一言二言三言

日常思うこと、演劇や音楽の感想を一言二言三言。
現在、半年遅れで更新中……DVDを買う参考にでもしてください。

雨と夢のあとに

2007-02-14 | 観劇
演劇集団キャラメルボックス
原作:柳美里  脚本・演出:成井豊+真柴あずき
出演:福田麻由子(雨)岡田達也(朝晴)岡内美喜子(暁子)岡田さつき(マリア)久松信美(早川)楠見薫(霧子)畑中智行(北斗)三浦剛(高柴/正太郎)大木初枝(ちえみ/沢田)青山千洋(波代/水村)篠田剛(洋平/康彦)小多田直樹(広瀬/熊岡)小林千恵(番場/大谷)
Sun.27.Aug in シアターBRAVA!

雨の父・朝晴はジャズベーシスト。蝶の採集に出かけていた台湾の森で行方不明になっていたが、ある朝、気づくと自宅でベースを弾いていた。しかし朝晴の姿は雨と、新しい隣人暁子にしか見えなかった。朝晴は雨に逢いたい想いで落ちた穴の底に体を残し、魂だけが戻ってきていたのだった。

劇団を2つに分けてのチャレンジ企画、もう一方は本物の子役を迎え、ドラマ化の際に脚色したものをベースにした舞台化だったが、舞台の出来としては今ひとつ。
4~500席程度の小劇場なら悪くはないが、BRAVA規模で観せるには完成度が低く、素人目ながら、端々まで演出家の目が行き届いていないように思われた。
役者任せの演出としても、あまりに普通に演じているので表現上の面白みもない。旗揚げしたばかりの慣れていない劇団のような印象だ。
また、落雷などの音響効果も1回目は迫力があって良かったが、2回3回と同じ調子で繰り返されたのは煩いだけ。
辛うじてゲストの実力で保っていたと言えなくもなく、通して、話と役者がもったいない作品になってしまっていた。

俺たちは志士じゃない

2007-01-21 | 観劇
演劇集団キャラメルボックス
脚本:成井豊+真柴あずき 演出:マキノノゾミ
出演:浅野雅博(神田松吉/文学座)細見大輔(品川竹次郎)温井摩耶(かえで)西川浩幸(桂小五郎)大家仁志(天王寺創一郎/青年座)左東広之(鶴橋清之助)筒井俊作(梅田新兵衛)實川貴美子(天王寺美咲)坂口理恵(ぬい)渡邊安理(こま)武田浩二(土方歳三/アクションクラブ)多田直人(沖田総司)
Sun.16.Jul  in 新神戸オリエンタル劇場

幕末の京都。新選組について行けず脱退した江戸の浪人・松吉と竹次郎は逃亡中、偶然出会った岩国藩士・鶴橋に坂本竜馬と中岡慎太郎に間違えられ、商家の土蔵に匿われる。やがてその土蔵に勤皇の志士・桂小五郎がやってくることになり――

千秋楽を観劇。(たまたま)
『俺たちは志士じゃない』再再演は、演出家にマキノノゾミを迎えてのチャレンジ企画。
脚本を書き直したというのもあるけれど、舞台は本当に演出家次第で変わる。ストーリーは同じでもまるっきり違う作品になった。
キャラメルボックスといえば、前向きで爽やか、ハッピーエンド必至(TRUTHが唯一の悲劇)の、つまりあくまで『健全』な老若男女が楽しめるお芝居をする劇団だったわけですが、ここ数年はマンネリな印象を受けていた。
登場人物は記号化され、役者たちの演技の幅も一様。見終わった後も、誰が出ていたかは覚えていても、役の名前は思い出せない。
それでも演出家を変えたときに動ける役者が育っている、ということが証明された点は、この公演の成果だと思う。
マキノ氏はMy Favorite演出家なので(野田秀樹は別格。化け物だと思う)好みの味付けになっているのは当然だが、今まで記憶に残らなかった役者たち1人1人が、ちゃんと生きた人間を演じていた。
特に今回注目したのは温井摩耶。本当にこれまで私は彼女を認識していなかったのだけど、京女のはんなりさと、落ち着いた大人の色気を醸し出すイイ女ぶりに、すぐに虜になってしまった。
彼女の演技を見ると成井演出とマキノ演出の違いがよく分かる。成井ではおそらく叫んで感情表現するところを、あえて観客に背を向けて静かに言葉を押し出す。これがいい。
松吉の支払いを肩代わりするシーンでも、オーバーアクションで嫌がって見せるのではなく、困ったような笑顔で「なんで私が」と言いながら、少し体をくねらせてしょうがないわねと小銭を出す。松吉との関係性を想像させる様にニヤリとさせられた。
主役松吉の浅野さんはさすが文学座というべきか、三枚目なのに味のあるいい男で、温井との男女の遣り取りは憎らしい。まさにお似合いだ。
實川は初演、再演の美咲の中で最もハマッていたと思う。男勝りで無謀、心の淀みのなさ、世間知らずな正義感が、女ではなく少女である姫君らしい。
情けないけど献身的な美咲の許婚・清之助とも親分子分、といったままごとめいた雰囲気が微笑ましかった。
こまはキャラメルでは絶対に見ることのない登場人物で驚いたが、渡邊は田舎育ちのおっとりとしていて融通が利かず、どこか抜け目のない奉公人の娘を好演していた。常に体を折り曲げた姿勢は大変だっただろうと思う。
ぐっちさんはいつもと違うものを要求されたようで、若干しんどそうではあったが、次回作『少年ラヂオ』ではドシリとしたいい演技を見せてくれていた。
いろんな意味で全員がいい刺激を受けたように思う。キャラメルボックスの行き先が楽しみになった。

トーマの心臓

2007-01-02 | 観劇
Studio Life  脚本・演出:倉田 淳  原作:萩尾望都
Sat.8.July(Seele) Sun.9.July(Flügel)  in シアター・ドラマシティ
山本芳樹(ユーリ)高根研一(オスカー・Seele)曽世海児(オスカー・Flügel)松本慎也(エーリク)林 勇輔(レドヴィ)吉田隆太(アンテ)船戸慎士(バッカス)舟見和利(サイフリート)他

冬の終わりの土曜日の朝、トーマ・ヴェルナーが自殺した。そして月曜の朝、ユリスモールの元へ遺書が届く。「これが僕の愛、これが僕の心臓の音…」半月後に現れた転入生エーリクは彼に生き写しだった――ドイツのギムナジウムを舞台に繰り広げられる思春期の愛と生命の物語。

高根オスカー最高!! 正にオスカーそのものでした。私が見た回は彼だけ一足早い楽日だったのですが、カーテンコールで足首まで手をつけて体を折る姿や、最後に立ち去る際の手を振りながら見せた吹っ切れた笑顔は、役に対する思い入れの強さや真摯な姿勢を語っていたような気がします。
一方、曽世オスカーは大人すぎて、シュロッターベッツの問題児という設定にはややそぐわない気がしました。ユーリと2人のシーンでは柔和なタイプが並び、キャラクターがぼやけてしまったのも残念なところ。
で、その主役のユーリは……とっても不思議ちゃんでね。コメント映像を見た限り、地なんじゃないかと思うんですが。私が山本芳樹を苦手だという点を差し引いても、生徒みんなの尊敬を集める人物には思えなかった。どちらかと言うと天上の人ではなく、違う星の人だと思う。でもこれでユーリ役3回目くらいなんだよね……あれが倉田淳のユーリのイメージなんでしょうか。う~ん。
松本慎也はすごくエーリクらしいエーリクで、現実の人間として存在する彼は生意気なばかりに見えた原作よりも、さらに内面の純粋さが伝わって、好感の持てる人物になっていました。
心配されていたサイフリートも、変質的な部分が強調されていたので、ユーリのトラウマに説得力が出て、なるほどな、という配役でした。舟見さんに対する見方は変わりましたけれど。笑
そしてアンテ……か、可愛すぎる。さすが吉田隆太。何度心の中でオスカーに「そんな不思議ちゃんほっといて、アンテの気持ちに応えてあげなさい!」と叫んだことか!
ちょい役ですが、シェリー(ユーリの母親)役、岩崎大さんも控えめだけど芯は強そうな女性で、立ち姿(足首めっちゃ細っ!)は私が見たライフ作品、数作の中でピカ1の美しさでした。
物語は一読では難しい原作を、印象を損なうことなく世界に入り込みやすい形にしてあり、改めて「ああこういう物語だったのか」と再発見でき、原作を読んだ人も読んでいない人も満足できる内容と完成度だったと思います。2006年、お奨めの1作でしょう。

余談。ドラマシティでチケットを切ってもらった瞬間、私の目はグッズ売り場横のファンクラブの入会受付に立つ曽世海児・三上俊に釘付けになってしまいました。オーラって、あるんですねぇ……。またこの2人の受け答えする様が素晴らしい。柔らかい笑顔と低い姿勢には感心しきりでした。舞台衣装の制服なので、なおさらどこの高級ホテルマンかと。三上君には休憩時間にも黒の上下にスタッフ証を首にかけた姿とすれ違ったのですけれど、その時も無意識に振り返ってしまいました。電話予約時に受けた丁寧で感じの良い印象は嘘ではなかったようです。おネエさん、これから君のこと贔屓にさせていただくわ

SUE CREAM SUE リサイタルショータイム 改訂版!

2006-11-23 | 音楽
with Cleanup Charmy Crew (CCC) エコノミーゲスト ジョプリン得能
Fri.7.Jul in なんばHatch

マツリもとうに終わって今頃なんですが。てゆーかもう無理。私無理。と思いつつ更新が滞り続けてどうにもならない。

セットメニューは公式サイトのBONさんのブログで公開されているので、そのまま転載。
()内BONさんのコメント付
◆SCS recycle show time改訂版 LIVE Menu◆
M1 It’s Bad(ホームメイド「アイコトバ」ラップネタ入れて)
M2 ライスシャワー
M3 ぷりんぷりんのプリンセス(新曲)
M4 chu chu chu
M5 いみじくも君は
MC (あいさつ、軽くメンバー紹介)
M6 なかよしレーズン(新曲)
M7 逢いたくて
MC
M8 ちょこっとMedley
  1ロリポップ/2チョビットダンス/3プラムジュース
(ちょこっとメドレーからアコースティックコーナーに流れ込むためプラムジュースの後テーマにもどってからは歌はドラムだけのアカペラでその準備している様子をアドリブで実況表現する。「ちょっこっとメドレーここまででここからお楽しみアコギのコーナーだよ!」準備は楽器の持ち替えと立ち位置を焚き火にMC(今回のバンドメンバー片付け隊CCCの構成員は?)
M9 大切な(新曲)(アコギコーナー)
M10 愛してる<アコースティックver>(アコギコーナー)
M11 喜びの歌(新曲)(アコギコーナー)※エンディングでスクリーンdownmi
VTR(吹き替え生で)※ここでスクリーンを使います。
M10 CCCのテーマ(オリジナルインスト新曲)
MC(MCでかなり前衛的ダンスをこれからダンスのカデゴリーでいうとコンテンポラリーという分野に挑戦です。)
M11 五番街のマリー
MC
M12 女にして
楽器屋劇(「すごいすごいって、最近すごくない?、おじさん達。」)
M13 得ブルース(J.T登場)
M14 ミラクルギターショップ(新曲)
M15 UP!UP! (エンディングにWELL COME2のイントロをそこで得能ダンス)
M16 東京イェイイェイ娘 (タイトルを地域別に大阪だったら大阪に、町をなんばに)アウトロにチェイサー付けて得能MCでSCS送り出し)
EC1
EC.M1 踊れシュークよ 踊り子よ
MC
ECM2 夢を見させて(新曲)
MC<BGMにCのスリーコードで>
EC M3 盛り上げたたき込みダンスMedley
1シュールダンス(JT.)/2愛know マジック(全員)/3かっちょE(be)/4サンサンサンバイザー/5Funk FUJIYAMA(全員)/6なんですかこれは(りょうじ)/7油ギッシュナイト/8Kome Kome War(全員)/9I can be(金ちゃんボーカル)/10Shake Hip(全員振り分け)/11狂わせたいの(JT)/12 ちゅんこちゅんこすずめ
(※狂わせたいののアウトロXtimeで上下ハケテ、SCSちゅんこの衣装をつける)
EC2
MC
EC M4 愛してバタフライlong ver(エンディング音のばし)


……記憶が定かでなくなってきてるんですが。(当たり前)
非常に楽しかったのです。昔好きだったものは今聴いても好きなのね。
CSがいなければこんなにも和やかなバンドだったんだなぁ。シュークのライブは初めてだったので、そのあたりの発見も面白かったです。
JOは米米の象徴だし、CSは「俺が俺が!」って人なのでオンステージになってしまう。SCSのライブとしてはこれが正解。
アコギコーナーはみんなで輪になって腰かけて(焚き火だったんだ……↑BONさん)てっぺいちゃんの悪口で盛り上がる(笑)そこに愛はあったけどね。妹苦笑。座り位置は左から金ちゃん・マリさん・BEさん・RYOちゃん・BONさん・美奈子さん。(だったと思う)
その1 俺に歌わせろ!という性格だから、いつも楽器の音入れでは退屈していなくなるのに、BONさんが扉を見ると窓から廊下のてっぺいちゃんが覗いてニコニコと手を振っていた。マネージャーに焼酎を買いに行かせて1人で呑んでいたらしい。BONさん「すごく恐かったんだよ!」
その2 Cleanup Charmy Crew は金ちゃんのスタジオの掃除をするお片づけ隊の名称。隊長はBEさん、副隊長はRYO-J。「てっぺいちゃんは後から来て花飾って自分の手柄にするんだよ」誰かが言い、全員が頷く。
その3 「小野田くんは優しいね」「疲れてきた頃に飲み物差し入れしてくれたりするよね」なぜか全員しんみり……
このコーナーで印象深かったのは美奈子さんの『愛してる』だった。この曲が発表された当時、私はこの歌がちっともいいと思えなかった。あまりに率直で米米らしくなく、面白みのない媚びるような曲だと感じていた。それがギターの音にのせて美奈子さんが歌い始めたとき、涙がこみ上げそうになって驚いた。素直にいい曲だと思えてしまった。なんだ、てっぺいちゃんが歌うから嘘くさかったんだな。(『君がいるだけで』はいまだに好きじゃないけど。)
美奈子さんの歌に合わせてマリさんが、マリさんに合わせて美奈子さんの「前衛的ダンスに挑戦」は一瞬出てきて終わった(たぶん衣装替えの都合と思われ)けれど、美奈子さんの足上げマラソンのような動きは面白かったです。何につけても思い切りのいい人だ。笑
ダンスMedleyは弾けないはずがない。なんですかこのラインナップは! てゆーかみんな歌上手い! めちゃカッコイイ! 
いやあ興奮しましたね。ふらふらになりながら狂わせたいのずっと飛んでいたかったよ!


美奈子さん作・絵 『喜びの歌』
おなかに左「MARI27」右「MINA27」と書いてます。笑
アコギコーナーでファンと合唱♪


踊ろうよ 両手を広げ 大地けって リズムきざもう
歌おうよ 空にひびけ 風にのせて 君に伝えよう

昔昔 人はみんな 裸のまま 暮らしていた
アダムとイブも 歌い踊り 平和に過ごしてた

時代は 変わり 世界は変わった
今こそ 生きてる 喜びの歌を 感謝の歌を

SHINKANSEN☆RS メタル マクベス

2006-10-15 | 観劇
劇団☆新感線
原作:ウィリアム・シェイクスピア  脚色:宮藤官九郎  演出:いのうえひでのり
出演:内野聖陽(ランダムスター/マクベス内野)・松たか子(ランダムスター夫人/ローズ/林B)・森山未來(レスポールJr./元きよし)・北村有起哉(グレコ/グスタフ北村)・橋本じゅん(エクスプローラー/バンクォー橋本)・高田聖子(グレコ夫人/シマコ)・粟根まこと(パール王/ナンプラー)・上條恒彦(レスポール王/元社長) 他
Mon.3.Jul in ウェルシティ大阪厚生年金会館大ホール

時は2206年。絶大な勢力を誇るレスポール王率いるESP軍が将軍ランダムスター指揮の下、他の軍を次々と征していた。そこへ3人の魔女が現れ、ランダムスターに「未来の国王」・エクスプローラーに「王を生み出す男」との予言を告げ、1980年代に活躍したヘビーメタルバンド『メタル マクベス』のCDを渡す。歌詞は殺人予告であり、バンドの人間模様は国王への道に繋がる予言になっていた。予言を知ったランダムスター夫人は夫をそそのかし、レスポール王の息子レスポールJr.を犯人に仕立て、王を殺すという計画殺人を企てる。手柄として与えられた領地マホガニー城で開かれたESP軍の勝利を祝う宴が幕を閉じたとき、殺人計画は実行に移された。城から逃げ出したレスポールJr.は、パール王の元に身を寄せる。そして王を永遠の眠りに導いた夫妻は罪の意識に苛まれ、自分達の永遠の眠りも奪われたことを知る。


久しぶりに歌の上手いミュージカル見たなぁ…(その感想もいかがなものか)ヘビメタですが。
実は始まるまでは恐る恐るだったのですよ。歌が、じゃなくてね。いやそれは想像以上はるかに良かったんですが。私、新感線苦手かもしれないって思ってたんです。
でも新感線のどこが苦手か分からない。演出もカッコイイし、役者も上手いし、なんか凄いってのは思うんだけど、中盤でいつも疲れて時間が気になってしまう。実質的に公演時間も長いんですけどね。
で、演出の問題なのか、脚本が問題なのかを考えていて、今回。
非常に面白かったです。
蜷川版の『天保十二年のシェイクスピア』悩んでやめてよかった……出演者には惹かれたけど高いんだよぉ。いや、新感線も高いんだけど。ちょっと脱線。
このブログでもクドカン好きは何度も明言してきましたが、これだけ上手くコラボレートするとは思いませんでした。いのうえひでのり、やりますな。
クドカン作品はキャラクターが際立っていて、楽しさに溢れているけれど、庶民的な空気がある。今作では勢いはそのままに、ヘビメタの激しさ・退廃的王国世界を当てはめて貧乏くさくないマクベスに仕上がっていた。
個々の役者については、上條氏はさすがとしか言いようがない。レスポール王の威厳にランダムスター夫妻に罪悪感を与えるだけの人間性、そして響き渡る歌唱力はまさに圧巻といったところ。
ランダムスター夫妻はクドカンお得意のバカップルだったが、2人とも賢そうなので、『ぼくの魔法使い』の町田夫婦ほどの面白さがなく、若干物足りない気はした。(クドカンに毒されているのだろうか…)
レスポール王殺害後の壊れていく様も、まともそうで追い詰められた人間の悲壮感はあまりなかったので、この点においての説得力は薄かった。しかし内容満載の舞台なので、全体としてはこれぐらいがちょうどいいのかもしれない。本当は人の良い夫婦が、魔女の予言というきっかけに背中を押されて罪を犯して“しまった” そんなマクベスもアリだろうか。もうちょっと松たか子に色気が欲しかったけどね。
北村有起哉はいつ見ても感じが良いね。なんか健全な感じがするね。でも綺麗すぎず熱すぎずで、どんな役やっても嵌まってるなぁと思う。主役タイプではないが(いや分かんないけど)№2の位置で女性1番人気みたいな印象です。
で、グレコとレスポールJr.森山がじゃれあうシーンは笑わせるところなんですが、ビジュアルが美しいためにある特定の層に対するサービスのように思えてしまった。目、腐ってる私? でも絶対狙ってるよねぇ?
その森山未來。ステージから降り、私の左側通路を走り抜けたわけですが。片手をゆるく伸ばせば届くその距離に一瞬見た森山未來。
ムッチャ、綺麗。
「うっわ」って感じ。「うっわ」って。
そしてその透き通る肌を見て思ったことそのまま書くならば。
キィッレッ! 森山未來キッレッ!……さ、触りたいー……
休憩除いてフルに4時間のステージ。1番印象に残っているのがそれとはどういうことか。>自分。
12500円(送料込)払った甲斐ありました。ありがとう。これでもう満足です
さて(仕切りなおし)脇を固める新感線メンバー。どの舞台でも際立って存在感を見せる役者が、多すぎて埋もれてしまうという凄い劇団だなぁ、とまたしても実感しました。実力があるからこそ、脇に徹してゲストを引き立たせることができるわけですが。この中でも際立ってしまう古田新太は本当に凄い、と出てないけど感心してみたり。
粟根氏は完璧な身のこなしで、それなりだった若造たちが並んで同じ動きをするとヘナチョコ見える。揺るがない、って感じですね。
橋本じゅんはわりといつも通りかなー。笑
歌詞はめちゃめちゃだけど(もちろん狙ってる)生バンドの重低音が絶妙の入り方で、盛りだくさんの舞台を中だるみすることなく、最初から最後まで力強く引っ張り、時間はまったく気にならなかった。
知らなければ難解で敬遠しそうなシェイクスピアが、まったく違う枠と手法でとても理解しやすい形になっていた。私のように新感線ちょっと苦手かもと思っていた人間にも入りやすい。いいもの観せていただきました。

HUMANITY THE MUSICAL ~モモタロウと愉快な仲間たち~

2006-10-04 | 観劇
企画ユニット地球ゴージャスプロデュース公演Vol.8
作:岸谷五朗 演出:寺脇康文・岸谷五朗
出演:岸谷五朗・寺脇康文・唐沢寿明・戸田恵子・高橋由美子・植木豪・蘭香レア 他
Tue.27 / Wed.28.Jun in フェスティバルホール

『大会社』に勤める平凡なサラリーマンの順平(唐沢)は妻のアサコ(戸田)は口うるさいけれど、可愛い愛人ミヨ(高橋)とそれなりに楽しんでいる。ある日、ワンマン社長の前でのプレゼンに失敗すれば即クビ決定の新商品開発チームのメンバーに選ばれてしまった。しかも枕元に現れたおじいさん(人形声:岸谷)とおばあさん(人形声:寺脇)に無理やり送り込まれた別世界で、種太郎として鬼退治にでかけることになる。集まってきたイヌ(寺脇)サル(植木)キジ(蘭香)は、現実とはまったく性格の違う開発チームのメンバーで……


保険をかけたら2日取れちゃったよ第2弾。
現実世界の設定そのものはシビアだが、全体的に『親子で見るミュージカル』と言いたい雰囲気だった。しかし、ミュージカルと銘打つほどミュージカルっぽくもない。
なんだかデパートの屋上で戦隊物のショーを見てる気がする、と思っていれば、後ろの席からはキャッキャッと笑う子どもの声が聞こえてきた。――まあ、オニさんだしね。イヌさんだしサルさんだしキジさんだしね。
肝心の歌を戸田恵子に頼りきるのはどうだろう。岸谷と蘭香レアはもっとイけたはずである。高橋由美子は可愛いかったからいい。唐沢は主役だから仕方ない。寺脇は……やめておけ。
物語はサブタイトル通り。捻りはまるでないが直球というほどの威力もない。一応『人間らしく生きること』を問い掛けるヒューマンストーリー――だったらしいが、説得力はあまりなく、バカバカしさに徹するにしても出演者が楽しそうではない。
しかも、大きな舞台で主役張る役者ばかりだが、特に男性陣は背格好も役者タイプも近く、コスプレしているだけで誰も目立たないという生ぬるいステージになっていた。
さすがに主催者2人は楽しそうではあったが、1部の終わりに登場した赤オニ岸谷が嬉しげに空中アクロバットみせても、観客には岸谷五朗だとはっきり認識してもらえなかったらしい薄い反応は、観てるこっちがもの悲しい気分にさせられた。
47人の大人数の舞台とはいえメインはほとんど踊らないため、合間にエキストラの人たちが頑張るが、主題歌と挿入歌があったという程度の印象しか残らない。唯一凄かったのはPniCrewの植木くんの登場シーンで、エキストラの皆さんを引き連れてのダンスは素人目にも際立っていた。ブレイクダンスの世界チャンピオンというのは後で知ったけれど、イヤ「すげえ」の一言。今ではNUDAの岡村がそれほどカッコよく思えません。(ゴメン)
ほかに岸谷五朗はかなり動ける、というのは発見かな。リズム感もバッチリある。もっと全面に出て踊った方が良かった。(演出の立場では難しいのかもしれないが)
比べて相方の寺脇康文は体が重すぎる。アクションシーンも体格の割りに動きが悪いので、ちっとも強そうに見えない。セットの円盤の上で回りながら、鼻にかかった声で「タネタロさんタネタロさん」は面白かったけど、犬飼ってる人しか分からないネタは微妙だと思う。
個人的に愛内里奈似のお色気社長秘書(HP見ても眼鏡してないのでどの人か判別できず…)と、ベリーショートのお姉さん(この人は分かりやすい。中村沙耶さん)はとても気になる存在でした。

妻をめとらば~晶子と鉄幹~

2006-09-23 | 観劇
マキノノゾミ『MOTHER-君わらひたまふことなかれ』より
脚本:マキノノゾミ・鈴木哲也  演出:宮田慶子
出演:藤山直美(与謝野晶子)・香川照之(与謝野鉄幹)・太川陽介(北原白秋)・岡本健一(石川啄木)・匠ひびき(菅野須賀子)・田中美里(平塚雷鳥)・山田純大(平野萬里)・松金よね子(啄木の母)・小宮孝泰(特高警察下っ端・安土兵助)・野々村のん(与謝野家手伝い・千代)・木下政治(佐藤春夫) 他
Sun.18.Jun  in 新歌舞伎座

物語は明治42年から大正2年までの5年間。かつては浪漫主義運動の中心として活躍した鉄幹も今は啼かず飛ばずで、弟子の北原白秋などは影でバカにする始末。8人の子育てと家計を支えるのは才気溢れる妻晶子だったが、犬も食わない夫婦喧嘩を繰り返しながらも夫にもう一度奮起してもらいたいと願っている。やがて『大逆事件』によって友人の菅野須賀子が処刑され、晶子も特高警察に目をつけられたが、彼女はただ家族のために日々を一生懸命生きていた。
明治の歌人与謝野夫妻と2人を取り巻く優しい人間模様。

関西人にとって藤山寛美は特別な存在だ。(若い世代は知らないだろうが)その娘の藤山直美もしかり。とはいえ、まだまだ新歌舞伎座は敷居(年齢)が高い。本気で足を運ぶつもりはなかったのだが、チケットサイトのメルマガの煽り文句に踊らされてしまった。
マキノノゾミだし、出演者も現代劇の人だし……ちょっとだけ敷居が低くなったような幻を見た。
新歌舞伎座は御堂筋線なんば駅12番出口の目の前。というより新歌舞伎座のために作った出口だろう、あれは。その階段を上りながら後悔がすぅーとやってくる。
「私のお客さんはおばちゃんが多いんです」
藤山直美のインタビューを読んでいたが、敷居は予想以上、はるかに高かった。
地上に出て正面玄関に溢れる人込みを目にした瞬間に、私は岡本健一ファンのふりをすることに決めた。(本当は香川照之が好き)
さて、劇場の居心地は別にして、舞台そのものは面白かった。
一言で言うなら、ザ☆マキノノゾミ・大衆演劇風味。
与謝野晶子と聞いてこの種の芝居のテーマとしてはどうかと思っていたが、マキノノゾミらしい人物描写と、優しい視線でほのぼのじんわりとした物語に仕上がった。
マキノ氏の個性が強いが、テンポのいい遣り取りの中には女性らしさも見え、そのあたりは演出家の目線かもしれない。
そして藤山直美。冒頭のシーンは与謝野家の引越し手伝いに集まった弟子たちのところへ平塚雷鳥、菅野須賀子が訪ねてくるというものだが、あまりピンとくるものはなかった。ところが、花道を鉄幹を従え身重のドテッ腹抱えた晶子が偉そうに大外股で登場し、振り返って2階席をギロリと睨むんだ途端、舞台の空気が変わった。
圧倒的な存在感で舞台が引き締まる。大黒柱が立ったといった感じだ。他の役者陣との会話も小気味良く、冷静な判断力と頭の良さを感じる。
応える相手役香川照之も上手い。できもしない主婦の真似事をしてみたり、妻の著書を売って辞書を買おうとするダメ夫、でも「男がすたる」と見栄を張るのがちょっとカッコイイ。
犬も食わない夫婦喧嘩を繰り返す与謝野夫妻だが、その様がなんだか可愛らしかった。
しかし会場のおばちゃんたちの心をつかんだのは松金よね子だった。その流れるようなセリフとボケと"はしっこい"ばっちゃんのコメディセンスに、周囲のおばちゃんたちは自分の姑を思い出すかのように「あらまあー、おばあちゃんったら」と親しみを込めて呼びかけていた。それをさせる演技の安定感がプロ仕事って気がする。
岡本健一の啄木も男前なのにひ弱な感じが良く、白秋の太川陽介は調子のいい男で啄木との対比もあり似合っていた。
啄木の奥さん役も誰か分からないんだけど、貧乏を苦にせず、おっとりしているのに夫のために姑の裏をかくけなげな姿が可愛かったな。可愛いといえばお手伝い役の千代ちゃんもはきはきして気持ち良かった。
木下政治は……どこにでもいるなぁ。クドカン作品の阿部サダヲみたいなものだろうか。それにしては演技が地味なんだよ。山田純大とポジション的に被っていたが山田が爽やかな分、佐藤春夫がそこにいる意味は(実際いたのかもしれないが芝居上は)なかったと思う。
正直言えば藤山直美の晶子はいかにもオバハンなのかと思っていた。けれどそこには夫を愛し、お茶目で懸命な、理想にしたいような母であり妻がいた。女性としても魅力的だけど、女優としてもやはりすごい。そして後半、ある部分で間違いなく寛美が乗り移っていた!
今回の公演は観れて良かった。おそらく新歌舞伎座にはあと×△年は行かないけれど。私も世間ではそこそこいい年だが、あそこでは所詮まだまだ小娘さ。

まとまったお金の唄

2006-09-04 | 観劇
大人計画
作・演出 松尾スズキ
出演:阿部サダヲ(蒼木ヒカル)・市川実和子(蒼木スミレ)・宮藤官九郎(馬場)・伊勢志摩(蝶子)・荒川良々(蒼木ヒトエ)・村杉蝉之介(カクマル父・蒼木父)・近藤公園(カクマル)・平岩紙(博子)・内田滋(神木)・菅原永二(新宿)・松尾スズキ(ダイナマン)
Sat.3 / Sun.4.Jun  in ウェルシティ大阪厚生年金開館芸術ホール

行方不明だった父がなぜか太陽の塔のペンキ塗り中に落ちて亡くなり、借金を背負った蒼木家。周囲で混乱させるのは、離れに下宿するウンコ哲学者の馬場と女性革命家蝶子の夫婦。金貸しのカクマル親子に、大衆演劇の美少年役者だったが一家離散で乞食になった神木くんが加わり、蝶子の手引きで東京から学生運動が元で逃げてきた新宿を匿う一方で、ボケ始めた母とメンスにこだわる娘たちが行きたいのは、もうすぐ閉会してしまうオオジカ(大阪)万博。
1970年、万博に行きたくて行けなかった家族の物語。


保険をかけたら2日取れちゃったよ第1弾。思ったより下品じゃなかったです。上品でもないですが。
クドカン、ウンコ持ってるし。でもいいです。今回の胸キュン大賞は、蝶子さんをペチッと叩いてつっこむところで(たぶん)肘がゴッと入ってしまい、傷みを堪えて芝居を続ける伊勢さんの頭を、そっと撫で撫でするクドカン。あの自然さ! そりゃモテるさ! ウンコ持っててもいいよ!(何言ってんだ自分!)
阿部サダヲは案外アドリブないんだね。稽古段階でやりきったのかもしれないけど。かき回すのはむしろ作・演出の松尾スズキだった。役者大変だな……良々が仕切ると思わなかった。今まで観たのが『素手でワニをつかまえる方法』(タ・マニネ)のワニに変身していく男とか『真夜中の弥次さん喜多さん』の荒川良々分裂ショーだったので誤解してました。まともな役者さんです。(この言い方も失礼だが) オカン似合ってたねぇ。
スミレの未来の娘(進行)役、平岩さんも可愛かったねー。セリフ間違えて立ち去る間際の「ゴメンナサイ!」が微笑ましく可愛い。市川さんも可愛い。阿部サダはオモロイ。
神木くんもなんか好き。あっけらかんとしてて。不幸なのにポジティブ。ポジティブすぎ?
伊勢さんは月影十番勝負の時とは別人のように美人な感じ。女優さんだね。回想シーンのミニスカ・ヒールでフライパン持った姿はスタイル抜群。モテモテという設定が説得力アリ。
カクマル親子も上手い。キャラクター重視の脚本だけれど、脇がしっかりしていると全員が生きるね。大人計画はいい役者さんが揃ってる。
大阪万博開催中、人口の半数が物見遊山に訪れ「人類の進歩と調和」をありがたく拝んだ日本。安保闘争、学生運動に揺れた日本。チープで、熱を帯びた1970年代。
舞台では差別用語として今では口にできない言葉が遠慮会釈なしに飛び出してくる。挑戦的なのではない。その時代はそれが当たり前だったのだ。大阪万博の頃は生まれていなかったが、子どもの頃でもまだ意味が分かる程度には使われていた。もちろん差別用語だとは思わずに。人々の混沌と残酷な事件をコメディタッチに描きながらも、あえて避けて演じられなかったことで、70年代という時代を強く感じた。
しかし、松尾スズキは少女性の喪失に何かのスイッチを持ってるのかな。『キレイ』とは全然違う世界観なのに、そこだけは共通していた。
いや、それにしてもみんな大阪弁上手い! 生粋の関西人の私が気づかんかったくらい、まったく違和感なかったよ。ブラボー!

言い訳ですが。

2006-07-26 | その他
6月・7月といくつかお芝居を見たりシュークのライブに行ったりしましたが、感想をアップする時間がまったく取れません。
自宅でメールのチェックもできない状態です。
1記事書くのに数日かかったりもします。
落ち着きましたら、数ヵ月遅れの発酵した感想をお届けします。

槇原敬之  LIVE IN DOWNTOWN

2006-07-02 | 音楽
Fri.19.May in 神戸国際会館こくさいホール

マッキーはいい奴だ。

アンティークのドールハウスの部屋にDOWNTOWNの商店を詰め込んで、酒屋さんに神父さん、お医者さん、中華街のお姉さん(神戸限定?)ピザ屋さん、左官屋さん、電器屋さん。
様々な人たちが奏でる。
ドラム、シンセサイザー、オルガン、ギター、ベース、パーカッション、そして槇原敬之。
音源のドラムなんてあるんだ。進歩してるなぁ。

誕生日の翌日だったらしく、最前列の人たちが『(たぶん)誕生日おめでとう』メッセージの紙を持って並んでいた。マッキーの「ありがとう」が本当に心から喜んでいて、上から見ていた私もなんだか嬉しかった。
『尼崎の夜空を見上げて』で始まったこのライブは『遠く遠く』などの有名な楽曲の他に、カバーアルバム『Listen To The Music 2』からも数曲を披露した。
『ファイト!』は中島みゆきがラジオ番組のリスナーからのハガキを元に作ったそうだ。この間東野幸治が深夜番組で「あの歌おかしいで!」と力説していたけれど、確かに前説がなければ「なんでやねん!」と突っ込まなければならないかもしれない。
静かな語りで始まるこの曲の歌詞は、ただただ痛い。それが彼の優しくいたわるような歌声にじっと耳を傾けていると、小さく無力なひとりひとりに同調し、切なく涙がにじんでくる。
矢野顕子の『ごはんができたよ』も嬉しかったな。ご本人たちが仲良しというのもあるけれど、マッキーの声はあっこさんの歌に馴染じむね。YUKIちゃんのつき抜けた声も面白いけど、胸がじんとする感じは少ないんだな。
それから『チキンライス』――松ちゃんは名作詞家かもしれない。

15分休憩に入ると、スクリーンにはマッキー出演のおかしなグッズ販売のエセっぽい昔風CMが流れ始める。
これが非常にしょうもないのだが、延々続いてトイレに行かせない。
マッキーの耳の形の耳かきって。
1日限りのペアルック(ツアーTシャツ)って。笑

第2部はCDジャケット模様のスーツに着替え、アルバム『LIFE IN DOWNTOWN』の中からアップテンポな曲を中心に構成。
『ほんの少しだけ』では、ラップはあまりすきじゃなかったのに、突然HOME MADE家族のストーカーと化してライブに行きまくり、甲斐あってKUROちゃん(とマッキーは呼んでいた)と曲を出すまでになった経緯を面白悪びれて話してから、PVを流しながらのコラボとなった。
私もマッキー同様ラップを今ひとつ分かっていなかったけれど、彼はカッコイイね。きっとすごい技を使いこなしてたんだろうな。人間自体がすでにカッコイイ気もするけど。
マッキーはわりと歌の解説をするが、押しつける感がなく、謎のグッズCMを作ってしまうようなサービス精神で、面白く楽しく話すのでこちらも笑いながら素直に聞ける。
『親指を隠さずに』は友人から聞いたエピソードを元に書いた。
子どもの頃、自分たちは霊柩車を見れば親指を握りこんで隠した。私もそうだ。迷信を信じるつもりはないが、親の死に目に会えないと言われればなんとなく気味が悪い。
知人は火葬場に向かう車の中から、すれ違った親子が手を合わせてくれるのを見たそうだ。小さな子どものそれがとても尊い姿に思え、有り難かったと。
目に浮かぶ。
親指を隠す以外にできることがあった。
他愛ないことでも、価値は全然違う。

アンコールの最後に、大事に歌いたい、転機になった歌だと『世界に1つだけの花』のタイトルを口にした。
「ずっと歌っていくからね。
腰がこんななっても歌うからね。(エビ形ポーズ)
84になっても歌うからね。(少し前に80になっても歌うからねと言っていた。4年増えている)」

マッキーはいい奴だ。

私は、心の美しい人間になりたいと思った。

マンドラゴラの降る沼

2006-06-18 | 観劇
シティーボーイズミックスPRESENTS
作:細川徹・丸二祐亮・平元健太・シティボーイズ・中村有志・いとうせいこう
構成:いとうせいこう
演出:細川徹
出演:シティーボーイズ(大竹まこと・きたろう・斉木しげる)中村有志・いとうせいこう・銀粉蝶
Sun.14.May in シアター・ドアラマシティ

うっかり崖から落ちたが一瞬止まって助かる方法を相談する5人の男、一家殺人事件の捜査協力のために9年前の野外演劇のビデオを見せることになった男、酔った勢いで人間大砲をやると言ってしまった男、団地の謎のプレゼント男に怯える人々、原発の地元理解を得るために頑張る見当違いな男たち、生分かりの会話とは……不思議でおかしな愛しい親父たちのコント集。

あー笑った。笑った。
――と、感想を書けば一言で終わる。今こんなに一生懸命で滑稽で、可愛い親父たちは他にいないだろう。
意味はないのにおかしくて仕方ない。どこまでが脚本でどこまでがアドリブでハプニングなのか。インテリの匂いをベースに日常的で不自然でいい加減で、必死な人間模様。
イライラしている人々にマイナスイオンという名の二酸化炭素を振りまくガラ(ナイアガラ)、初日は1分ほどだったのに、どんどん長くなって声が出なくなるほど暴走してしまったネガティブ夫人、公演中にトイレから帰ってこない斉木しげるの時間を、野球ベース1つで必死につなぐ大竹まこと、毎回誰かが違うことを言うので相手のセリフまで覚えなきゃならなくて気が気じゃない。
いとうせいこう独特の間、シュール感も吹き飛ばし、最後にいたっては力技。それでも伏線が最大限に生かされた面白さになるのだから、やっぱ只者じゃない。
親父たちだけかと思えば銀粉蝶も、終演後は打って変わってロングヘアを肩にふっさりと広げ、黒いフレアードレスの綺麗だけど年よりも若い格好で、大竹まことに「この人おかしいんだ」と言われても平然と遠くを眺め、「銀粉蝶ってどこまでが苗字?」と誰もが1度は考えた疑問にも小首を傾げるだけ。なんて馴染んだゲストなのか。歌上手いし。えらい気持ち良さそうだったし。
そして楽日とはいえ昼の回で全力投球してしまった中村有志は、夜の回をちゃんと勤められたのか。ネガティブ夫人(どう見ても美輪明宏)はどこまで行ってしまったのか。
この面白さを伝えきれない自分の文章力を恨む。今年1番笑った日である。

The Rainbow Star ENDLICHERI☆ENDLICHERI

2006-06-15 | 音楽
Wed.3.May in 横浜みなとみらい特設会場

さて。
時間的・精神的余裕がなかったため、すっかり鮮度が落ちたネタである。
でも一応書いておく。

※先にお断わりをば。kinki kidsは好きで何枚かアルバムも持っていますが、ファンかと聞かれれば否と答えざる得ません。
故に視点が違う点、ご容赦を。
また、少々憎まれ口を叩いていますが、昨今ダメなところも可愛くみえるオバチャン化現象が起きているので、愛情表現と思ってやってくださいまし。

初ジャニーズだったので若いお嬢さんたちの熱気についていけるかしら、とドキドキしながら会場に入ったが、意外に落ち着いていた。うちわも売っていない。(ちょっと残念。振ってみたかった)アイドルのライブとは一線を画したものを作りたかったのだろう。
横浜まで来たってのに、なんだよ円形ステージじゃないのかよ、と不満に思いつつも、巨大な魚(エンドリケリ)をスクリーンに映し出すOPの演出など、派手でカッコいいリズムと共にテンションは上がる。
バンドメンバーが揃い、どうやらあれが堂本剛らしいという距離で、ロングスカートのような紫ラメの衣装を着たケリーさん登場。
しかしながらライブ前半、要領を得ない話しぶりと長いMCで冷える会場……ごめん、座っていい? おネエさん腰痛いの……心の中、悲壮な気持ちで呟く。幸い隣のお嬢さんもしんどかったらしく座ってくれたので、見えずとも座る勇気を得た。ありがとう…
歌詞を作った時のいきさつや想いなどを語るが、64?ステージあるんだから(追加30公演決定したようですね)もう少し何とかならないものか27才。
おかんネタが多く、ファンは慣れている風ではあったけれど、ジャニーズに入れたあなたは英断でした、といろんな意味で剛ママを尊敬した夜。
いつのまにやら前列の男性も消えて(タバコ吸いにいったかな…)どうなることやらと思ったが、中盤、会場とやりとりしながらのメンバー紹介がいい具合に会場を盛り上げた。マスコットキャラクター"SANKAKU"が紹介するので、彼を呼び出さなあかん、ということで会場から名前を呼ぶメンバーを指名。みんな事前に情報を仕込んでいるらしく、目立つ格好をしてきているようだ。
1人で語らせると頼りないが、会場いじりは上手いな。さすが人気アイドル。
ムーンガールとは呼ばれた彼女はどんな衣装だったのだろう。看護士さんたちに「お注射しましょうか~?」と言わせてギターの西川さんをクネクネにさせたり、小学校低学年くらいの男の子の元気な声で(「僕、52才!」だっけか)叫ばせたり、ほんわか楽しいコミュニケイトタイムで腰痛を忘れる。
この日は西川さんいじりにも興が乗ったようで、彼を大ウケさせた吉川晃司風「そんなきゃんじで(そんな感じで)」や「ちょころっと(ちょっと)」「ぷるっと(つるっと)」などのケリー用語が認定されたりし、ステージ上のバンドメンバーも楽しんでいた。
いやそれにしてもよく集めたよね。バンドの音、堂本剛プロデュースの映像演出、どちらもとても良かった。惜しむらくはケリーさんは滑舌が悪いので、ボーカルだけポルノグラフィティに変えたかった、ってトコか。←間違い。
驚いたのは下神さんの存在だ。名前が出てからようやく、そういえば聞き慣れたラッパの音だよ、と気づいたボケボケぶりだが。そりゃあ好きな音のはずだよねー。思わぬところで当時の自分がなぜ米米を好きだったのか、彼らの凄さがなんだったのか、その理由の1つを発見した気がする。
後半戦は会場も一体になっての振り付けもあり、非常に盛り上がった。一緒に歌ったり踊ったりっていうのはやはり楽しい。
剛くんが「nananaー」と歌って会場に振る。「nananaー!!」と会場が返す。「10代だけで~」「20代だけで~」と年代順に変化をつけていき、最後に「男だけで~」と歌えば、前述の男の子も含めた精鋭有志(3人くらい?)が叫ぶ。カッコイイぞ男ども!
そして大盛り上がりでアンコールの拍手は鳴り止まない……のを想像していたが、ラストの曲が終わった瞬間ダッシュで皆が出口に殺到。
「しゅ、終電?」と唖然としながらよく見ると、出口は左右に分かれている。パン販売の列だった。
SANKAKUを象った特別製のパンが売っているらしい。開演前、周辺に屋台1つ見つけられず、期待した特設会場内の軽食販売もなく『パンは売り切れました。特別に作ってもらっているので数に限りがあります』の手書き文字を「なんだよそれ。特別でなくていいから数用意しろよ」と唇を噛んで睨んだことを思い出す。唯一の飲食物だった自販機のお茶で空腹を誤魔化したというのに、ライブ中に焼き足したというのか…?(空腹は人を殺伐とさせる)
でもいいさ。パン買うために必死にならなかったから、バックステージへ去り際、剛が両手で恥ずかしげに投げキッスしたところを見逃さなかった。ちょっと得した気分だ。『堂本兄弟』(後日放送)でジローラモに教わったばかりだったのかな。
余談だが真っ白な強いライトを背に熱唱する曲があった。これが逆光で見えないわ目を射られて焦点に染みが残るわで歌を楽しむどころではない。他のコンサートでも経験したが、ステージ上から会場にライトを当てる演出は最近流行ってるのだろうか。できたらやめてほしい。

相田みつを美術館

2006-05-27 | 絵画
in 東京国際フォーラム 地下1階

ずっと行ってみたかった美術館第2弾。(第1弾は前述の朝倉彫塑館)
場所柄もあるのか、やたらめったら高級感のある美術館だ。
ちょうど「熱狂の日」音楽祭2006(LA FOLLE JOURNEE au JAPON)が開催中で、フォーラム内ではモーツァルトの生演奏で溢れていた。美術館入口前の吹き抜けのホールでもオケが演奏中。
場違いな場所に来てしまった……こんな所と知っていたらもちっとマシな服装をしてきたのに。そう、この日私は暑さのあまり持っていった着替ではなく、前日に用心のために買っておいたエンドリのツアーTシャツを着ていた。だからと言って入場拒否はされないが、レストランの店員は腰が高く感じが悪かった。関西からきたからそう思うのか?
美術館のスタッフは「ここはホテルですか?」というほどの上品さだ。館内の雰囲気に合わせているのだけれども、庶民的な相田みつをの作品を思うと若干不思議な気もした。落ち着いて鑑賞できる清涼さや、映像に工夫を凝らした遊びなど、様々な配慮の結果なのだろう。
企画展(「道」への道)の最中だったが、書画集などで知っている作品も多く展示されていた。本で見るのと、こうやって眺めるのとでも受ける感慨が違う。訴えかける強さと言うべきものだろうか。
心に自然に浮かんだ言葉を表現するために、何百枚もの紙を必要とする。筆のハネが少し違っただけでも、私たちが受ける印象は変わってくる。細心の注意を払って書かれたどこまでも正直な人間らしい心。
そうだなぁと得心する言葉、苦笑せざる得ないニュアンス、たくさんの言葉の中に、今必要とする言葉は必ず見つかる。

今回のmy favoriteは『初』 の1文字の書。
初めて向き合うもの。
初心。
まっさらな心。

朝倉彫塑館

2006-05-22 | 絵画
日暮里という駅に初めて降りた。
あ、なんか住めそう、というのが第一印象。
天気良かったしね。
天気いいと気分いいね。
北口を出て人々の後ろをついてしばらく歩くと見えてくる。
門柱と玄関の間に【雲】という石像作品がある。キント雲に猿のようにも見える人間たちが乗って叫んでいる。非常に勢いのある作品で、しばし立ち止まって眺めた。
彫刻作品は保存に気を使う絵画と違い、野ざらしにできるところがいいな。材質にもよるだろうし、これなんか石だから風化するんじゃないかとか思うんだけど。室内ではこいつらの勢いは収まりつかないのだろう。
1番の目的は代表作の【墓守】だったが、受付を過ぎて壁際に置かれていた彫塑の作り方のリーフレットを読んで(あとで受付に言えばもらえる)振り返ったらいきなり立っていた。
恭しく奥に仕舞いこまない配置と、代表作でまずお出迎えを、と言っているような彫塑館のスタッフの姿勢に好感を覚えた。
【墓守】はずっと見たかった作品。等身大よりもやや大きい。表面荒々しいようなタッチが、彼の穏やかさと生き生きとした存在感を与え、ドキリとするタイトルから陰鬱さを取り払って、長く人生を歩んだ1人の人間が私たちと対面する。
将棋を指しているところを眺めている姿だそうだが、物言わぬ彼に話を聞いてもらいたい、そんな気持ちになった。
同じフロアの展示として【仔猫の群れ】は飼い猫がたくさん産んだのだなと想像できて微笑ましく、退屈そうに伏せる大型犬を模写した【臥したるスター】は、特に正面から見るとまるでそこに本物がいるような、犬らしいなんとも言えないユーモラスさがある。
それから【若さの影】でよかったかな? 肩や手足の線が私の好みどストライクで、なめるように(失礼)眺めてしまった。ああ、これが十代の少年独特の無垢で純粋な美しさなのだと、もう1体の男性像(スポーツ選手らしい)との違いも含めて思った。首から下だけ部屋に飾らせてほしい。パンツははかせます。
彫塑館は朝倉文夫がこだわりぬいて建てた住居兼アトリエだ。縁側に出ると広い中庭いっぱいに湧き水をたたえた池と、儒教の教えを造形化した大小の石が配置されている。見上げた向かいの建物の窓も一般の家屋とはどこか違い、吹き抜けのようになったその空間はさながら静謐な別世界のようだ。
書斎の壁一面天井まで様々な洋書和書がぎっしりと並ぶ。植物の栽培に関する本、エジプトの建築様式に関する芸術書なども原書で収められていた。昔の人はすごい…。ここからサンルームを覗くとオレンジ色の東洋蘭が満開だった。
建物の内装を感心しながら順路を進むと、2階の端で明るい小部屋(元は東洋蘭の温室)に出る。猫の国だ。
普通では描かないような愛猫たちの姿がそこにはある。年を取ったり、病を得たりしたものすらも作品になった。それも猫がじっとしているわけはないので、一瞬の動き、表情をよくここまで生き生きと表現したものだと、ただただ感服するのみだ。【よく獲たり】はタイトルまで面白い。愛しい眼差し以外、何物でもあるまい。
芸術とは、一瞬を捉える観察眼と形にしようとする意欲、そして愉しみなのだろうと思う。それを実感できる美術館。
できれば人の少ない平日に、ゆっくりと過ごしたい。

一言二言三言

2006-05-15 | その他

 

 うふん