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コレも会計?「心理会計」に思う

2006-08-24 | 会計・株式・財務

昨日立ち寄ったブックオフでハーバードビジネスレビュー2006年2月号を105円で購入。
この中に「リーダーの心理会計」という興味深い論文がありました。

これは伝統的な会計学とは異なり、経済心理学や行動経済学の領域なのですが、
リーダーの行動を分析するうえで重要な示唆を与えるようです。
そこで本日は「心理会計」(メンタル・アカウンティング)をざっとご紹介。
かなり端折っておりますので是非本文もご確認ください。

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ハーバードビジネスレビュー 2006年2月号 p.94
「リーダーの心理会計」菊澤研宗氏

■経済心理学の基礎=プロスペクト理論

 ・人間は完全に合理的でなく限定合理的であり、心理的な価値(満足)を
  最大化するよう行動する
 ・人間には物事を認識し評価する時に参考にする主観的な点
  「参照点reference point」がある
 ・結果x(利益or損失)は参照点を基準として相対的に認識される
  (参照点=x=0=結果に対して満足も不満も抱かない点)

■価値関数v(x)

 ・v=心理的な満足or不満足、x=相対的な利益or損失
  認識された利益(損失)は心の中の価値関数v(x)を通して評価される
 ・価値関数v(x)は、x>0において増加率は逓減(効用関数と同様)
 ・x<0においては、増加率が逓増  ・それ故、利益局面ではリスク回避的に、損失局面ではリスク愛好的になる
 ・同じ水準の結果が出た場合、利益による満足より損失による不満足が大きい
 (すなわち、x=b>0のときv(b)<|v(-b)|)

■分離勘定と統合勘定

 ・過去の戦果をx1、現在の戦果をx2とすると
   分離勘定:過去から独立して現在を判断 v(x1)+v(x2)
   統合勘定:過去に囚われて現在を判断 v(x1+x2)
  のどちらを取ることが心理会計的に合理的
  (その人間にとってより心理的な満足が大きいか)かを説明。

  基本的には、分離勘定の方がより合理的
  (状況に応じた手を打てるという意味)で望ましい。

■リーダーの心理会計マトリックス

  過去の結果と現在の結果の見込みの状況を
  大勝(利益大)・辛勝(利益小)・惜敗(損失小)・大敗(損失大)
  に分けて4×4のマトリックスで説明すると、
 1)過去に大勝した場合
   大小問わず今回も勝ちそうなら分離勘定/負けそうなら統合勘定
 2)過去に辛勝した場合
   今回も勝ちそう・大敗しそうなら分離勘定/惜敗しそうなら統合勘定
 3)過去に惜敗した場合
   どのような見込みでも統合勘定
 4)過去に大敗した場合
   今回も負けそう・大勝しそうなら統合勘定/辛勝しそうなら分離勘定

  がそれぞれ心理的な価値(満足)を高めることになる。
  限定合理的な人間にとって、過去に囚われやすいことが分かる
  (4×4の16通りのうち10通りは統合勘定)。

■インプリケーション

①敗北を経験したリーダーは過去に引きずられる可能性がある、
②勝利を経験したリーダーは過去を断ち切る可能性が高い、
③辛勝を経験したリーダーは(分離勘定の下)現実を適切に判断する可能性が最も高い、

基本的に、意思決定者に最も求められるのは「辛勝」の経験。
予想外の大勝をした場合も問題点を洗い出す作業を徹底することで
参照点に対して結果を下げ、大勝を「辛勝」として認識する必要がある
(逆に大敗・惜敗の場合は、既存の参照点に対して結果を上方修正)。

そうすることで、過去に囚われない意思決定を行える可能性は高くなると。

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皆さんが注目されている経営者には、辛勝体験、どのくらい有りますか?
経営者の資質を見るときの参考となるかも知れませんね。

Harvard Business Review (ハーバード・ビジネス・レビュー) 02月号

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1 コメント

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会計かどうかは置いといて (メモんが)
2006-08-24 11:09:07
このインプリケーションは人生についてもあてはまるような気が…辛勝経験がいっぱいあるような挑戦をたくさんする人が判断力を身につけていく…ちょっと耳が痛い?! 論文としての適切な評価はできませんが、警句として覚えておこうと思います。
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