「ホテルを変えよう」ということになった。 今の寝床である「HANOI HAPPY HOTEL」に不満などはなく、スタッフもフレンドリーで部屋も清潔かつ広くてむしろその名前に偽りなしのハッピーな気分にさせてくれる非常に好ましいホテルだったが、ハノイ市街地にはリーズナブルでよさげなホテルが多いことから、どうしても他のホテルも試してみたくなってくる。 そんな中、街中を散歩しているときに見つけたのが「GIA BAO GRAND HOTEL」という名のホテル。「HANOI HAPPY HOTEL」と同規模のこぢんまりとしたホテルで、外からエントランスを覗いてみた限りではとってもいい雰囲気。「間違いなくここは良いホテル」と確信するものがあり、居ても立ってもいられなくなってしまった。早速、部屋に戻って愛用のノートPCを開き、「Agoda」で検索をかけたところ、折良く広くて眺望のいい部屋が手ごろ寝値段で空いているではねえか。ということで迷うことなく予約、めでたく引っ越しと相成ったのだった。 VIPルームにしてもらったせいか、想像していたよりもかなり広い。部屋のレイアウトや装飾もモダンで、アジア圏のホテルというよりは、ヨーロッパのホテルといった雰囲気。 バスタブもある。が、蛇口から熱い湯が出るのはホンの数分。バスタブに10cmも湯を張れればいいほう。あとはぬるい湯で薄めつつだましだまし入浴しなくてはならない。これは「HANOI HAPPY HOTEL」でも、後に泊まるホイアンのリゾートホテルでも同様だった。日本でも少し前によくあった貯湯式の給湯システムがこちらでは未だ主流であり、貯湯タンクの容量が小さいせいか、他の宿泊者と同じタイミングで入浴しようとすると実にあっけなく湯切れを起こす。日系のホテルならこうしたことはないんだろうけど。 「HANOI HAPPY HOTEL」同様、大型液晶テレビを装備。ケーブルChが充実しているので、アジアカップ観戦に関しては問題なさそう。実は俺にとってもっとも大事な条件だったりする。 目の前にはなにやら歴史ある公庁風の建物が。改描のようなものが入っているのか、東西冷戦時における米国・トノパーの如く、WEB上の地図サービスで調べてみてもこの番地はブランクとなっており、これだけ立派な施設にもかかわらず名称などに関しても一切の記載がない。WEBを渉猟してみても英語による資料などは皆無で、かろうじてベトナム語による資料、というか個人のブログにごくごく簡単な記載を見つけることができた程度。それによればこの建物、灌漑をはじめとする水資源活用事業のセントラルオフィスらしい。簡単に言えば“水資源庁”といったところか。肥沃な耕地と豊富な水資源に恵まれるベトナムならではの国家戦略拠点だと言える。今や水資源確保と活用はあらゆる国家の最重要課題。実際、近年になって「水資源庁」を設立しはじめた国も少なくはない。 レセプションの女性スタッフもフレンドリーで親切。漆黒の艶やかな黒髪を日本人形のように綺麗に切り揃えたに笑顔の素敵な女性で、おめでたいことに近々母親になるとのこと。宿泊手続きを行っている間は、スタッフがフルーツのミックスジュースを出してくれる。これは「HANOI HAPPY HOTEL」も同様。古き良き日本の旅館に通ずる心のこもったサービスが嬉しい。 部屋からはそれまで寝床にしていた「HANOI HAPPY HOTEL」も見える。実は双方のホテルは距離にして50m程度。引っ越しなんて一瞬で終わってしまうのだ。 さて、今回のエントリーの本題は、タイトル通り、「引っ越し」ではなく、「カレー」である。 日本を発つ前に、ハノイでカレーが喰える店を検索してみたところ、『Tandoor』『India Palace』『Khazana』という3つのインド料理店があることが判明した。中でも気になったのが『Khazana』。 なぜなら横浜のクイーンズスクエア内に同名の店があり、そこで喰ったサグチキンカレーがかなり美味かったことで、以来、『Khazana』という名前は「美味いインド料理店」として俺のウコン色の脳みそにインプットされていたから。ならばここハノイでも『Khazana』をチョイスするべきであろう。ということで、ホテルの引っ越しを終え、荷物を置くとすぐに街へ。もちろん目指すはその『Khazana』だ。 1時間ほど散迷いながら『Khazana』到着。パッと見、閉店しているようにも見えたが、店の前でうろうろしているおじさんに「ここやってる?」と訊くと、「やってるから奥に入れ」と言う。真っ暗な店内を突っ切り、さらにその奥にあったドアを開けると薄暗い照明が灯されており、数組の先客の姿が。なんとかカレーにありつけそうで一安心。 頼んだのはターリー。カレーはマトンとチキン、ダールをチョイス。これにヨーグルトベースの甘いカレー、そしてライタが付く。そんでもっていつも通り、ここでもナンは外してライスのみにしてもらった。ベトナムは米の国。もっちり香ばしくマトンカレーと好相性のナンなんて喰えるかってえのだ。 味の方だが、一言で言うと「すんごく美味い」。 よりインドに近い立地のせいだろうか、日本で食べるインドカレーよりもスパイスの使い方に遠慮がなく、刺激と風味がピリリと立っている。マトンカレーなどはシナモンがかなり強めに効いており、それがどことなく駄菓子屋チックでやたらと美味い。ライスは乳白色の美しいバスマティ米。これに複数のカレーとライタをかけ、適度にかき混ぜながら喰うともう至福。日本で喰うインドカレーとはかなり異なるビシバシとスパイスの刺激が口中を駆けめぐる“本場感”の強いカレーで、間違いなくこれまで喰ったインドカレーの中で三指に入る味だ。 嬉しいことにメニューの中にはドーサもあった。これは喰わねばいられねえ、ということで、マサラドーサをオーダー。ラッサムとコリアンダーのチャトニが付いてくる。生地がしっかりとしたドーサで、酸味爽やかなラッサムに浸して喰うと実に美味い。そのラッサムだが、カスリメティが香しく効いており、なおかつトマトやタマリンドの酸味が気持ち抑えめでかなり好みの味である。ドーサの中身はマスタードシードと共にマッシュされたスパイシーなポテト。そう、炭水化物の塊であるのだが、これが病みつきになるほどに美味いのだ。そういや、家の近所のインド食材店にドーサパウダーが売ってたっけな。帰国したら買って作ってみよう。 一般的なベトナム料理と比べかなり高い店であることと、夕刻近い時間帯ということで、我々を含めて店内には3組しかいない。会食中らしき欧米のビジネスマンの団体客と、印僑とおぼしきインド系家族4名のみで、地元人の姿なし。まぁ、ベトナム料理があれだけ美味くて、街中至る場所でリーズナブルに喰えるのだから、あえて高い金を出して近隣国の料理を食べにいく必要もないのだろう。 通常ならば「腹ごなしに散歩」と相成るはずなのだが、先のインド料理、かなり量が多く食べきれなかったのでテイクアウトにしてもらったら、これが意外と嵩が張り、結構な重量となってしまった。このまま大量のカレーをぶら下げて散歩するのもアレなんで、「それを置きに一旦宿へ帰ろう」ということになった。しかし「GIA BAO GRAND HOTEL」のVIPルームは、再び喧噪の街へと繰り出していく観光気分を根底から消し飛ばしてしまうほどに居心地がよく温かい。こうなるともう部屋はおろかベッドからすら出たくない。つーことで、やたらと元気なツレに一人で観光してきてもらうことにして、その間、俺様氏は温かい部屋のフカフカのベッドで午睡をとることにした。そして起きてみりゃこんな真っ暗。頭掻き毟りたくなったね。 ツレが帰ってくるのを待って再び街へ。今夜はアジアカップ、我らがザックジャパンの試合があるので、あまりゆっくりはしていられねえ。ちなみにこれが今朝まで泊まっていた「HANOI HAPPY HOTEL」。ここもいいホテルだったぜ。さー温かいフォーを喰うことにしよう。 で、またもややってきたホアンキエム湖畔。この時間帯になると日中は少なかった屋台が次々に現れテーブルを並べ始める。もちろん今夜も屋台食だ。 いろいろな屋台を冷やかしていたら、シーフードと共に、「chả giò」というベトナム風揚げ春巻きを喰わせる屋台を発見。 この揚げ春巻き、1個がわりかしデカいので、あまり欲張らずにとりあえず2つだけ頼むことにした。オーダーを告げると、店子のオバさんが足下にある揚げ鍋に、あらかじめ少しだけ火を通してある春巻きを投入する。この揚げ方が面白い。高温の油でカラッとではなく、かなり低い温度の油で“煮る”ようにゆっくりと揚げていくのだ。どうやら高温の油だとライスペーパーが開いてしまうからしい。そうやって徐々に火力を強めて揚げ続け、ジュワーッと音が出始めたらサッと鍋から上げる。そして包丁で三等分に切り分け、ニョクマムベースのスイートチリソースと共に供してくれる。 美味い。具は豚の挽肉にエビやしいたけ、春雨などをこね上げたものがたっぷりと詰まっており、食べ応えがある。見た目通りの香ばしさと食感、そして味。老若男女、国籍問わず、誰が食べても美味いと感じることだろう。日本で食べる中華風の春巻きとは違い、具がたっぷりしているので、これだけで食事として成立するボリュームと美味さがある。 並べてあるシーフードは揚げたり焼いたり茹でたりと、好みの調理法で料理してくれる。強く惹かれるものがあるが、とりあえずフォーを喰ってから考えることにしよう。 違う屋台へと移動し、昨晩と同じ「フォー・ガー」を喰う。ライムが置いてあったので、たっぷりと絞る。相変わらず美味い。かれこれ3日連続で喰っているが、一向に飽きる気配がない。ラーメンならば2日もすれば飽きてしまうが、米麺ということと、さっぱりとした味わいゆえ、「なにはなくとも、まずはフォーから」という感覚ですぐに食べたくなってくる。進化の必要もないほどに完成された料理であり、ベトナム人のソウルフードだけあって、どこで食べても外れがないのもいい。 「Banh tet」(バイン・テト)というベトナム風ちまきを売る屋台。テト(旧正月)が近いことを感じさせる。中国はもちろん、台湾・香港・韓国・シンガポール・マレーシア・インドネシアと東南アジアの国々の多くは旧正月が残っている。モンゴルやブルネイだって旧正月があり、時期は異なるがタイ・ミャンマー・カンボジア・ラオスには「ソンクラーン」がある。いずれの国も祝日として国民全体で祝し・家族が一緒になって過ごすという長きに渡る慣わしがある。残念ながら我が日本は明治維新による近代化への流れの中、明治5年の太政官布告によってグレゴリオ暦が導入されることになり、それまでの太陰暦による“正月”は消滅した。是非はさておき、全国民が一つになって新たな年の幕開けを祝し合う機会が2度もあるってのは羨ましいもんだ。 先の屋台で「Banh tet」を喰ったのだが、これが思いの外美味かったので夜食用にもう一つもらう。 そして帰ってきたぜ、新しい寝床、「GIA BAO GRAND HOTEL」。 「サッカー観戦の友に」と買ってきた生春巻き。豚肉などと共に、ドクダミなどの香菜がたっぷり入っており、ニョクマムベースのピーナッツソースをたっぷり付けて喰う。美味い。薬草によるデトックス効果か、ジャーっと出まくり、それにつれて身体のむくみのようなものが取れてしまったのには驚いた。まさに「身体の中から綺麗になる」を地でいく感覚である。もちろん、この生春巻きだけでなく、連日食べ続けているフォーにもパクチーやドクダミが入っており、それらも合わせて摂取した薬効成分が効果量に達したためにこのような具体的効果が現れたのだろう。すげえやベトナム料理。 そんでもって揚げ春巻きも。味は先に屋台で食べたもの同じ。見た目以上にボリュームがあって全部は喰いきれない。残りは明日の朝食にでもしよう。 そして「Banh tet」。マッシュした緑豆を混ぜ込んだ餅米で豚肉とスクランブルエッグ状の卵を包んである。外側はほっこりとしていて、内側は卵でクリーミーという味の変化があって面白い。味も上品でクセもなく、日本人なら誰もが美味しいと感じる味だと思う。サイズも手頃で日持ちするとも効く。これを2、3個持って市内に多数点在する池や湖の畔で景色を見ながら喰う、なんてのもいいね。とりあえずやることがないときはお手玉としても使えるのもいい。 そして我がザックジャパンの第2戦、VSシリア戦だが、ほぼアウェーな状況と不可解なジャッジに悩まされ、後半などシリアに攻め込まれるシーンを数多く露呈するも、長谷場のファインゴールと本田圭佑のPKでなんとか逃げ切ることに成功。初戦で引き分けているだけに絶対に落とせないゲームだったが、組織力や中盤の支配力でシリアを上回り、グループ一位抜けの可能性が見えてきた。今夜は気持ちよく寝られそうだ。 |
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