週刊なんとか

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Nikon1とデザイン思考

2013-06-12 23:58:33 | Nikon1
「デザイン思考」という開発アプローチがある。

主に工業製品でイノベーションを起こすためのアプローチの一つで、欧米ではかなり広まっている。

Nikon1という製品を見ていて、ふとこれはデザイン思考のアプローチで作られたイノベーションの、典型的な製品ではないかということに気がついた。

デザイン思考では、新製品の開発は、ユーザー(になるはずの人物)の行動を観察し、推測することから始まる。ユーザーの一連の行動を観察し、推測、対話することによって、そこに「テクノロジーによって解決することが出来る課題」や「新しい楽しみ」を見つけ出し、それに対して「解決方法」をデザインする。それが、イノベーションとなる。

Nikon1の場合はこうなる。

まず、ユーザーキャラクターを設定する。この場合、「カメラを趣味としているわけではないし、普段あまりカメラを使用しないが、旅行やイベント等にカメラを持って行って良い写真を撮りたいという若い男女」という感じだ。

次にその人がカメラを使用するシチュエーションを徹底的に観察、推定する。そうすると、次のような課題が見えてくる。

・コンデジやスマホを持っていった人。
「運動会を撮ろうとしたがピントもタイミングも合わなかった」
「暗い場所で綺麗に取れない」
「一眼レフみたいな、もう少し綺麗な写真を撮りたい」
「集合写真で一人だけ目をつぶっている・・・」
「カメラの設定なんて、触ったこともないし、触りたくもない」
「ビデオもカメラもとか、無理」

・一眼レフを持っていった人
「いざというときにカメラの操作が難しすぎて上手く使えない」
「背景が全部ボケボケ」
「大きなカメラは重いし圧迫感があるから持ち歩けない」
「望遠レンズは高価だし巨大すぎる」

それを解決するために、Nikon1という特異なカメラがデザインされていくわけだ。(コンパクトサイズ、適度に深い被写体深度、基本的にフルオート、スマートフォトセレクター・・・)

デザイン思考のもう一つの特徴は、この想定とアイディアを元にした素早く反復的なプロトタイピングだが、これは完成品からはうかがえない。しかし、これは言えると思う。
Nikon1のユーザーインタフェースは「開発者が本当に使ったのか」などと酷評されることもあったが、あのユーザーインタフェースはユーザーとの間で徹底的に検討されて練り上がったインタフェースなんだ。ただ、カメラ誌に記事を書くようなライターが使用想定者ではなかっただけだ。

デザイン思考をどうやって取り入れていこうかと考えていたのだが、身近にこんな具体的な教材があるとは、気づかなかった。

デザイン思考について、詳しくは「デザイン思考家が知っておくべき39のメソッド」をダウンロードして読もう。


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