~青いそよ風が吹く街角~

映画(主にミニシアター映画)の感想文を軸にマイペースで綴っていきます。

□『だいじょうぶ3組』□ ※ネタバレ有

2013-03-07 22:39:50 | 映画【日本】


  『だいじょうぶ3組』:公式サイト

結果よりも成長

乙武洋匡が小学校教師を務めた経験を基にした同名小説を廣木隆一監督が映画化。
乙武洋匡が新任教師役で出演し俳優デビュー。
手足のない担任の赤尾先生〔乙武洋匡〕と
補助教員白石先生〔国分太一〕、5年3組の生徒達の一年を描く。

赤尾先生髪伸びるのが早いよね~。
今の小学校の生徒は1クラス30名にも満たなくて、
“児童”ではなくて“生徒”と言うのかしら?
運動場があるのにどうして屋内で運動会したんだろう?

強烈な役が多かった?渡辺真起子が
女子生徒のお母さん役(わりと落ち着いた役)を演じていたのがツボでした。^^

廣木監督はオフホワイトな映像が特色ですね。
病気を描いた作品が多いし、今回は障害者を描いているので
映画ファンの間でも好みが分かれているけど、
私は人の心の傷みを浮き彫りにしながらも寄り添うように描く救いのある廣木監督の演出好きです。

障害者本人が演じる映画と言えば典子は、今を思い出しました。
特に、食事したり字を書いたりする場面はね。
『典子は、今』は姓違うけど名は本人と同じ役だったので
他は本職の俳優・女優を揃えていてもドキュメンタリー要素が強かった。

 『典子は、今』・・・ ※ネタバレ有

一方、『だいじょうぶ3組』は実体験をもとにしている点ではドキュメンタリー要素もあるけど、
半生や一生涯を描いているわけでもない。
原作に沿って本人の姓名ではない役でフィクションの味付けをした事で重さが和らいで観やすかった。
障害を前面に据えるのではなく、先生と生徒の心の交流が主題なのだろう。

乙武さんは台詞回しが多少照れ臭そうだったものの、
その点以外は演技初めてとは思えない程、自然に表情豊か。
生徒の力になろうとする温かみのある乙武さんの演技が本当に素晴らしい。
プロの俳優でも難しい涙の演技も目にじわっと涙を浮かべてスーと涙を流していて実に上手かった。

ダウン症の姉を抱える女子生徒のエピソードは
障害者の家族にしかわからないリアルな気持ちが描かれていて共感出来ました。
(まるで、子供の頃の私自身を観ているようで涙が止まらなかったよ。)
 お姉ちゃんは普通じゃないけど、お姉ちゃんは好き。
 お姉ちゃんが世間にバカにされるのは悔しい・・・。
 学校ではお姉ちゃんの事を忘れて普通でいたいのに教室にも障害者がいる。
 しかも、それが担任の先生だと避けようがないから余計に辛くなる・・・。
 助けてほしいけど、そんな気持ち誰にも言えない・・・。
 だから、心を閉ざしてしまう・・・。
 
また、赤尾先生も自分のせいかもしれない思い悩み、生徒を救ってあげられなくて悩む・・・。
私の場合は妹が障害者だけど、もし姉や兄が障害者だったとしたら
頼りたくても頼れないわけだからもっと辛いんだろうなと思う。
ただ、この女子生徒のダウン症の姉は言葉話せるので、お互いに会話は出来るのは羨ましかった。
(もちろん、言葉を交わせるからこその辛さもあるんだろうけど・・・。)

20年以上映画を観てきて思うのは障害者本人や親の気持ちが描かれている作品は多いけど、
兄弟・姉妹の気持ちが描かれている作品は実に少ないと言う事。
だからこそ、たまにそういう作品に出逢えて、共感出来るとありがたく感謝出来る。

学校での行事が春の運動会・秋の遠足・学年最後の終業式しか描かれていないし、
学校の教師達のキャラがいかにも学園ドラマぽい類型的なキャラだし、
白石と恋人:美由紀〔榮倉奈々〕の場面はとってつけたような感じだったので
映画の作りとしては物足りない部分もあった・・・。
連続ドラマにして数々のエピソードを描いたほうが良さそうな気もする。

とは言え、赤尾先生の考え方は興味深かった。

 誰が上履きをとったのかではなく、どうしてそういう事をしてしまったのか?
 (競技は)結果ではなく成長
 これは出来ないけど、これは出来る

“普通”とは?“勝ち負け”とは?“長所と短所”とは?
大人でも容易く答えを導き出せない哲学的な事について生徒達が意見を交わす。
フランス映画『ちいさな哲学者たち』を思い出しましたよ。

 *『ちいさな哲学者たち』* ※ネタバレ有

生徒達の意見にじっくり耳を傾け、押しつけがましくなく、赤尾先生は自分の意見を語る。
たとえ結果が出なくとも一生懸命取り組んでいれば何かしら得るモノはある。
何でもパーフェクトにこなせる人間なんていないので、得手不得手はある。
出来ない事だけではなく、出来る事もあると認識していればささやかな自信をもてるようになる。
子供の場合はささやかな自信が夢へとつながる場合もある。
つまり、発想の転換によって感じ方も今後も明るくなってくる。
赤尾先生(すなわち乙武さん?)はそれを伝えようとしているような気もした作品でした。


≪『だいじょうぶ3組』関連記事≫

 国分太一が映画『だいじょうぶ3組』の撮影前に乙武洋匡氏からもらった手紙。 〔マイナビニュース:13.03.04〕


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