巨樹に魅せられて

巨樹巡りを趣味としていますが、気がつくと神社巡り。その周辺の話題もココに書き留めています。

星野道夫「ALASKA~星のような物語」

2014-08-07 14:10:46 | 
ALASKA 星のような物語
NHK、2006年制作
写真家、星野道夫を扱った番組。



番組内容
アラスカを撮り続けた写真家・星野道夫。彼の作品の舞台をハイビジョン映像で収め、星野が遺(のこ)した撮影日誌から選んだ言葉で、偉大なる業績をひも解いていく。
詳細
アラスカを撮り続けた写真家・星野道夫。享年43。彼の残した写真と文章は、今も、人々の心を捉える。星野はいかにして作品をつくっていたか。それを探るために、十か月におよぶアラスカロケを行い、作品の舞台を映像で収めた。クマの親子、カリブーの大群、クジラ、氷河、花、荒野に降る雪、四季折々の大地…。残された文章と日誌から、星野道夫の足跡をひも解いていく(2006年の再放送)








彼の自然を見るまなざしが美しく厳しい映像となって迫ってきます。
そう、美しいだけではなく「生きる営み」を捉えた瞬間が切り取られて感動を呼びます。

印象的だったのは「一番お前に会いたかった」というハイイログマ(Grizzly Bear)。
夏にサケが遡上してくるところを口で捕まえて食べ、冬に備えます。
たくさんサケがいるときは、一番栄養のある頭部分と卵以外は食べないとのこと。
驚きました。
人間が一番おいしく感じる身部分には見向きもしないのです。

(しかし後年、この確信がクマに襲われて命を落とす悲劇の伏線となってしまいました)

それにも増して、研ぎ澄まされた珠玉の言葉の数々が素晴らしい。
以下は、番組ないで紹介されたフレーズ集です;
※ 引用は撮影日誌他、主に「ALASKA~星のような物語」「長い旅の途上」からのようです。


時々、遠くを見ること。
それは現実の中で、悠久なるものとの出会いを与えてくれる。



遠く離れていることが
人と人の心を近づける。

人の心は深くそして不思議なほど浅い。
きっと、その浅さで、人は生きてゆける。



一年に一度、
名残惜しく過ぎゆくものに、
この世で何度めぐり合えるのか。
その回数を数えるほど、
人の一生の短さを
知ることはないのかもしれない。
 (『長い旅の途上』より)



厳しい冬の中に、
ある者は美しさを見る。
暗さではなく、光を見ようとする。
それは希望と言ってもよいだろう。
 (『長い旅の途上』より)



人間のためでも 
誰のためでもなく
それ自身の存在のために自然が息づいている

そしてこの土地が
自分ではなく
このクマに属していることを知る

本当の意味での野生
原始自然というものを
ぼくは見たかった



めぐる季節、
人の一生、
そして大いなる自然の秩序。

ずっと続いてきて
これからも続いていく。
その単純な営みの繰り返しがもつ深遠さ。

人間の生きがいとはいったい何なのだろう。



何も生みだすことのない、
ただ流れてゆく時を、大切にしたい。

あわただしい、
人間の日々の営みと平行して、
もうひとつの時間が流れていることを、
いつも心のどこかで感じていたい。
 (『旅をする木』より)



約束とは 
血の匂いであり、
悲しみという言葉に
置き換えてもよい。
 (『旅をする木』より)



すべてのものに
平等に同じ時が流れている



僕たちが失ってしまった、
生き続けていくための、ひとつの力。
 (『イニュニック[生命]』より)


命は
どこかで
確実に息づいている



人の一生の中で
歳月もまた
雪のように降り積もり
つらい記憶を
うっすらと覆いながら
過ぎ去った昔を懐かしさへと
美しく浄化させていく。
もしそうでなければ
老いてゆくのは
なんと苦しいことだろう。
 (『ノーザンライツ』より)



冬をしっかり
越さないかぎり
春をしっかり
感じることはできない

それは
幸福と不幸のあり方に
どこか似ている



海辺の岩場に座ると
海面は夕暮れの陽光に
キラキラと輝いていた。
その時、ほとんど確信に近い
想像が満ちてきた。

それは遙かな昔
この岩に誰かが座り
こんな風に夕暮れの海を
見ていたに違いない
ということだった。
 (『旅をする木』より)



風の感触は
なぜか
移ろいゆく人の一生の
不確かさをほのめかす。

思いわずらうな
心のままに勧め、と
耳もとでささやくかのように。
 (『イニュニック[生命]』より)


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