今回は、 集英社
連載開始30周年記念
ベルサイユのばら大事典 La Rose de Versailles
をテクストとして使わせていただきます。
集英社様、池田理代子プロダクション様、翻訳者Silvia HAUFE様、どうか、このテクストを使ってフランス語の学習をすることをお許し下さいませ。権利者の皆さまの権利を侵害する意志は、全くございません。
これをお読み下さった皆さま、ベルサイユのばら大事典 を是非是非ご購入くださいませ。既にお持ちの皆さま、この本の素晴らしさを、お友達の皆さまに大いにご宣伝くださいませ。
さて、1789年7月12日、オスカル・フランソワは、自室を訪れたアンドレ・グランディエに、しばしの沈黙の後、このように語りかけます。
① こん夜…
② ひと晩を おまえ…と…
③ おまえと……
いっしょに…
④ アンドレ・グランディエの
妻…に… (集英社文庫第4巻)
雰囲気をこわしている①②③④が邪魔ですが、これは、コマ割を表しています。
『ベルサイユのばら大事典』 声に出して読みたいベルばら Lesson10
では、このように翻訳されています。
①② Ce soir...je veux passer la nuit...avec toi...
( ス ソワール… ジュ ヴー パッセー ラ ニュイ アヴェック トワ)
③ Ensemble...avec toi...
(アンサンブル…アヴェック トワ…)
④ telle...la femme d'André Grandier.
(テル… ラ ファム ダンドレ グランディエ)
◇ Ce この
◇ soir 夕方、晩、(寝るまでの時間の)夜
◇ veux > vouloir ほしい、望む、~したい
◇ passer 過ごす
◇ la nuit 夜 (深夜、夜間)
◇ avec ~と カップルのことを、「アベック」って言ったりしますね。
もともとのフランス語の avec は前置詞または副詞で、「カップル」という
意味の名詞ではありません。ちなみに、「カップル」もフランス語です。
le couple : そういえば、「ル・クプル」というデュオがありましたね。
◇ toi 人称代名詞 te の強勢形 ◇
◇ ensemble 一緒に、共に 音楽やお洋服の「アンサンブル」は、これです。
◇ la femme 妻、女、一人前の女
◇ d' = de ~の
このテクストが、Kana版では、次のように翻訳されています。
① Ce soir...
(ス ソワール)
② J'aimerais passer...
( ジェムレ パッセー)
③ ...La nuit
(… ラ ニュイ)
Avec toi...
(アヴェック トワ…)
④ Je veux devenir ton épouse, André Grandier...
(ジュ ヴー ドゥヴニール トネプーズ、 アンドレ・グランディエ…)
◇ J'aimerais = je aimerais
aimerais は、動詞 aimer の条件法現在jeの活用
◇ devenir ~になる
◇ ton 所有形容詞 君の、おまえの
◇ épouse 妻、配偶者
同じ日本語を元にしたテクストで、同じ単語を使っているところもありますが、随分印象が違うように思われはないでしょうか。日本語でもそうですが、同じことを表現するのに、いろいろな言い方があるのは、フランス語でも同様です。しかし、言い方が違うが意味は全く一緒、というわけではなく、ニュアンスは異なっています。
『ベルサイユのばら大事典』(以下、『大事典』)版の翻訳とKana 版の翻訳が異なっているのは、権利関係の問題もあるのかもしれません。
しかし、日本語のテクストの解釈の違いでもあると言えます。
では、この2つのフランス語のテクストは、どんなニュアンスの違いを持っているのでしょうか?皆さまは、どう思われますか?
筆者のフランス語はまだまだ未熟なものですが、今現在の筆者の知識の範囲で読みとれる、このテクストの違いを、次回の記事にしたいと思います。…未熟者なので、読み間違っていたら、ごめんなさい。
過日、7月12日は「『アンドレ・グランディエの妻』を語る!!」 などという大それた目標を立ててしまいましたが、人生とは計画通りに行かないもの。今後は、あのような宣言はしないでおこうと、筆者は深く反省しております。
この日のうちに全てを語ることが不可能になってしまいましたので、今年の「3が日」は、テュイルリーもご命日もさしおいて、3日間、 『 アンドレ・グランディエの妻 』 について語りたいと思います。
ずいぶん遅い時間の更新となっておりますが、この時期、フランスと日本の時差は7時間です。そして、1789年7月12日、おそらくジャルジェ家の晩餐は夜8時頃始まり、10時前後に終了したのではないかと思われます。
筆者は、夏のフランスは7月末から8月中旬までしか知りませんが、この時期、フランスの日は長く、午後10時くらいまで明るかったように記憶しています。
オリジナル・テキスト(日本語)を見ますと、アンドレ・グランディエがオスカル・フランソワのお部屋を訪れた時、すでに外は暗くなっております。アンドレ・グランディエはジャルジェ家の家族の晩餐が終わった後、ばあやと一緒に食事をとり、片づけをし、それからオスカル・フランソワのお部屋に行ったと思われます。
時刻は、11時過ぎであったのではないでしょうか。今現在、筆者が必死に原稿を作っている時間帯と同じです。こんな時間にヴァイオリンを奏でて大丈夫なのかしら…、と思う筆者は全くもって、庶民です。
木の葉を揺らす風の音が聞こえ、虫の音も聞こえます。虫の音(ね)を愛でるのは日本人だけで、フランス人にとってはただの雑音に過ぎず、虫の声が聞こえていたとしても、オスカル・フランソワもアンドレ・グランディエも気にもとめなかったことでしょうが…
皆さま、よろしければ、2つのテクストをこの夜の静寂の中で、声に出してお読みになってみて下さいませ。
「音の響き」の面では、皆さまは、どちらのテクストがお好みですか?
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