ようこそ劇場へ! Welcome to the Theatre!

熟年オジサンの映画・観劇・読書の感想です。タイトルは『イヴの総て』のミュージカル化『アプローズ』の中の挿入歌です。

WALL・E (ウォーリー)

2008-06-29 | 映画
今回のピクサー・アニメの新作もまた、大人の鑑賞に堪えうる大人向き作品である。
地球をゴミの山に荒廃させて、宇宙へ逃げ去った人間に代わり、その後700年にわたって、たった一人(?)で廃棄物を押し固めたブロックを造り、モニュメントのように積み重ねている、R2-D2(スター・ウォーズ)みたいに愛嬌のある地球型ロボット(Waste Allocation Load Lifter Earth-Class)が、主人公の『WALL・E(ウォーリー)』だ。

オープニングから、身勝手な人間のゴミ処理のために健気に働くウォーリーの姿が感動的だ。人間が残していったゴミの数々が、小道具として登場し巧く使われている。
ウォーリーの楽しみは、ミュージカル『ハロー・ドリー!』の映像を観ることで、挿入歌が2曲使われている。さらにサッチモの英語版”La Vie en Rose”も流れて、雰囲気を盛り上げている。

ある日、宇宙船が現れ、高性能の一体のロボットが登場する。ロボットの名前はEVE(イヴ)。彼女の使命は、草木も生えず、廃土と化した地球の情報収集である(Extraterrestrial Vegetation Evaluator)。
ウォーリーはイヴに恋してしまうが、目的の物を収集したイヴは、迎えの宇宙船で帰ってしまい…。

ここまでの前半は全くセリフがない。あるのはロボットの”ピポパポ”の機械音だけ。これは『2001年宇宙の旅』の前半に似ていて、あの「ツアラストラかく語りき」も実際に流れて来て、偉大なSF映画へのオマージュとなっている。『WALL・E』は、2001年の70年後のお話かもしれない。
さらには、ここまで読んでお気づきのように、『風の谷のナウシカ』との明らかな共通点も見受けられる。
ナウシカに寄り添うのはキツネリスだったが、ウォーリーに付きまとうのは、何と嫌われ者の・・・・だ。

地球から人間の避難先の宇宙基地へ舞台が移って、やっと人間のセリフが出て来る。ここで人間がどういう風に生活しているのかは、アメリカ人への痛烈なアイロニーが含まれているとだけ言っておこう。
『WALL・E(ウォーリー)』は文明批評と、ロボット同士の恋が共存した、感動的なSFラブストリーである。


最新の画像もっと見る