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会計士兼アナリストによる屈指の歴史だけがウリの会計・財務・株式・金融ブログ。異常な経済金融環境を一刀両断!できるかな?

ソフトバンク 異例の財務手法に思う

2006-05-20 | 会計・株式・財務
いつもご覧下さり誠に有難うございます。


本日の日経新聞に「ソフトバンク どこまで強いのか -異例の財務手法駆使―」という特集記事がありました。
私の知らなかったことも多く(=単なる不勉強ですが)、
以前、私が疑問を呈した手法も紹介されており、よくまとまっています。

そこで(自分のために)記事のポイントを整理。続いて、簡単なコメント。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
①06/3期黒字転換のために行った手法

・背景・・・・総務省が携帯電話参入のための条件「経営の安定性」のクリア
・手法
 a)割安固定電話「おとくライン」事業の連結外への移管
     (05年秋にインボイスと新会社を設立し、営業の主力部隊を移す。
       出資は15%未満)
 b)ADSLの新規営業を抑制し顧客獲得費を圧縮
 c)国内外の投資有価証券売却

②最近の異例の資金調達手法
  a)コールセンター会社「BBコール」の同業ベルシステム24への売却
    04年8月に売却。コールセンターの実績が無いのに売却がは500億円。
    ソフトバンクには400億円の売却益発生。
    ベル側はコールセンターと直接関係ない通信機器の買い取り料を含め、
    約1,000億円を当社側に払い込み。
         ↓
    この取引と引き換えに、コールセンター業務委託料として当社が2010年
    までに約3,000億円をベル側に払う契約を締結。
    (→事業売却で得た資金を、委託料の名目で長期に亘って返済
       →当面の業績底上げと資金繰り改善が狙い、との指摘も)

   b)ADSLに必要な接続装置・モデムのレンタル事業売却。
     昨年12月にモデムのれんたる事業を米シティバンクを通じて海外投資家
     に売却し、850億円をゲット。
     この取引にはADSLの儲けが増えるとソフトバンクが追加的に収入を
     得る契約条項があり(上限は有る模様)、
     06/3期には146億円を追加収入として計上。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

(コメント)

・06/3期決算ではご存知の通り、会計方針の変更で減価償却費を減少させて
 おり、これも黒字化に寄与しました。
 (ちなみに、減損会計導入に伴い、リース資産の減損損失を特別損失で計上、
  株式売却益で相殺し、今期以降のリース料負担も若干軽減させています。) 

 まさに執念の黒字化。
 すべては携帯のためだったんですね。今更ながら。


・ただ、資金調達面もそうですが、相当無理をしているように見受けられます。
 誤解を恐れず言えば「利益の先取り+コスト先送り」
           「資金の先取り+返済の先送り」。
 そこに携帯事業参入に伴う財務負担。
 ますます分かり難い会社になっていく予感がします。

 1月9日の記事でご紹介した、シドニー・フィンケルシュタイン著
 「名経営者が、なぜ失敗するのか?」日経BP社にある
 企業経営上トラブルが発生する可能性を見るうえでの17のチェックポイント
 には、こう書いてあります。
 ---------------------------------------------------------------------
 <初期警告サイン>
  ■必要以上に複雑な組織や戦略に気をつけろ!
   ①組織構造が複雑になっていないか
   ②本来、単純な問題に対して必要以上に複雑な戦略をとっていないか?
   ③会計手法が過度に複雑だったり、不透明だったり、非標準的ではないか?
   ④複雑だったり、非標準的な用語を使っていないか?
---------------------------------------------------------------------
ですので、個人的にはちょっとひっかる感じがします。

・言い換えれば、分析のやり甲斐のある会社。
 引き続き、ねちっこくフォローしていきます。

名経営者が、なぜ失敗するのか?

日経BP社

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1 コメント

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好タイミング (大雀)
2006-05-21 16:45:07
板倉雄一郎氏が、自身のブログでソフトバンクの

ボーだフォン買収に関する分析コメントを掲載

していますよ。

ご一読されては如何でしょう。



http://www.yuichiro-itakura.com/archives/2006/05/21-1235.html
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