グー版・迷子の古事記

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アマテラスのお食事②ウケモチ

2013年10月24日 | 古事記
前回、アマテラスのお食事で穀物神・食物神は古代において月神であった可能性が明らかになりました。
そこで、今回から穀物神・食物神について考えてみます。
まずはその名前から、一番食物神としての性格を表しているウケモチ(保食神)について考えてみましょう

  《ウケモチ》

天照大神は月夜見尊に、葦原中国にいる保食神という神を見てくるよう命じた。月夜見尊が保食神の所へ行くと、保食神は、陸を向いて口から米飯を吐き出し、海を向いて口から魚を吐き出し、山を向いて口から獣を吐き出し、それらで月夜見尊をもてなした。月夜見尊は「吐き出したものを食べさせるとは汚らわしい」と怒り、保食神を斬ってしまった。それを聞いた天照大神は怒り、もう月夜見尊とは会いたくないと言った。それで太陽と月は昼と夜とに別れて出るようになったのである。
天照大神が保食神の所に天人(アメノクマヒト)を遣すと、保食神は死んでいた。保食神の屍体の頭から牛馬、額から粟、眉から蚕、目から稗、腹から稲、陰部から麦・大豆・小豆が生まれた。人がこれらを全て持ち帰ると、天照大神は喜び、民が生きてゆくために必要な食物だとしてこれらを田畑の種とした。
(ウィキペディア)

ウケモチ(保食神)は古事記には登場しません。
日本書紀の一書において、ツクヨミとウケモチの話として登場します。
古事記においては、似たような神話がスサノヲとオオゲツヒメの話として登場します。

月とウケモチ(保食神)の関連性は、上の説明の赤文字から見えてきます。
まずその前の予備知識として…

①「マ」と言う音は、弥生時代以降、満月以外の月とその形を表している。

②月は縄文時代とそれ以前に、「月(キ)」と一音で表現されていた。

〔①②共に、月(キ)と日(ヒ)と魔(マ)と神(カ)を参照下さい〕

①②の事を頭に入れて置いてください

まず赤文字の所から説明してみましょう。

「天照大神が保食神の所に天人(アメノクマヒト)を遣すと、保食神は死んでいた。」
アマテラスがウケモチの所にアメノクマヒトを遣わします。

クマ = (ク)(マ)
(ク)…木が生い茂る森に住んでいるため「木(キ)」の変化形「木(ク)」、或いは「月(キ)」の変化形「月(ク)」。古代において「キ」の音は後ろに音が続くと「ク」に変化します。
(マ)…満月以外の欠けた月とその形を表します。

日本に生息するクマ(熊)のほとんどは、ツキノワグマです。
ツキノワグマには首の所に白い三日月の模様があります。
また、北海道など一部に生息するヒグマは「日熊」とも取れる事から考えると、この神話に出てくる「クマ(熊)」は神様の使いと考えられます。

人(アメノクマヒト)は月神様の使いのクマ(ツキノワグマ)なのか…
或いはアマテラス(日神)である事を考えると、ヒグマなのか?
ヒグマはクマ(熊)が命名された後、日本北部に生息するクマ(熊)を見つけて名付けた物だろうと考えると…
人(アメノクマヒト)は月神様の使いの様な気がします。
いずれにしろ、古事記では荒ぶる神として登場するクマ(熊)ですが、元々は神様の使いだった事が窺われます。
古事記でアマテラスの皇孫一行の前に祟る荒ぶる神として登場する事を考えても、やはり月神様の使いなのかな

保食神の屍体の頭から牛馬、額から粟、眉から蚕、目から稗、腹から稲、陰部から麦・大豆・小豆が生まれた。

ウシ(牛)…これに関しては月との関連性は良く分かりません。

ウマ(馬) = (ウ)(マ)
(ウ)…首。内部が空洞になっている物を表すと思います。
  (例)
  鵜(ウ)=首の長い鳥。
  空木(ウツギ)=内部が空洞の木。
  空ろ・虚ろ(ウツロ)=中身が空な様。
(マ)…満月以外の欠けた月とその形を表します。

ウマ(馬)には、額に欠けた月の様な白い模様を持つ物があります。

アハ(粟)…これに関しては月との関連性は良く分かりません。

眉(マユ)から蚕…蚕は繭(マユ)になります。そしてこの蚕の繭の色は白く形は月の形とも似ています。
マユ = (マ)(ユ)
(マ)…満月以外の欠けた月とその形を表します。
(ユ)…曲がる事、曲がっている形を表している様な気がします。月の形を表す言葉としても使われます。
  (例)
  弓月(ユヅキ)=弓の形をした月です。
  指(ユビ)=(ヒ)は樋(ヒ)・首(クビ)など細長い形だと思います。

ヒエ(稗)…これに関してはつきとの関連性は良く分かりません。

稲…食用とする部分はコメ(米)です。コメ(米)は小さな白い粒です。小さな月の様にも見えます。
コメ = (コ)(メ)
(コ)…(キ)の音は(コ)にも変化します。月(キ)→月(コ)なのかな?
  (例)
  木霊(コダマ)、梢(コズエ)、木立(コダチ)。
(メ)…芽(メ)或いは目(メ)ではないでしょうか。

ムギ(麦)…(ギ)は月(キ)の様な気もしますが、良く分かりません。

大豆・小豆…マメ(豆)の形は月の形にも似ています。
マメ = (マ)(メ)
(マ)…満月以外の欠けた月とその形を表します。
(メ)…芽(メ)或いは目(メ)ではないでしょうか。

私の考えうる範囲で、ウケモチから生まれる牛馬・穀物と月との関連性を書き出してみました。
ウケモチから産まれるほとんどの食物で、関連性を見つける事が出来るかもしれません

  《ウケモチの名前》

ウケモチ(保食神)の名前について考えて見ましょう
まずは、アマテラスの食事を受け持つと言う事から、ウケモチ(受け持ち)と言う事が考えられます。
また現在一般的には、ウケモチ(保食神)の「ウケ」は食事と考えられている様な気がします。
この様に考えると…
ウケモチ(保食神)の「モチ」に相当する部分は「保」と言う事になります。
そうなると、「保食」は漢語的な記述と言えるかも知れません。

日本書紀には漢語的な記述が多いため、これが問題だとは思いません。
ただ他の穀物神・食物神にも名前に「ウケ」と名前の付く神様がいます。
また現在、「ウケ」が食事と考えられているのも、確信的な事ではない様な気がします。

「ウケ」について考えてみる必要はありそうです
とりあえず現在に残っている食べ物としての「ウケ」には…
「お茶請け」がありますね
一応食べる物ですけど…
「お茶請け」の「ウケ」は、食べ物とは少し意味が違うような…
だからと言って何かは、良く分かりません

では見方を変えて、ウケモチ(保食神)を漢語的に読むのではなく、素直に日本語的に読んで見ましょう。

「ウケ」は「保」となります。
「保」…保つ。請け負う。
「保」にも「受け持つ」と言う様な意味はあります。
問題無さそうですね

では「モチ」は?
「餅(モチ)」の事では無いでしょうか?

「餅(モチ)」は白い球体です。
「餅(モチ)」は月の色と形にも重なってきます
そして月を表現する言葉としても使われます。

モチヅキ(望月)

モチヅキ(望月)は満月を表します。
アマテラスが月を食べるなら、満月ならお腹いっぱい食べられてさぞ満足でしょう

時代が流れるに従って、もしかしたら「ウケ」は「食事」の意味になったかもしれませんが、
ウケモチ(保食神)に関して言えば…
「ウケ」は「受け持つ」の意味で捉えたほうが良いように感じます

  《ウケモチとウカノミタマ》

「餅(モチ)」はまた、ウケモチとウカノミタマを繋ぐキーワードとなります。

稲荷神(ウカノミタマ)を祭るに至る経緯が次の文章です。

和銅年間(708 - 715年)(一説に和銅4年(711年)2月7日)に、伊侶巨秦公(いろこのはたのきみ)が勅命を受けて伊奈利山(稲荷山)の三つの峯にそれぞれの神を祀ったことに始まる。秦氏にゆかり深い神社である。和銅以降秦氏が禰宜・祝として奉仕したが、吉田兼倶の『延喜式神名帳頭註』所引の『山城国風土記』逸文には秦氏が稲荷神を祀ることになった経緯が以下のように記されている。
秦中家忌寸(はたのなかつへのいみき)達の先祖である伊侶巨秦公は稲を多く持ち富裕であったが、稲を舂いて作ったを的にすると、そのが白鳥となって稲荷山に飛翔して子を産み社となった。伊侶巨秦公の子孫は先祖の過ちを認め、その社の木を抜いて家に植え寿命長久を祈った。
(ウィキペディア)

ウカノミタマが月神様である事を考えると、「餅(モチ)」もまた月神様を表している事が分かります

今回の記事全体から考えても…
ウケモチ(保食神)もまた、月神様であると言って良さそうですね

思ったより長くなりました
つづく


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