COZY ROOM

『家具通販ショップ COZY ROOM』のネコ社員たちのCozyな日々

今日は、ねこのお話 のつづき

2012-08-07 16:44:01 | やましたの気まぐれエッセイ~時々、更新。

今日は、ねこのお話 のつづき>

 

勇気を出して開けた「シャンゼリゼ通りへの扉」の向こう側には、誰もいなかった。

美容室のお兄さんもいなければ、お客さんもいない。

 

ご、ごめんくださぃぃ

 

2度ほど、そう言ってみると、奥の方からあの時のハンチング帽のお兄さんが出てきた。

 

あの、先日の、子猫の・・・。

と言うと、お兄さんはすぐに思い出してくれて

その後、子猫を探しにたずねてきた人はいないよと教えてくれた。

何か情報があったら連絡しますね。あ、そうだ。ちょっと待っててください。

と言って奥へ戻り、名刺を持ってきてくれた。

 

CASQUETTE

 

名刺にかかれていたお店の名前をみて、わたしは、はっとした。

お兄さんがかぶっていたのはハンチング帽ではなく、

「キャスケット」なる名前のおしゃれ帽子だったのか・・・。

わたしはまた、恥ずかしさで顔が赤くなった。

 

 

おまえさんはのらねこだったのかねぇ。

家に帰り、子猫に聞いてみる。

子猫は「うん、そうなの。」と答えるはずもなく、

人の話も聞かずに、ご機嫌で転がり回って遊んでいる。

その姿は、けしからんほどにかわいかった。

 

 

それまでのわたしは、14歳で天国へ旅立った先住猫のことを、

まるで昨日の出来事のように度々思い出していた。

ずいぶん長い月日を、そうして過ごしていたような気がする。

彼女はまだ、“おばあさん”と呼ぶのは失礼に思えてしまうくらい、毛艶もよくて若々しかった。

毎年の検診で心臓が弱っていると言われていたのだけれど、日常生活には支障がなく、

よく食べ、よく寝て、よく甘え、よくかわいがられ、それまでの14年間と同じ毎日を暮らしていた。

ある日、通称「香箱座り」と呼ばれる姿勢で朝から体勢を変えずに寝ていることに異変を感じて

病院に連れていってから約1週間後の夜、

彼女は今にも泣きだしそうな顔をしたわたしの腕の中で大きく伸びをしたあと、

爪でわたしの左腕にひと筋の傷をつけ、天国へと旅立っていった。

あの1週間のことは、今思い出しても胸がつぶれそうになる。

この子猫と同じ、お腹が白くてこげ茶色のキジトラの猫だった。

 

 

転がり回って遊んでいる子猫を抱っこして、

わたしはこの先、少なくとも20年は健康で生きていくという固い決意をし、

そして、子猫にプロポーズをした。

おまえさんを一生大切にします。だから、一生、一緒にいてください。

 

かくして、当時ひとり暮らしをしていたわたしの、子猫との2人生活が始まった。

子猫は、姪っ子に「空(そら)」という名前をつけてもらった。

 

美容室の前で空に出会ったのは、先住猫の命日から数えて

ちょうど1年と1ヶ月目の日の夕方だった。

そして、空と出会ったあの「シャンゼリゼ通りへの扉」のある美容室は

15年前に彼女を拾った公園のすぐ近く。

空は、心のどこかに胸がつぶれそうな想いを抱えていたわたしのところへ

彼女が遣わせた使者なのかもしれない、などと勝手な妄想を抱く。

 

数日後、動物病院で健康診断をしてもらったのだが、

そこで空は“お土産”もつけて遣わされてきていたことが判明した。

やました家へ15年ぶりに、男の子の猫がやってきたのである。

 

おしまい。

 

 腹の上で寝る。

 即席で用意した「トマトの箱のトイレ」を使用中

  びっくり顔のわんぱくボーイ

 

 大きくなりました。

<やました>

 

 

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今日は、ねこのお話

2012-08-02 18:47:58 | やましたの気まぐれエッセイ~時々、更新。

あれは夏の日の夕方。

わたしは待ち望んでいた本を本屋さんの「本日発売!」のコーナーから手に取り、

その他もろもろの興味が引かれる本を立ち読みし、

機嫌よく本屋を出て、スクーターに乗り家路についていた。

道路わきの最近できた新しい美容室が目に入り、

こじんまりとしているけれど、色づかいがシンプルでいい雰囲気だなぁ

パリにある小さなお店みたい、中はどんななんだろう・・・と思いをめぐらす。

 

1分後、わたしは少し遠慮がちに、その美容室のドアをあけていた。

 

すみません、あの、そこの大きな車は、こちらのお客様のでしょうか?

 

背の高い、えんじ色のハンチングをおしゃれにかぶった美容師のお兄さんと

鏡の前でストレートの長くてきれいな髪を整えてもらっているかわいい女の子が

こちらに振り向いた。

 

はい、そうですよ?

きょとんとした顔で、美容師のお兄さんが答える。

 

あ、あの、猫が、子猫が今、

車の下からボディの中の方へ入ってしまったのを見てしまいまして。

それで、危ないので、あの、お車のところからその子猫を外に出そうと思うのですが。

いいでしょうか・・・?

 

あぁぁ、自分、あやしさ満点。

こんなおしゃれな美容室に、ぜんっぜん、似つかわしくない。

いつものようにTシャツと短パン姿で友達の家に行こうと「どこでもドア」を開いたら

どういう訳か、ドアの向こう側はシャンゼリゼ通り、

街角のおしゃれなカフェで

カフェオレとクロワッサンと会話を楽しんでいるパリジェンヌたちと

自分の姿のギャップに顔が赤くなる。

そんな気分。

 

いいですよ。

鏡の前に座ったきれいなストレートヘアの女の子が、やさしく口を開く。

 

すみません、と、わたしは赤くなった顔をかくすようにして頭を下げて

ダッシュで車の方へと戻った。

 

子猫は、みゃーみゃーと、母猫を呼ぶときの発声で

大きな車のボディの内側から、大きな声でないていた。

 

しゃがんで車の下をのぞきこみ、

子猫ちゃん、こっちこっち、と声をかけるけれども、なかなか出てこない。

ちらっと姿を見せても、おびえて出てこない。

 

ごはん作戦だな。

数十メートル先のコンビニへ走っていって、缶詰のキャットフードを買ってきた。

レジで「スプーンをつけてください」と言ったら

店員さんにとっても変な目でみられたけれど、

さっき、突然シャンゼリゼ通りに迷い込んだ

「場違いなTシャツ短パン女」の気分を味わったわたしには、

もう怖いものはない。

今は、なりふり構わずに子猫救出大作戦を遂行するのみ。

 

子猫は、さんざんおびえながらも、数分後にはキャットフードにつられ、

無事に外へ出てきたのだった。

 

両手にすっぽりとおさまってしまうほどに小さいキジトラの子猫は、

ずいぶんガリガリに痩せていた。

飼い猫ではない毛並みだったけれど、念のために美容室のお兄さんに

このままあずかりますので、子猫を探している方がたずねてきたら連絡をください

と言って名刺を渡して、わたしは子猫をスクーターのカゴにそっと入れた。

 

時速5kmほどのスピードで、大丈夫だよ~怖くないよ~と

カゴの中の小さな猫に声をかけながらスクーターをのろのろと走らせるわたしは、

道路交通法に違反はしていなかったはずだけど、

完全に交通の流れを乱していた、と思う。

 

家につれて帰った子猫は、人間には全くなついていなくて、

すぐに物かげへ隠れてしまう。

それでも、仕事から帰ると、ごはんのお皿は空っぽになっているし

トイレもちゃんと使ってあるから、ま、大丈夫かなと思っていたけれど、

わたしの頭の中は常に、その子のことでいっぱいだった。

仕事をしていても、半分、うわの空な日が続いた。

3日目。

その子は、とがっていた表情が突然、まんまるになり、

ゴロゴロヘロヘロに甘えてくるようになった。

みゃおみゃおと高い声でなきながら顔のまわりにすり寄ってくるその様子に、

わたしもゴロゴロヘロヘロになった。

 

美容室のお兄さんからは、いっこうに連絡がなかった。

数日後、わたしは勇気を出してもう一度、あのシャンゼリゼ通りへの扉を開けてみることにした。

 

つづく。

<やました>

 

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