茂木のシネマテーク通信

シネマテークたかさき総支配人・茂木正男のブログ

ちょいお待ち下さい。

2007-06-28 21:37:21 | Weblog
ここにおいで下さっているみなさん、本当にごめんなさい。
約3ヶ月もほっぽらかしにしてしまって、更新せずにすみませんでした。
シネマテークたかさきのHPの一角をほうっておいたことのお詫びをいたします。
劇場の責任者としても多いに反省をしております。
これから、このコーナーをどうして行ったらいいのか、高崎映画祭の茂木事務局日誌との関連も
含めて早急に整理します。
ホームページをご覧になって、劇場に足を運んで頂いているみなさんの少しでも役に立つような
内容を考えてまいります。
どのようにするかは、まとまり次第にお知らせいたします。
茂木正男

イングマール・ベルイマン最新作

2007-03-11 09:06:02 | Weblog
イングマール・ベルイマンの最新作
かれこれ30年以上前の話しなんて、したくはなかったけどシネマテークたかさきで『サラバンド』の上映がはじまって思い出すことがいくつか出て来た。
俺たちが自主上映とか自主制作とかいう(なつかしいことばです)ことで、「グループ夢」で映画製作や上映始めたのがかれこれ30年以上前だからそのころのことになる。当時、都内で「カトルド・シネマ」という自主上映の団体が神田や新宿周辺の文化ホールで上映していたのがベルイマンの映画だった。『冬の光』『魔術師』『鏡の中に在るごとく』『処女の泉』『沈黙』『ペルソナ』などを群馬から観に行った。400~500人ほど入れるパイプ椅子がほぼ満席で、学生や若いサラリーマンにまじって観ていた。いつか高崎でも、このような雰囲気で上映会ができたらと密かに思っていた。
その後『処女の泉』を「見たい映画を観る会」で上映したとき、おじさんが観に来ていて、途中退場していった。「よくわかんねえ」みたいな言葉を投げ捨てながら、、、。タイトルで観に来ていたらしい。
ベルイマンは、その後映画製作を辞め、舞台監督をつとめ、高齢のため現場からはなれたという噂がながれたが『サラバンド』の発表になった。うれしいことである。
茂木にとって、ベルイマンは映画に関わって行こうと決めた映画と映画監督の大切なひとりである。
スウェーデンの文化とキリスト教、それ以前の自然信仰などなどがあの薄暗い画面から伝わって来ていた。いや北欧とはベルイマンのように感じていたこともあった。改めて彼の作品を観てみたいと想う。

山形国際ドキュメンタリー映画祭とプレ映画祭

2007-02-02 23:57:18 | Weblog
いよいよ来週の木曜・金曜とたったの二日間だけど、近年の山形で話題となってドキュメンタリー映画の現在を端的にあらわした6作品がひっそりと、ほんとにひっそりと上映される。映画祭の志尾ディレクター・山形の宮沢事務局長の選定のもと選ばれきった作品である。昨年あたりからヨーロッパを中心にドキュメンタリー映画がブームとなっているらしい。このブームということばに危うさを感じるのは茂木だけじゃなすと思う。韓流ブームなどといわれていた韓国映画も一時のブレイクも嘘のようになった今ブームなんてくそくらえと思う茂木でもある。横道にそれたけど、ドキュメンタリー映画が脚光を浴びる事に批判的な発言をしたい訳じゃなく、世界がキナ臭くなっているいまドキュメントの力で消化作用に一役は果たしたい気持もなくはないが、、、。とまれ。すくなくとも今回の6作品は、鋭利に研ぎすまされて弓矢として放たれようとしている、高崎の地で、、、。放たれた矢が痛いほど刺さり重傷を感じる人、矢が体を通り抜けて何事もなく日常に埋没し朽ち果てていく人、ドキュメンタリー映画ってそんなもんじゃないんかい。死なないんなら矢に当たった方が生きてるって実感が味わえると思うんですけど、、、。
俺たちは、そんな選択肢を提供できたことをよしと思っている。いまは。

新年おめでとうございます。

2007-01-03 11:13:23 | Weblog
シネマテークたかさきも3年目の新春を迎えています。
今年も、私たちが上映したい映画とお客様に届けたい映画をキチンと用意してまいります。そして一年を通して映画が毎日の生活のなかで時に元気と勇気を、ときに立ち止まって振り返えり、悲しみのなかでは支えられるなにかであれたらと考えています。
2007年メンバーズ会員募集も始まり1ヶ月が過ぎました。2月末までのお申し込み期間です。シネマテークたかさきで映画をより楽しくお得にご覧頂くための会員制度です。皆様のお申し込みをお待ちしております。
今週末からようやく『時をかける少女』がスタートします。昨年公開されたアニメのなかでは抜群の出来映えでしょう。

『太陽』への長い道のり

2006-12-19 20:40:27 | Weblog
終戦間際の昭和天皇を描いて世界中から注目を集めて、日本国内では上映不可能とまでいわれた作品、アレクサンドル・ソクーロフ監督の『太陽』がまもなく当劇場ではじまる。30才以上の日本人なら知らない人はいないだろう昭和天皇をイッセー尾形が名演技し、皇后を桃井かほりが熱演したことも話題となり、東京での公開は異例の大ヒットとなった。ただしこの作品はドキュメンタリー映画ではなく、あくまでソクーロフ監督が脚本監督した劇映画である。今こうしてこの映画が公開されるまでには、想像もつかない時間と準備がなされていたのである。詳しくは、『太陽』のシネマテークたかさき特製チラシをご覧下さい。
後日談ではあるが、ソクーロフは密かに昭和天皇への独占インタビューを試み続けて来たらしい。残念ながらその願いは果たされなかったが作品の出来映えをみていただければお解りになるように、昭和天皇を通して昭和という時代を描こうとしている節のあるソクーロフの意図は果たされたものと思った。ソクーロフが昭和天皇を、イーストウッドが硫黄島の激戦を描くという二人の外国人監督によるあの戦争をいま私たちは幸運にも映画によって見詰め直すことができる。それでもなお、このようなテーマの作品を日本人監督が描いたら果たして、、、、と思ってしまうのだが。

2周年記念オールナイトと日本以外全部沈没

2006-12-03 12:25:15 | Weblog
祭りの後の静けさは、、、なんて歌が有りましたがオールナイト上映会あけのシネマテークは不思議な静けさに包まれていてうちの劇場じゃないような気分になってる。日曜の11時~『日本以外全部沈没』は、映写のm君以外は全部入れ替えスタッフで臨んでいる。シネマテークたかさきがオープンしてからずっと、オールナイトをいつかやろうねと言ってた事が実現した。ファンタスティックオールナイトと銘打って始めてから10年以上の時間が流れている。時も場所もスタッフも入れ替わっていき、それでも続けられることはなんて幸せなことなんだろうと思う。昨晩は日にちをまたがずに先にあがってしまって元気のいい若いスタッフが運営してくれた。みんな、ゆっくり休んでくれ。また機会いやよい企画が持ち上がったらやってみたい。今度は、最後まで参加してスタッフオフ会に混ざりたい。
『日本以外全部沈没』が、すばらしいスタートを切った。常連のお客様にまざってシネマテークたかさきに初めておいでいただいたのだろうなというお客様が多い。いまの日本社会の閉塞状態や外交交渉の貧弱さにほとほと嫌気がさした人々には、なんとも溜飲が下がる映画だろうか、、、。ブラックユーモアとは違った形で大笑いしながら観てしまった。

日本農業の未来を考えてしまう。

2006-11-28 18:46:15 | Weblog
『恋するトマト』静かにブームを起こしている。
スタートして三日、期待をこえて健闘いやヒットとよんでいいだろう。ご覧になったお客様は異口同音に高い評価を出して頂いている。それほどに、大地康雄の意気込みと作り手の力が伝わってくる映画なのだ。しかし、この日本農業の現実と農家の嫁不足という暗くて通り過ぎたいテーマで、観客を呼び込む力がいまのシネマテークたかさきにあるかといえば疑問であった。いまでもお客様の入りに驚きを隠せない。つまり劇場側の思いを超えて、お客様の感性が映画の善し悪しを見抜く力を獲得しているとしか判断できない、いまの茂木がいる。
日本農業の自給率が40パーセントを切っていることは、はるか前から問題になっていた。跡継ぎがいない、飢饉が起きたら、アジアに紛争がおきたら、外交交渉の決裂から輸入が閉ざされたら、、、様々に危機感は叫ばれて来ているはずなのに、消費者としての俺たちは、どこか「なんとかなるだろう、お金さえあればなんとかなるだろう」たかをくくってきた。農家の次男坊が会社勤めしながら親父の田畑を耕す姿は、いまや当たり前にさえなっている。そんな半農半勤(こんないいかたちがうよね)に、国は支援して来た。つまり、言葉は悪いが「本気で農業を支えていこう」と考えている農家と半分の気持の農家とを一緒に扱って来てこのざまである。映画は、こうした現実の中で未来への展望を必死でもがき苦しんでいる主人公の魂の叫びを渾身の思いで描いている。まさに力作である。
『恋するトマト』から学ぶべきことは多い。いま、劇場とお客様の距離をどう保つのか考えてしまう。離れてもいけない、近づきすぎてもいけない、ときにぶれながらも方向性だけはぶれずにいきたいものである。

『美しい人』とロバート・アルトマンとシシー・スペイセク

2006-11-24 13:43:50 | Weblog

2週間前の早朝に『スクラップ・ヘブン』をWOWWOWで観てしまって、勢いでその次の映画も続けて観た。『三人の女』ロバート・アルトマン監督でシシー・スペイセク主演、あまりの懐かしさとスペイセクが若かったよなあーと苦笑いしながら観てた。あの頃、高崎映画祭が始まったばかりで上映した覚えがある。で、三人の女遊びをしばらくしてた。ロングスカートをはいて車を運転するとフレアーの部分がドアーの外にはみだしてしまうことがある。当時、街中で同様にドアーの外にスカートを出して運転している車をみると『三人の女』だよなあーとか、今日どこどこで三人の女を見たよと言い合った。うあーなつかしいはなし。
そんなシシー・スペイセクが中年のおばちゃんになって『美しい人』の一人になって登場している。個性的で演技の確かさは一貫していていて、これからも永く女優としての活躍を期待している。
ハリウッドの作家主義監督としての地位を確立していたロバート・アルトマンが亡くなった。遺作がこれから公開されると聞いている。ということは突然の死なんだろうか、それとも病気を押して撮影していたのだろうか、いずれにしても冥福を祈りたい。



美しい人の9話

2006-11-21 22:48:37 | Weblog
『美しい人』9lives
みなさんは、この映画をご覧になりましたか、、、。まだでしたら是非ともご覧下さい。どうしても9話ラストの映像を!
当然映画は1話からスタートしていきます。そしていよいよ9話にはいります。「なんか他のパートとは違うよなあー」と感じながら映画は進んでゆく。母親をグレン・クローズその娘をあのダコタ・ファニング。二人は緑の中ひろびろとした墓地を歩いていく。お母さんと娘にしては年が離れすぎている。そして会話も微妙にずれている。これ以上話すとネタばれしそうなのでやめたいが、、、。美しい映像といえばこの映画の中で一番だろう。やがて見ている観客は母親の一言にこの女性の諦観のようなつぶやきを聞く事になる。「すべては過ぎ行くこと、時とともにすべては行き過ぎていくもの」と。これ以上の説明は差し控えねばならないだろう。私たちは、映画史上稀に見る美しく例えようの無い喪失感を味わう事だろう。私たちの人生には常にこうした自らの意思と遥かに離れたところで別の決めごとがあることを認めざるをえないからだ。悲しくとも人はそのように定められているところがある。それでも私たちの人生は美しいと言わなければならないのだろう。いや、美しいのだろうと。

父の想い出と『胡同のひまわり』

2006-10-17 16:23:49 | Weblog
私事になりますが、お許しください。茂木の父親は、数年前に最終的に肺炎で亡くなった。吉井町に生まれ、鍛冶屋の次男坊として生まれ大酒飲みの父親の姿をみて、金輪際酒飲みにはならないと子供の頃決めていたらしい。それが、自分の長男が大のビール好きになるとは世の習いである。母と結婚し町内の長屋に移り住み鍛冶屋を始めた。コークス・ふいご・粘土取りなど物心つく頃から親父の仕事場で遊び、競馬に温泉、アコーディオンに西部劇とくに魚取りはカジカやなまず、ドジョウにフナ釣りアユ釣りといろいろ連れて行ってもらっている。母親の口癖は、「仕事も遊びぐらい本気でしてくれたら、もう少しお金も残ったのに、、、」だった。なんだか、親父と同じようなことをしている自分がいる。晩年は、口数も少なくても我が儘なところが多くて、80歳過ぎたある日よびだされ「かあちゃんとやっていけない、離婚したい」と言い出した男である。とまれ。『花よりもなほ』の主人公が父親との想い出を探し出すように、最近は茂木も父親との記憶を辿ることがときどきある。我が儘のいい放題であるとき、ドライブに連れて行ったとき本気で山に捨ててこようとしたことを思い出す。(ちょいまじで)それでも、井戸掘りの手順や井戸の出る場所の探り方、粘土のある場所、溶接のポイントなど聞いておけば良かったと後悔している。
『胡同のひまわり』は、文化大革命に翻弄され画家としての将来を踏みにじられ、その夢を我が子に託したい父親の物語である。しかし、茂木と同じで息子は父親の言うことをきかない。決して甘くない人生のなかで一人の男として時代に流されず生き抜く父親に、戦後を家族を守り働きと押した日本の父親像とだぶらせて観た。深い余韻に浸る映画である。