「ダフネは´忍耐´って書いた方がええと思うな」
それはダフネ、小6のお正月。
父がわたしに向かって呟いた。
3歳下の妹、4歳下の弟と、きょうだいが揃いも揃って
適当に・・みんなが同じ書き初めの定番´努力´と選んで書いた。
が、父はわたしにだけ違う言葉を望んだのでした。
この人(父)は子供の私たちに、いや自分と趣味の囲碁以外は興味のない人じゃないのか、
子ども心に父をそんなふうに感じていたこともあって
父の口から零れた呟きにわたしはなんの返答もできなかった。
他人様からの少しばかりの無神経なニュアンスを、
感じ取ってはいちいち反撃していたダフネ。
父の呟きはわたしのそういったところを少しだけ堪えてみなさい、
あるいは流してみなさい、と言いたかったのでしょう。
「もしかしたら、母よりもずっと本当のダフネを見てくれているのかもしれない」
だけれども父の射た的は心の片隅に仕舞い込んだまま。。。
ここ数日、通勤電車の中で読んだ原田マハさんの『あなたは誰かの大切な人』。
6編からなる短編集でそのうちの一作品「無用の人」で、
ダフネの父のこの呟きが甦りました。
主人公の聡美もパッとしない父だと感じつつ、
所々で父から零れる真理に勇気づけられていたのです。
お父さんを「無用の人」とはなんとも辛辣な形容ですが
この短編集の中で、秀逸だと思います。
なーんて生意気な感想を持ちながら、
年上の友人から教わる料理レシピで、
かけがえのない人との幸せに気づかされる「月夜のアボカド」が
わたしは一番好きです
日頃、忙しさにかまけて忘れている孤独感は
ふとしたときに突きつけられ、ついて回る。
「もしかしたらわたしはひとりぽっちなのかもしれない」
そんなことを思ったことのある、すべての女性へ
温かい気持ちと一筋の光を見せてくれる『あなたは誰かの大切なひと』。
素敵な短編集です。
サクサク読めてジワジワきました
ダフネのおすすめです。
daphne