
二人の光
原作は昭和8年に発表された谷崎潤一郎の小説『春琴抄』。
今までに何度か映画化・舞台化されていています。
この作品は山口百恵&三浦友和主演『春琴抄(1976) - goo 映画』以来32年ぶりの映画化。
私は原作も未読ですし、過去の映画・舞台も未見です。
「お師匠様はわての観音様・・・」
音曲の師匠・春琴〔長澤奈央〕に仕える奉公人・佐助〔斎藤工〕。
「お世話出来るだけで幸せ・・・」
春琴と寝食を共にしても肉体関係を結ぼうとはしない佐助。
タイプは違うけど、一途に思い続けながらも見返りを求めないプラトニックな愛は
『外科室(1992) - goo 映画』を思い出しましたよ。
『外科室』 ※ネタバレ有
春琴の首筋をふき、髪をとかす
春琴の冷えている足を佐助の胸板で温める
その姿が官能的に映る。
奉公人・佐助役:斎藤工は時任三郎似?
斎藤工の声は若いわりにはダンディで重厚感があるので
作品に奥深さを与えていたと思う。
音曲の師匠・春琴役:長澤奈央は麻生久美子似?
長澤奈央の声はまだ初々しくて清涼感があるから
わがままなお嬢様役を演じても嫌味がなかった。
主演の二人は声質が良いですね。
春琴に弟子入りし、春琴に下心を抱く
名家の息子、利太郎役:松田悟志
シリアスな二人と比べると一人コミカルで浮いてはいたけど、
絶妙な味を出していましたね。
幼い奉公人役:沢木ルカ
この作品は幼い奉公人が見た春琴と佐助の物語。
まだ少女ではあるけど一番冷静でしっかりした事を言う
重要なキャラクターを的確に表現していたと思います。
まだまだこれからの若手俳優・女優がメインキャストではあるけど、
演技が上手い人を揃えていたように思いました。
佐助は自らの目を犠牲にし、目から血と涙を流しながら春琴の部屋に辿りつこうとする。
佐助の姿が痛切でやりきれなかった・・・。
「いとうなかったか?(痛くなかったか?)」
初めて佐助を労わる声をかける春琴。
一見、わがままなお嬢様な春琴だが、
それは家人の中で自分一人だけが目が見えない不安感・孤独感から
苛立ちが募り気高く強がっていただけで、
心根は慈愛に満ちた女性でまさしく観音様のようにも感じた。
佐助は春琴のそういう本質を直感的に見抜いていたからこそ、
春琴に真摯に仕える事に幸せを感じ、
彼女の為なら自分の身を犠牲に出来る決意をしたのかもしれない。
純愛とか運命の愛というよりも、春琴と佐助の絆は宿命の愛のようにも感じましたよ。
P.S. 特典映像の舞台挨拶
ヒロイン春琴を演じた長澤奈央は東京出身なので、
関西弁が難しかったと言っていました。
確かに、彼女の関西弁は多少ぎこちなかったけど、
声が澄みきっているので聞きとりやすかったですよ。
春琴が過去に産んだ子供の父親は誰?
春琴の顔にお湯をかけたのは誰?
この二点は本編では謎のまま終わるけど、
舞台挨拶では春琴の顔にお湯をかけた犯人を明かしていたんですよ。。。
犯人は謎のままにしておいてほしかったけど、
登場人物が少ないのでバレバレと言えばバレバレかもしれないけどね。。。