高知・コスタリカ友好交流を創って行く会

この会の趣旨目的は、平和学の調査研究。特に、国連平和大学のカリキュラム「ジェンダー&ピースビルディング」です

迫害と苦難に晒されている胎児

2009年10月06日 19時28分32秒 | 胎児の公民権運動
く一章 迫害と苦難に晒されている胎児

 私達は皆、かつては胎児だった。こんな当たり前の真理に気づかせてくれたのは、ある助産婦のシスターとの出逢いからだった。シスターの名前は、築沢由美。その詳しい経歴は、知らないが、社会活動の場にどんどん出席し、ありのままの真理を語るその言葉には、引き込まれるものがあった。マザーテレサ共労者会の末席にいた筆者は、彼女に関心を抱いた。筆者は、シスターから「命の大切さを考える」というセミナーに誘われた。そこで、初めて「沈黙の叫び」のビデオを見た。「沈黙の叫び」は、アメリカ社会に「胎児の公民権運動」をもたらした立役者となった。その映像が、マスコミを通してアメリカ全土に流されることによって、人々は、胎児が私達の社会の一員であり、私達と共に生きている隣人であることに気がついた。その小さく儚い命が殺害に晒されている。「沈黙の叫び」は、アメリカ人の心に、無抵抗で無防備な小さなの命の存在とその救命の必要性の自覚を呼び覚まし、アメリカ全土に良心の行動を呼び起こした映像なのである。その内容は、数多くの中絶手術を体験してきたユダヤ人の産科医が、中絶手術の実態をありのままに現したものである。女性のお腹の中の胎児は、我が身を殺そうとする医療器具から必死で逃れようとする。骨で形成された硬い頭は、器具ではさみ砕く必要がある。手足を引きちぎられ、頭を砕かれ、そうして、処理された血と肉の破片となった遺体は、吸引機で吸い取られる。産科医という存在が、生きた人間を生きたまま殺し、その遺体を処理する。その姿は、まるでジェノサイド(大量虐殺)を思い出させる。これが、私達の日本社会で、世界中で、毎日のように繰り返されている実態である。胎児は、自分で声を上げることが出来ない。「助けて!」と叫んでも、その声を聴く人がいない。そのような暗黒の殺人魔が取り囲む社会のもとで、彼らの命は命として存在したことすら認められないまま殺されて行っているのである。マザーテレサは、この状況を「胎児が虐殺の標的にされている」と表現した。

アメリカのある議員さんが、胎児の身になって、中絶手術の苦痛を味わった。今、世界中で繰り返されている中絶手術では、女性の痛みに対しての医学的処置は施されるが、胎児が味わっている激痛に対しての想像力が働いていないがために、胎児自身に麻酔処理が施されていない。この点に問題意識を抱き、せめてもの温情として、やむを得ない中絶手術に晒される胎児達には、その苦痛を和らげる医学的処置を義務付けるべきであるとの問題提起が胎児の公民権運動の展開するアメリカから世界に発信されたのである。これは、早急に日本でも世界各国でも立法化すべき内容ではないか。

 さて、このセミナーで初めて、筆者は、「プロライフ*9」と「プロチョイス*10」と呼ばれているグループがあることを学んだ。筆者は、中絶は、小さな無防備な無垢な命を抹殺する殺人に相当するとの考えを自然に持っていたので、自分は、プロライフ派であることを自覚した。後に、胎児の立場からこの問題を考えるようになって、なんて理不尽な目にあっているのだろうと悟るようになった。学習を深めることによって、胎児は、いわれのない罪で死刑執行にされされている冤罪被害者だと感じるようになった。死刑制度に反対する人達が、この正義のない状況に無関心でいられる心理が、どうしても理解できない。胎児の存在とそのか細い声に耳を傾け、その存在に思いを寄せることの出来ない社会の人々の無理解を識り、政府の不作為を強く感じるようになった。胎児にはその立場を弁護し代弁する者が必要であると思い至り、筆者の出来る範囲で弁護人を努めようと決意した。

 また、米社会は、日本社会と違い、出産医と中絶医とは完全に役割分担しており医院が別なのだそうだ。これも目から鱗の事実であった。日系アメリカ人の友人から、「日本人はよく平気でいられますね」と進言されて、日本での中絶率と障害児発生率との間に奇妙な連関が見られるとの指摘を思い出した。その背景には、誕生日をコントロールする目的で多用された、陣痛誘発剤や促進剤、子宮熟化剤などの影響の歴史があるに違いない。これらの薬によるコントロールは、中絶技術の発達とも密接に関連しており、中絶を手がける産科医が望まれた子ども達にも薬剤を適用することをためらわなかったことが原因ではないかと想像される。このような自然な出産が阻害された結果、母乳の分泌が阻害されている実態もあるようだ。このように、新生児の脳の発育保障にとって、重要な過ちが日本の産科医療体制にあることが伺える。


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