手紙
百田尚樹の同名小説を山崎貴監督が映画化。
祖父:宮部〔岡田准一〕の歴史を調べる孫:健太郎〔三浦春馬〕の視点から、
“海軍一の臆病者”と呼ばれた宮部の真実の姿を現代と過去を交錯させながら描く。
私は原作は未読です。
戦争映画は苦手分野な私だけど、
『ボックス!』『モンスター』の百田尚樹が原作なので気になって観に行きました。
隊員達が出撃する前に杯?を飲んでから地面に落とすんだけど、何らかの風習か儀式なのかしら?
戦後、宮部の妻:松乃〔井上真央〕と娘が襲われたのを助けたのは誰だったんだろう?
この映画は”戦争賛美”という意見もあるみたいだけど、
訓練中に事故死した隊員を揶揄する上官が登場して、
事故死した隊員を擁護する発言をした宮部を長く殴りつけたり、
敗戦が濃厚になって特攻をかけていく方針を浮き彫りにしたり、
問題提起しているのは反戦的にも感じた。
ただ、”戦争賛美”なのか?”反戦”なのか?本当のところは作り手側にしかわからないことだし、
観客の感じ方次第でもあるので明確な答えなんて出せないから
とやかく言う事でもない気がするし、焦点はその二点ではないように感じた。
この映画は戦争時代が背景ではあるけど、戦争だけを前面に出しているのではなくて、
家族への思い、生と死が隣り合わせの中でも内に秘めている将来への夢、国の未来像を見つめている。
歴史上、名の通った登場人物はいない、ごく普通の青年達の物語。
命を国に捧げるのが当たり前な時代の中でも
宮部は“生きて帰りたい”と望んでいたのは妻と生まれたばかりの娘を守りたかったから。
だけど、自分よりも年下の教え子達が特攻で亡くなっていくのを目にして葛藤し、決断してしまう・・・。
誰だって、大切な家族は自分で守りたい。
だけど、それが叶わないと悟ったら、誰かに託したいと考える。
自分自身が家族を守れないと悟った時、
五二型機のエンジンが不調で敵艦までたどりつけず、不時着する可能性がある
(つまり、敵艦までは行けず、この五二型機だと命が助かる可能性がある)と悟った時、
宮部は自分の五二型機と大石の二一型機を交換する事にする。
宮部は年下である大石こそ生き延びるべきだと思っただろうし、
大石ならば自分の家族を託せると感じたのかもしれないですね。
宮部は感情を荒げる時以外は敬語を使っていて品が良いけど、
自分の考え・思う事はストレートに主張している。
でも、世相と逆をいく思想を主張するのは周囲から反感を買うし誤解されやすいけど、
実直に生きた人ですね。
だから、わかる人にはわかるし、わからない人にはわからない。
生き残りの隊員達への取材の中でも宮部への印象が
“臆病者”と“強い人”の二つに分かれていたのはリアルでした。
宮部役の岡田准一はもうJ事務所の肩書きが要らないぐらい実力派俳優に成長しましたね。
昔、カミセンの3人で連ドラやっていた時、
グループの曲の為だったか忘れたけど金髪(だったと思う)に染めていたけど、
ドラマの役には合わない髪色だったので、撮影現場へ簡易の白髪染め持っていって
毎回自分で黒く染めていたというエピソードをアイドル雑誌で語っていて、
当時の彼はまだ10代だったと思うけど、この子のプロ根性は凄いなと感心した事があったな。
来年は大河ドラマに主演ですね。
大河ドラマと言えば、宮部の妻:松乃役の井上真央は再来年の大河主演ですね。
子役出身で童顔なので昔ながらの妻役はどうなのかなという気もしたけど、
思ったよりも和服が似合っていたし、控え目ながらも芯の強い女性像を的確に表現していたと思う。
若い頃の大石役の染谷将太はクセのある役が多かったけど、
この作品では普通の純朴な青年を演じていたのも新鮮だったな。
現代では大会社の会長さんになっている武田〔山本學〕は健太郎が司法浪人で無職だと知っても
容易く手を差し伸べて職を与えたりはせずに、宮部さんの孫だからと信じて励ますのが印象的。
最初、健太郎が訪ねた時は気難しそうだったヤクザの親分?の景浦〔田中泯〕は
健太郎が再び訪ねてきた時は健太郎が宮部を理解したのを実感し、
全てを語った後、健太郎をハグするのも胸が熱くなったよ。
健太郎と姉が実の祖父である宮部の事を調べようと大石〔夏八木勲〕に相談した時もすぐには語らなかったのは
いずれ宮部を理解して孫達が再び来る時がくるのを信じたからなのでしょうね。
私は後半ボロ泣き状態でした。
特に大石が
“結婚後は宮部さんの事は一切、話さなかったけど、二人共、彼の事は忘れたことはない”
という旨を語る場面が一番泣けたな。
その言葉に大石と松乃の思いが集約されているような気がしたから。
素直に感涙した作品でした。
P.S.
百田さんの作品は『永遠の0』『モンスター』も・・・な行く末だったけど、
ある意味、この主人公は幸せだったんじゃないかな?と思わせられるんですね。
自分に素直に生きるのって簡単なようでとても難しいから
なかなか思うようには生きられないけど、
ベストな方向へは行けなくとも、
自分に真っ直ぐに生きている主人公なので自分の人生に後悔してないような気がしたの。
実は昨日初めて気づいてしまいました。
BCさんのエアdisを読んで、私も怒り過ぎていたなあと反省し、書き直しました。
次は『黄色いゾウ』辺りを観てみようかな~と思います。
恥ずかしながら”エアdis”の意味がわからなかったのでネットで検索かけました。。。
勉強になりました。^^
私は飽きっぽい性格で、映画に関しては次々新しい作品を求めるので
一つの作品に長く固執することはまずないから、
そこまで一つの作品にこだわれるのは凄いなと思います。
とらねこさんのDeepな映画愛はブログやツイッターを拝見しているとパワフルに伝わってきますよ~。
『きいろいゾウ』は肩肘張っている?私達とは違って、
繊細な女性心理を描いた物語で感性派の作品なので
またしても意見が分かれるかもしれないけど、
とらねこさんがどんな感想をもたれるのか楽しみです。