波に逆行してナンパしている男がいたけれど、どう考えても礼儀がなっていない。

そのだらしない格好で女の子を引っ掛けようという根性が気にくわない。

と完全なる外野が的外れなことを議論する。

トー横にたむろしている子供たちの話や、猫の3D広告の話をした。

有名なヤクザマンションもあれば、伊勢丹があったり、

いろんな人が入り混じったるつぼで一歩壁を越えると別世界がある。

 

と、突然腕にポツっと雨が当たった。

「これはくるよ!早く行きな!」と私の背中を押した友達が妙にかっこよかった。

そこからしばらく外を歩かないといけなかったので急いで別れた。

友達の言った通り急に土砂降りに変わった。

信号待ちの対岸で傘を開いている人たちが目に入った。

みんなちゃんとしてるなぁ。

ここまできたらもういいや。

信号が青になりみんな一斉に動き出す。

傘をさしたサラリーマン風の人、相合傘の人、走る人、顔に手をかざして歩く人。

なんだか映画みたい。

雨は日常の風景をドラマチックに演出する。

頭の中ではELOの『Rain is falling』が流れている。

いつまでたっても私は妄想の中に生きている。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする