cnx ゑぶろぐ

著作権の切れた(笑)、やまとことば(またはカラフミ)で綴るゑぶろぐ。
ふみは、やまとことばで、あらまほしか。

ゑぶろぐ(建礼門院右京大夫集風)

2005-10-13 11:18:14 | ゑぶろぐ
またの年の春ぞ、國賣りの奴、未だこの世の内に聞きはてにし。そのほどのことは、まして何とかは言はむ。みなかねて思ひしことなれど、ただほれぼれとのみ覺ゆ。あまりに堰きやらぬ涙も、かつは見る人もつつましければ、何とか人も思ふらめど、「憂き國のわびしき」とて、引き被き寝くらしてのみぞ、心のままに泣き過ぐす。「いかで物をも忘れむ」と思へど、あやにくに醜き影は身に添ひ、言の葉ごとに聞く心地して、身をせめて、悲しきこと言ひ尽くすべき方なし。ただ限りある命にて、はかなくなど聞きしことをだにこそ、嬉しきことに言ひ思へ、これは何をか例(ためし)にせむと、かへすがへす覺えて

なべて奴のはかなきことをうれしとはかかる夢見ぬ人やいひけむ

註釈 國賣りの奴 売国奴の古語的表現。
   憂き國 憂国の念。