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続・いつか東芝の決算を思い出してきっと泣いてしまう

2016-02-05 | 会計・株式・財務
東芝が3Q決算を発表し、通期の最終赤字を▲7,100億円へと下方修正しました。
そして、この赤字にはのれんの減損処理が含まれていないことも判明しました。
日経によれば、複数の監査法人が資産を精査し、減損の必要なしと判断したと)

しかし、なぜのれんの減損をしなかったのか、よくわかりました。
やはり、「できない」のです。

決算説明会資料で確認しましょう。


pdfファイルで54枚中41枚目、右下に「33」とページ番号が振られている「財務体質見通し」をご覧下さい。
2014年度末 1兆840億円もあった株主資本は、2015年度の赤字▲7,100億円に加え、その他包括損益の減少▲2,177億円(年金負債調整額の悪化など)が追い打ちをかけ、2015年度末にはたったの1,500億円しか残らないという見通しとなっているのです。

WH単体で過去に計上されたのれんの減損は▲1,600億円ですが、この金額だけ減損しても債務超過となってしまう。
私には「体力がもう1,500億円しか残っていないんです。どうか、どうか察して下さい。」と懇願しているように見える(新日本監査法人も自己否定につながる方針変更を行わず、今回もまた容認したのだろうか)。


しかも、残る1,500億円も砂上の楼閣かも知れない。

今年に入っての株価下落で年金負債調整額を保守的に見積もった点は評価できますが、さらに株安や円高が進行した場合には、その他包括損益が一段と悪化し、株主資本を圧迫する可能性があるからです。

加えて、資本の質も問題だ。

原子力事業3,852億円をはじめとして「のれん」が6,791億円も残っている。
また、将来節約できる税金として、繰延税金資産が2015年12月末で1.600億円も計上されている(期末に向けてかなり取り崩すようだが)。
いわば、将来の収益獲得期待に基づいて計上している危うい資産が、この会社のわずかな資本を支えているのです。


ここまで書いて、私はふと、ギリシャ神話「パンドラの箱」の話を思い出した。
箱を「東芝」そのものと見立てて欲しい。
パンドラが箱を開けてたくさんの邪悪なものが飛び出した。それは数々の不正会計の手口。巨額な損失も出た。社会的信用も失墜した。

そのあと、たった一つ、箱に残ったものがある。それは「希望」。
「希望」に支えられたごくわずかな資本だけが残された。

新日本から監査を引き継ぐ「あらた」は、残った「希望」の実現可能性をどう吟味していくのか。資本増強策、資金繰りとともに、引き続き「のれん」と会計監査問題は注目していきたい。


それと、個人的には「サザエさん」、強豪ラグビー部・野球部がどうなるのかも・・・。



またいきます。

東芝 不正会計 底なしの闇
今沢 真
毎日新聞出版











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