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中村修二教授vs日亜化学 青色LED訴訟決着

2005-01-13 00:51:13 | ニュース
青色LED訴訟,和解

中村修二・UCサンタバーバラ校教授が元職場の
日亜化学工業を相手取って行った,
青色LEDの発明対価を巡っての訴訟控訴審は,
200億円の支払いを認めた一審判決から超大幅に減額された
6億800万円(+遅延損害金2億3千万円)の支払いで和解,最終決着しました。

中村教授,「100%私の負け。和解に追い込まれ、怒り心頭だ
と怒りの会見をしていましたが,どうなんでしょうか。
※それにしても,ファニーな声の人ですねぇ。
 新喜劇に出したら石田靖に「黙れ」ってデコを叩かれて
 大ウケを取れそうですね。

確かに,裁判所側は,最初に「10億円以内」の枠を設定して
後から理由をつけてこの額におさめたというのが事実でしょう。
「これ以上払えば会社がつぶれるの一点張り。まず結論ありきだ」
と手記で批判しているそうですが,これは…しかたないかなと思います。

要するに,そんなにすごい発明で,
「その価値に見合っている」と誰が見ても納得できる対価を
得たいというのなら,会社辞めて,
全部自前で発明してたらよかっただろが!!
会社から給料もらってる時間で,会社の金と設備使って
やった研究なら,ウン億も貰えば御の字じゃ!!

ということでしょう。

中村氏は日亜を辞めてアメリカに渡り,
すごい発明をして有名な彼が会社では全然遇されていなかった
ことを知り「それはslaveじゃないか」と言われて
日亜から相応の報酬を分捕ろうと決意したようですが
アメリカでも別に研究者がみんな何億も発明でもらっているわけじゃなくて,
会社からはお金以外の待遇や地位で優遇されたり
お金についてはその後独立して会社を興し,出資者から金を集めて
ビジネスで儲けるのが本流な訳で,
確かに青色LEDの発明は超画期的なもので,それだけにその価値も
破格なものになって不思議ではないのですが,
それにしても200億円を会社から報酬で受け取るというのは
欧米でも異例だといいます(ストックオプションなどを使えば金額的に
かなり高いとこまでくるでしょうが)。

第一審では,日亜のほうが,中村氏が社員だった頃に
特許の報償として2万円しか払わなかったがめつさをむき出しにして
「中村氏の発明によって当社(日亜)が得た利益はマイナス」
などとムチャクチャな主張をしたため,裁判所も「だめだコリャ」と
大幅に中村氏寄りの判決を出したのでしょうが,
メーカー関係者から指摘されているように
「発明を金にするには事業化や営業努力の貢献も不可欠」
なわけで,

発明による日亜の利益=1200億円
中村氏の貢献=5割 →600億円
訴訟の手続き上(中村氏が払った印紙代で請求できる金額)の上限
 →200億円を支払え

という一審判決は,かなり破格のものといえます。
たった1人の研究者の才能と努力に大部分を負う大発明など
めったにあるものではありませんから,
他の発明に関わる訴訟に対してもそのまま当てはめられることはないのですが
それでも,こんな“前例”はまずいということになったのでしょう。

ほかの同様の訴訟において,
オリンパス訴訟の最終審判決,
味の素訴訟の東京地裁判決で示された
「発明者の貢献度は会社が得た利益の5%
という線引きが定着しつつあります。
今回の青色LED訴訟の和解案でも
中村氏の発明をすべて一括評価し,
日亜の青色LED関連売上高の半分が中村氏の発明によるもの
他社にライセンス供与したと仮定した場合に得られる
ロイヤリティー収入を「売り上げの3.5~5%

として,和解の受諾を迫りました。

これによって
日亜→一括処理により,中村氏から新たな裁判を起こされずに済む
裁判所→「終身雇用を前提にした元社員に10億円以上の
   の報酬を認めるのは経営慣行から見ていきすぎ」
中村氏→拒否した場合,一括処理ではなく中心特許である
   「404特許」だけについて判決が出るが,高裁の出してきた
   和解案での計算方法では,1千万円判決に…

という思惑が絡み(1/12日経より),和解に至ったということだそうです。

そりゃ,中村教授,くやしいでしょうが,
200億円が当然かって言ったら,そりゃあなたマヒしてますよ。
裁判が決着して,自分でも言ってるように「これで研究に専念できる」
わけですから,日亜との因縁はこれで終わりにして,
スッキリと気持ちを一新していい研究に励んでください。

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※※
青の奇跡―日亜化学はいかにして世界一になったか

小山 稔 白日社


PATさんからいただいた詳細なコメントの中に出てくる,青色LED発明について知るための必読の本。これを読めば中村氏のウソが火を見るより明らかに。マスコミや一審の裁判長はこれすらも読んでいなかった?
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14 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
こんにちは (ま@UK)
2005-01-13 07:16:03
TBありがとうございます。「トラバ三昧で家庭崩壊寸前!」にちょっぴり貢献してしまったらごめんなさい。



しかしすごい量のENTRYですね。これなら海外にいても日本のニュースについていけそう。



生「中村教授」を見れたのもうらやましい限り。ファニーな声でも、怒り心頭具合は伝わってきましたか?



返信する
こんばんは ()
2005-01-13 23:04:37
TBありがとうございます。

200億の判決が出たときには、思い切ったことをしたなとその先の展開を楽しみにしていましたが、結局は前例に則って「常識的」なところに落ち着くのですね。

200億が当然とは思いませんが、1000万だと相当がっかりではないでしょうか。

ただ、D.D.さんのおっしゃるように、地位と名声を得られたわけですし、、、



それにしても、日亜化学HPにも掲載されている社長のコメントがおもしろいですね。



「当社の主張をほぼ裁判所にご理解いただけたと考えています。

特に青色LED発明が一人でなく、多くの人々の努力・工夫の賜物である事を

ご理解いただけた点は、大きな成果と考えます。」



中村さんに対する皮肉たっぷりに見えます。
返信する
Unknown (リバビー)
2005-01-14 11:36:12
TBありがとございました。



後だしジャンケンは、アメリカではもっと相手にされないですよ。



返信する
Unknown (hirotoman)
2005-01-14 15:04:48
TBありがとうございます(*゜ー゜)

私なんかは1億貰えばてんやわんやになってしまいますが、大物は違いますね。。

和解の後怒りの会見をするのはどうかと思いますが、これからも研究頑張ってノーベル賞とって欲しいですね( ´_ゝ`)
返信する
はじめまして (oidongyudon)
2005-01-15 02:46:52
トラックバックありがとうございました。



中村教授の最後の会見は、感情にまかせていろいろぶちまけてしまって、いやしい感じがしましたねえ。やらないほうがよかったんじゃないかと思うんですが。



他の記事も興味深く拝見しました。また、おじゃまさせていただきます。
返信する
技術的に見た価値 (GaN)
2005-01-15 19:02:00
日亜の売り上げや波及効果を考えれば、8億だと一桁少ないと思います。10億以上だと会社がつぶれるということは、今の日亜の業績から考えて到底考えられません。



>会社辞めて,全部自前で発明してたらよかっただろが!!



会社の中での研究がどういうものか、ほとんど理解されていないようですね。また、当時の開発状況で、日亜がリスクを背負っていたとは考えられません。



やはり、裁判官の資質に疑問を持ちます。
返信する
コメントありがとうございます (d_d-)
2005-01-16 01:21:36
ま@UKさん,はるばるwコメントありがとうございます。

もさん,リバビーさん,hirotomanさん,oidongyudonさん

ゴタゴタの済んだ中村教授には,

新しい発明のニュースでまたお目にかかりたいものですね。



GaNさん

新聞報道など(解説記事や中村教授のコメント)を見ていただけるとよいかと思いますが,

「10億だとつぶれる」は,青色LED訴訟が前例になって

他の裁判などに波及すると困るという“裁判所側の思惑”で,

私がそう考えている訳ではありません。

(「しかたないかな」が何を指しているか留意して上記エントリーを読み直していただければ…)



私は,一審での日亜の主張はムチャクチャでしたから,裁判が勝ち負けであることから言えば,一審の200億判決もありだと思っています。

今回の和解については,裁判所に無理やり飲まされた

のが明らかで,その点フェアじゃない,

中村氏にとっては気の毒な結果だと思いますが…。



あと,

> 日亜がリスクを背負っていたとは考えられません

というのは…どういうことなのでしょうか?

給料(生活保証),研究費用,設備を提供することは

会社にとってはコストですが,

会社が負担してくれなかったら,研究者にとって

とんでもないリスクでしょう。



あとは繰り返しになりますので,

すみませんがひとまずこれ以上の説明は略させていただきます。

返信する
中村さんはちっとも気の毒ではない (PAT)
2005-05-07 17:18:46
こんにちは。

長くなって申し訳ないのですが、少し異なった視点からコメントさせていただきます。



 私もこの件については、中村氏にもメディアにも憤慨しております。



 私から言わせれば、中村氏は気の毒でも何でもない。

 要は、自分で何の出資もせずリスクも負わなかった上に日亜から200億円(ないし600億円)貰えるはずだったのが貰えなかった、というだけです。

 現に彼は日亜の資金で行った研究で成果を上げ、大学教授としての地位と名誉を獲得し、世間一般の水準より高い収入を得ている。これがどうして気の毒なのでしょう。



 中村氏は自分を偉大に見せるために過剰な演出をしているが、多くはまやかしです。

 私は半導体デバイスの技術者として同じような開発現場を経験しております。それだけに中村氏のハッタリぶりが分かるのです。



 私は書籍「青色発光ダイオード」(テーミス)や月刊誌「日経ものづくり」(2004年4月号、6月号:日経BP)で日亜側の主張を読みました。現場を経験した人間にとっては日亜側から出る泥臭い話の方が真実だと思います。

 中村氏の話す単純明快なストーリーは漫画としては面白いが、現実味を全く感じません。

 LEDの開発製造には多くの機材設備が必要です。これらを使いこなして最適な製造条件を確立するには多くの人員が必要です。中村氏が1人で行ったという話は到底信じられません。



 中村氏が青色LEDの単独発明者ではあり得ないことは、この分野の研究者・技術者であれば皆知っているはずです。

 彼らが世間の誤解を黙認しているのは発明対価という共通の欲得の問題が絡んでいるからだと思います。



(彼らは「給与を受けながら返済不要の他人の掛け金で絶対に損しない投資を行う特権」に目がくらんでいるのです。もちろん、こんな虫のいい主張は米国でも他の先進国でも通用しません。ノーリスク・ハイリターンは米国流のビジネス・マインドに反しています。)



 メディアもあまりに怠慢です。日亜が当初取材に応じなかったという問題もあるでしょう。しかし、これは結果論です。にわかに成長した地方企業に上手な広報を求めることは酷です。裁判は傍聴できたはずですし、公開情報だけからも多くのことが判ったはずです。



 実は、一般に流布している中村氏関係情報に多くの誤りがあることは、日亜側情報に頼らずとも十分に判るのです。

 日亜側情報以外の公開情報とは、たとえば中村氏自身の発する情報(インタビュー、講演録、等)や第一審判決文(特に事実認定)ならびに特許公報などの公文書です。これらは基本的に日亜側のバイアスがかかっていないか、かかり難い情報です。



 そのような情報でも詳細に検討すれば、例の俗説が誤りであることが判ります。

  「中村氏は会社の劣悪な環境と貧弱な設備で経営陣の妨害に抗してたった一人の着想と労働で青色LEDを開発した。なのに、相変わらずスレーブ扱いで2万円しか貰えなかった。」

というのは真っ赤な嘘です。

 実際の中村氏は、「会社承認の下で設備と人員があてがわれ、先行技術に基づいて青色LEDを開発した。しかも、開発成功後は相応の待遇を受けている」のです。



●まず、中村氏は青色LEDの原理上の発明者ではあり得ません。

 そもそもLEDは(赤でも緑でも青でも)発光色にかかわらず基本的な動作原理は同じです。1980年代半ばには大学の電子デバイスの教科書に出ているほど常識的知識でした。SiC系の青色LED(輝度は弱い)も作成されていました。GaNが高輝度青色LED用材料の候補であることも公知でした。中村氏がGaN系青色LEDの研究に着手したのは1989年です。

 しかし、赤崎氏らは1970年代からGaN系LEDの研究に取り組んでいます。



●中村氏は青色LED実現への貢献により2002年度武田賞を受賞し同フォーラムで講演しています。また、赤崎勇氏および同グループの天野氏も同じ理由で受賞し、講演しています。



※2002年武田賞フォーラム

http://www.takeda-foundation.jp/award/takeda/forumindex.html

・赤崎氏、天野氏、中村氏の講演録(リンク)があります。

・講演録はそれぞれpage1~5、Q&A(リンク)があります。



 同フォーラムで赤崎氏は中村氏を批判こそしていません。しかし、赤崎氏の講演録からは、GaN系青色LEDの基本技術の大半(- サファイア基板上でバッファ層を介した窒化ガリウムのMOCVD成長、MgドープによるP型化 -)は赤崎グループが初めて確立したという主張が明確に伝わってきます。



 中村氏は他の場所ではあたかも自分が青色LEDの単独発明者であるかのように振舞っていますが、さすがに先駆者グループを目の前にしてそのような大それたことは言えなかったようです。

 講演の冒頭で中村氏は

  「私も資料を用意していたのですが、赤崎先生と天野先生が同じような話をなさるので資料なしでやってくれということなので、資料なしでやります。」(page1)

と言っています。

 すなわち、中村氏の研究の大半が赤崎グループの成果の後追いであるため、一歩引かざるを得なかったのです。



(そして、他の受賞者が専ら自分の研究内容を聴衆に紹介しているのと異なり、例のごとく得意の人生論を語っています。)



 学術的な面に限れば、赤崎グループの業績の方が中村氏(グループ)のそれよりもはるかに高いと言ってよい。

 何といっても、GaN結晶成長技術の確立から始めてGaN系LED実現の最大のネックであったGaNの低抵抗P型化に世界で初め成功し、青色発光ダイオードを実現したのは赤崎グループですから。

 中村氏の業績の新規な点は、P型化における赤崎氏の電子線照射方式を量産に適したアニール方式に置き換えたことぐらいでしょう。



(なお、アニールでP型化するのはGaNでは新規ですが、他の半導体で先例があります。)



 また、同フォーラムでは中村氏は赤崎氏の論文を読んでいたことに言及しています。

  「89年、私がGaNをちょうど始めた時に、赤崎先生、天野先生らがp型GaNができることを発表したのです。私は当時、始めたばかりでしたが、かなりショックを受けました。 ----- で、論文を読んでみますと、電子線照射をやっているわけです。」(page3)



中村氏は先人の研究成果に習っているのです。



注)中村氏は別の講演録で他人の論文を全く読まなかったように言っていますが、よく見るとツーフローMOCVD開発中のある限定された時期の話であることが分かります。



「市販のMOCVD装置を購入し、 ----- 結局、装置の改造を行うことを決意しました。 ----- それまでは資料や論文を読んでやっていたのですが、どうしても真似をしてしまうため、意図的に他の論文やパテントなどを一切読まないと決めました。こうして1年半後にTwo-flow MOCVDができたのです。」

 21世紀の技術者はいかに生きるべきか:http://www.jasa.or.jp/techno/special/text.html



●さらに上記2002年武田賞フォーラムで中村氏は、1999年(日亜時代の最後の年)には部長待遇に昇格し(page3)、1600万円(注:日亜証言では2000万円弱)の収入があり(Q&A)、社内での主たる仕事は「はんこ押し」だったと言っています(page3)。加えて、内外の学会や講演会を飛び回っていたことは公然の事実です。ずいぶん恵まれていますよね。



(このような恵まれた人を「スレーブ」と称するのであれば、どんな先進国でも国民の殆どがスレーブの奴隷国家となってしまうでしょう。)



 また、中村氏は1988年に米国の大学に留学した際はドクターの学生に「アホにされた」、と言っています(page3)。彼は米国で厚遇されたわけではない。その当時中村氏はこれといった実績もなかったのだから、それも当然です。米国社会が実績のない技術者に将来性を見抜いて大金を投じるというわけではないのです。



●200億円判決がでた一審の判決文もよく読めば中村氏が主張した内容のすべてが事実認定されたわけではないことが分かります。

※一審終局判決

http://courtdomino2.courts.go.jp/chizai.nsf/Listview01/6F6054620D5D761C49256E6F0034B198/?OpenDocument



 たとえば、中村氏は「一人で開発した」と言っていますが、対象となった404号特許発明(特許2628404号:1990年10月出願、 MOCVD法の改良)の開発では「F」と「B」が補助者として参加しています。(裁判所はあくまで補助的なものと判断していますが。)



 中村氏は日亜経営陣が中村氏の研究を高圧的に妨害したように言っていますが、第一審が認定したのは、青色LED開発が基本的に中村氏の提案を日亜が承認する形で進められたということだけです。



 また、例の「青色LEDの開発中止命令」も一審で事実認定されていません。認められたのは「HEMT用GaAsの開発命令」だけであり、「開発中止命令」は中村氏側が巧みに言い換えたものです。



 中村氏は貧弱な設備でLEDを開発したように言われます。しかし、事実認定によれば

  「平成4年に入ると,被告会社は,前記市販のMOCVD装置(訴外株式会社日本酸素製)を更に数台購入し」

とあり、1992年未だ青色LEDが完成途上であるにもかかわらず日亜は高額な(億円単位の)MOCVD装置を数台追加購入しています。



 青色LEDの実現は中村という天才科学者が成すべくして成し遂げたかのようにも言われます。しかし、中村氏が提出した文書(原告準備書面)にはこう書いてあったそうです。

  「本件特許権のツーフローMOCVDが,1990年に出来た時は,まだ青色LEDが開発できるとは,N教授は想像もできなかった」

つまり本人にも計算外のことが起こったのです。天才が発明すべくして発明したわけではないのです。

(要は運を天に任せていた、結局は博打です。)



●特許公報からも分かることがあります。

 1991~1992年に出願されたLED関連の特許公報によると(中村氏の他に)少なくとも6名の日亜化学の技術者(中村氏以外)が登場します。

※日本国特許2900928、2859478、2540791、 2812375、2765644、特開平6-120562

 特許庁電子図書館データベース:

 http://www.ipdl.ncipi.go.jp/Tokujitu/tjsogodb.ipdl?N0000=101



●書籍「青の奇跡」(小山稔・著 白日社)p103-105によれば、青色LEDの開発スタッフは1993年夏までには数十人規模に増員されています。



 これらはけっして貧弱な人員ではありません。

 ちなみに日亜の青色LEDが完成するのは1993年11月です。

 中村氏が日亜内でたった一人で青色LEDを開発したというのは嘘です。



(注:「青の奇跡」の著者で元・日亜化学常務の小山稔氏は、メディアが中村氏に有利な発言を引き出しては記事にしている人物です。しかし、「青の奇跡」は中立的な立場で書かれており、日亜に対する批判も中村氏に対する批判も基本的にありません。小山氏はスタンレー電気から転職して1993年2月から日亜で勤務しており、その体験談を同書にまとめています。その内容は、日亜が人・物・金という経営資源をつぎ込んで青色LEDを製品化したという極めて常識的なものです。)



●日本の職務発明者の処遇は世界的に見てもひどいようなことを中村氏は言っています。

 しかし、特許庁の資料と思われる下記の文書を参照すると、(以前の)日本でも職務発明者への処遇は欧米各国と大きな差はなかったようです。

※「諸外国の従業者発明制度」

 http://www.jpo.go.jp/shiryou/toushin/toushintou/pdf/patent_houkoku/sankou1.pdf



 むしろ、一連の発明対価訴訟の煽りで日本の職務発明補償金はドイツ(- 職務発明者の待遇がよいとされる -)をもはるかに凌ぐものとなっています。

 たとえば中村氏の場合ドイツでは数千万円程度となり、6億円には遠く及ばないそうです。



 さらに、中村氏が賛美する米国ではEmployed to Invent doctrineという原則があります。これは最高裁判例で確立された判例法です。使用者と従業者間に特別な契約がなければ、発明する目的で雇用された者(研究者等)や、職務上発明することが想定され得る者(技術者等)がなした発明の所有権は自動的に使用者に帰属する、ということです。使用者が給与と別に譲渡対価を支払う法的義務は生じません。



※Profiting From Your Patent(英文)

http://www.nolo.com/lawcenter/ency/article.cfm/ObjectID/6A5E06A7-344F-4657-9FB6606039141C7B/catID/72CD4B7A-D30A-4CCF-96755FFC2292238C#top

Can inventors who are employed by a company benefit from their own inventions?

(勿論このサイトは青色LED訴訟とは全く無関係です。米国人が米国人向けに書いたものです。)



※仮に研究開発者には「発明」(- 広義には商品化につながる有効な技術情報 -)に対して給与とは別に譲渡対価が支払われるとすれば、研究開発者はいったい何をして給与を得ているのかという話になるはずです。研究開発の成果から「発明」を取ったら何が残るというのでしょうか。「開発を試みましたが斯く斯くしかじかの理由で製品化には至りませんでした」という技術情報を創出するだけで一定の給与を貰えるとでも言うのでしょうか。



●中村氏は(技術者の成果に応じて処遇に差がないという点で)「日本社会は共産主義的だ、資本主義ではない」と非難しています。

 ところが一方で、日亜の株主でもある経営者一族が高額な配当を受けていることを問題視しています(2005/2/26朝日新聞be)。しかし、収益の多い会社の株主がリスク対価として(労働者の給与より)高額な配当を受けるのは資本主義そのものです。そのことを批判するのは、資本主義自体を批判していることと同じです。



 また、「発明者の行為だけが利潤を生んでいる」という中村氏の主張はリスク負担という重大な視点を欠いており、「労働者の労働だけが利潤を生んでいる」という共産主義的な考えをさらに狭めただけの「発明者共産主義」でしかありません。



 彼は労働と事業とを混同しており、個人と法人とを混同しています。

 労働とは、労働役務だけを提供してその対価を給与として受け取る行為です。労働に対する対価は法的に保護されており、ただ働きになることはありません。

 それに対し事業とは、商売に必要なすべての要素(設備機材の購入、従業者の処遇、顧客対応、公害対策、納税、調達資金の返済、等々)について最終責任(リスク)を負った上で商品を生産販売して利潤を得る行為です。失敗すれば損をします。法的保護はありません。

 中村氏という個人が行ったのはどんなに高尚であろうと労働に過ぎない。事業を行ったのは法人である日亜です。

 中村氏の発明という行為も労働であり、その対価は給与です。事業利益の配分ではあり得ません。



 中村氏こそ資本主義を分かっていないのです。



●中村氏は、日亜が転職後の同氏を機密漏洩で訴えたことを日本企業独特の陰湿な行為のように言っています。

 しかし、転職した元従業員を企業が機密漏洩で訴えることや、退職者に一定期間の機密保持を義務付ける契約を結ぶことは米国で普通に行われていることのようです。



※本間忠良:「ビジネスマンのためのトレード・シークレット(営業秘密)」

 http://tadhomma.ld.infoseek.co.jp/TS1.htm



●中村氏が日亜を辞めた理由についても発言内容に矛盾があります。彼は本当の理由には触れられたくないのだと思います。

参考)

①プレジデント2001/10/29号:http://www.president.co.jp/pre/20011029/03.html

②2005/2/26朝日新聞be:http://www.be.asahi.com/20050226/W11/0018.html

③日経エレクトロニクス2001/9/24:

 http://techon.nikkeibp.co.jp/NEWS/nakamura/20010924.html

④2002年武田賞フォーラムの講演録(上掲)



 この中で①や②のインタビューによれば、中村氏は、1999年秋に窒化物半導体研究所の所長に就任した際に「米国の後追い」に過ぎない「窒化ガリウム関係の電子デバイス」(①)ないし「窒化ガリウムトランジスター」(②)の開発を日亜から命じられたことが会社を辞めるきっかけになった、「私はこの分野でやることはすべてやったので、別の全く新しい素材で全く新しい研究」(①)をしたかったと述べています。

 しかし、④(page4)では彼は米国でGaN(窒化ガリウム)系の「発光デバイス」や「トランジスタ」の研究に従事していると述べており、これらは明らかに日亜が命じたテーマそのものです。②でも「LEDや発信素子の製造に欠かせない窒化物の大きな結晶を作る技術」を開発していると述べていますが、これも日亜時代の技術の延長です。これらのことは明らかに中村氏が述べた「別の全く新しい素材で全く新しい研究をしたかった」という日亜退職の理由と矛盾しています。



 それに、「別の全く新しい素材で全く新しい研究」をするつもりだったのであれば、日亜が提示した(窒化ガリウム関連研究の一時停止を求めた)機密保持契約にサインしても問題なかったはずです。③のインタビューによれば、機密保持契約への署名は事実上就職先の大学の弁護士によって止められたそうです。ということは、同契約書への署名は大学にとっても不都合だったのであり、中村氏は米国の大学に就職するに際して(日亜時代に知り得た)GaN関係の技術情報を必要としたということになります。



 これらを考慮すると、中村氏が(日亜の)青色LEDの技術情報を転職時の取引に用いたことは容易に推定できます。



 すなわち、日亜が米国の裁判所に訴えた「機密の漏洩」です。



(この機密漏洩に関する裁判では中村氏が勝ったことだけが強調されていますが、正確には、中村氏が漏洩した企業機密を日亜が特定できなかったという理由で裁判所が日亜の請求を棄却した、ということに過ぎません。中村氏が日亜の企業機密を漏洩しなかったこと自体が証明された訳ではありません。)



 この「機密漏洩」こそ中村氏が触れられたくない点なのです。

 もしそのことに世間の注目が集まれば、中村氏がそれまで築き上げた「名声」がガタ落ちになるからです。



 機密漏洩という非倫理的行為への非難と名誉の失墜を免れるためには、どうすればよいか。

 そこで考え出したのが、「青色LEDは会社の助けを借りずに会社の劣悪な環境の下で中村氏がたった一人で全てを開発した。(だから、その技術情報は元来中村氏の所有物である)」と言い張ることなのです。仮にそうだとすれば、技術情報の持ち出しも自分の所有物を使うのであるから全く問題がなくなりますから。



 反対に機材設備人員等多くの経営資源が使われたのだとしたら、青色LEDの技術情報は日亜と全日亜社員の共有物となります。それを持ち出すことは明らかな背信行為であり、非難は免れません。

 だからこそ中村氏は何が何でも、かつての部下や同僚を裏切ってでも「一人で開発した」と言わなければならないのです。



●ところで、なぜ第一審で200億円支払いという非常識判決が出たかという疑問が残ります。

 これにはいくつか理由はあるでしょうが、日亜が「(提訴時点で)特許関連製品で利益が出てないから404号特許の対価はゼロである」という「極論」で対抗したことに一つの問題があったと思われます。



「青色LEDが製品化された平成6年12月期から平成13年12月期までの間に,特許関連製品により被告会社にもたらされた損益を計算すると,-----,14億9000万円の損失という結果になる。このような算定結果も,本件特許権についての職務発明の相当対価はゼロである旨の被告の前記主張を裏付けている」

(第一審の判決文中の日亜の主張より)



 確かに、訴訟対象となった404号特許(ツーフローMOCVD)はそれ自体が改良発明に過ぎず、しかも類似の先行技術があるため無効にされ易いという弱点を持っている。それより優れた代替技術がいくつもある。競合他社は当然使っておらず、日亜も1997年からは使用していない。それに、ツーフローMOCVD法自体はLED製造技術全体のごくごく一部に過ぎない。あまり価値のある特許発明ではない。こんな特許に何百億円も払えるか、という日亜の言い分は理解できます。



 そうは言っても、日亜はある時期404号特許発明を使っていた以上、どんなに安くても(百円、千円であっても)対価がゼロということはあり得ません。結果論ですが、日亜は適切な裁判の落とし所を示唆するべきだったのでしょう。すなわち、日亜なりの対価の計算式を提示して404号特許の対価額を算出し、その額と中村氏に支払い済みの給与報酬とを比較して、対価は支払い済みであるという形にするのです。そうであれば、地裁も日亜の計算方式を採用し、それを修正して適切な「対価」を算出した可能性もあります。



 青色LED訴訟について詳細な報道をしている日経ものづくりの記者コラムによると、民事裁判では裁判所自体が独自に事実検証をするわけではなく、独自に判断基準を作るわけでもなく、また必ずしも法に基づいて白黒はっきりさせるものでもないそうです。



※青色LED訴訟の波紋(2)日本の裁判所は真実を追究する機関か

http://techon.nikkeibp.co.jp/article/TOPCOL_LEAF/20050209/101605/

 これによれば、

「裁判所は必ずしも真実を基に判断するとは限らない」、

「原告と被告の双方の主張や提出した資料のうち,より正しそうに思える方の主張や資料しか裁判官は採用しない」、

「しかも,主張が異なる場合に,どちらの主張を採用するかについては裁判官自身に委ねられている」、

ということです。



 推測するに、対価がゼロであるという日亜の主張は地裁の裁判官にとって修正のしようがなかった。かと言って、自ら社会常識に沿う対価算出方式を作る能力もない。となると、非常識かもしれないとは思いつつも、中村氏の主張する算出方式を多少修正して巨額な対価額をはじき出すしかなかった、ということかと思います。



 そして裁判官は、巨額な対価額を正当化するために、以下のような(一見もっともらしい)理由付けをしたのでしょう。



「上記によれば,競業会社である豊田合成やクリー社が青色LEDの分野において先行する研究に基づく技術情報の蓄積や研究部門における豊富な人的スタッフを備えていたのに対して,被告会社においては青色LEDに関する技術情報の蓄積も,研究面において原告を指導ないし援助する人的スタッフもない状況にあったなか,原告は,独力で,全く独自の発想に基づいて本件特許発明を発明したということができる。本件は,当該分野における先行研究に基づいて高度な技術情報を蓄積し,人的にも物的にも豊富な陣容の研究部門を備えた大企業において,他の技術者の高度な知見ないし実験能力に基づく指導や援助に支えられて発明をしたような事例とは全く異なり,小企業の貧弱な研究環境の下で,従業員発明者が個人的能力と独創的な発想により,競業会社をはじめとする世界中の研究機関に先んじて,産業界待望の世界的発明をなしとげたという,職務発明としては全く稀有な事例である。このような本件の特殊事情にかんがみれば,本件特許発明について,発明者である原告の貢献度は,少なくとも50%を下回らないというべきである。」



 ちなみに、この第一審の見解には以下のような問題があります。



1)LED製造技術全体がその一部に過ぎない404号特許技術と混同されている。(中村氏側の主張により誘導された誤解。)

「豊田合成やクリー社が青色LEDの分野において先行する研究に基づく技術情報の蓄積や研究部門における豊富な人的スタッフ」とは関連製品の製造に関わるすべてのスタッフを指している。これが日亜の404号特許(ツーフローMOCVD)に関わった数名の開発スタッフと対比されている。

 日亜は結晶技術(本件ではMOCVD)から先の工程の開発へ進むにつれて人員を追加しているのであるが、上記の見解だと、MOCVD開発要員のまま青色LEDのすべてを開発したかのように受け取られかねない。



2)「被告会社においては青色LEDに関する技術情報の蓄積も,研究面において原告を指導ないし援助する人的スタッフもない状況にあった」とある。しかし、日亜が化合物半導体研究を長年手がけてきたことは裁判でも認定されている。(上述の中村氏の講演録からも分かります。)これにより蓄積された技術がかなり流用できたはずである。

 しかも、中村氏はMOCVD技術を外部で習得している。さらに赤崎氏の研究論文など外部情報に触れる機会があったのであり、またその技術に習っている。「個人的能力と独創的な発想により,競業会社をはじめとする世界中の研究機関に先んじて,産業界待望の世界的発明をなしとげた」というのは的外れである。



3)「小企業の貧弱な研究環境」を客観的に裏付ける比較データが提示されていない。

(私の見聞した限りではMOCVDやMBEなどの結晶成長を研究テーマとする場合、中堅技術者プラス若手技術者1~2名が相場です。)



「50%」という数字にだけ注目が集まっていますが、それ以外にも問題があるのです。



■その他の情報:

 中村氏の代理人であるM弁護士は、(中村氏がコンサルタントをしており)日亜が数年前に争ったC社の日本側代理人であることも銘記するべきと思います。



※青色LED特許侵害事件(東京地判平13.12.20)

 http://www.tokyoeiwa.com/litigation/litigation.html



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PATさん,コメントありがとうございます (d_d-)
2005-05-08 13:21:55
コメントというにはあまりに詳細な寄稿,ありがとうございます。

私の書いた本体の記事の数倍のボリュームですから,ブログを乗っ取られたみたいですw。



>「会社承認の下で設備と人員があてがわれ、先行技術に基づいて青色LEDを開発した。しかも、開発成功後は相応の待遇を受けている」のです



だとすると,中村氏は本当に悪党な人ですね。

少し極端な人だというのは,TVなどでしゃべっているのを見ればすぐわかりますし,クリー社でしたっけ?渡米後,援助を受ける契約を結んだ企業に縛られて今回の訴訟を起こした(つまりライバル企業の陰謀)という話も聞き及んではいました。

しかし,給料を年1600万円(ノ賞受賞前の田中耕一さんの倍ですね)もらって部下数十人抱えてたとなると,大嘘つきの恩知らずもいいところ,これで一審を勝てなかった日亜は最低の弁護団に報酬を払っていたことになります。



今回は大変中身の濃い勉強をさせてもらいました。ありがとうございます。
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ズバリ、いくらが妥当だった? (味付け卵)
2005-05-26 09:34:22
結局、このような歴史的貢献者に対して8億は常識的に少なすぎる。ズバリ20億円か30億円ぐらいが妥当だったと思う。

皆さんはいくらが妥当だったと思いますか?
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