~青いそよ風が吹く街角~

映画(主にミニシアター映画)の感想文を軸にマイペースで綴っていきます。

*『食卓の肖像』* ※ネタバレ有

2013-06-15 14:58:54 | 映画【日本】


  『食卓の肖像』:公式サイト

ヴァイオリン
メシマコブ(サルノコシカケ)

戦後最大とも言われる未曾有の食品公害事件“カネミ油症事件”に迫ったドキュメンタリー。

 カネミ油症事件 - Wikipedia

1968年に福岡・長崎をはじめとする西日本一帯で、
食品油のカネミライスオイルを口にした人達が
大量の吹き出物や目やに、脱毛などの健康被害に見舞われ、
被害者は1万4000人以上になるとも言われている。
この事件発生から長い年月が経過した2000年にいまだ被害に苦しんでいる人達がいることを知った
金子サトシ監督が被害者へのインタビューなどを通じて“食の安全”への問題を提示した作品。

カネミ油症と言えば、皮膚症状が前面に報道されたので、
内臓疾患は認識されていなかったのですね。

カネミ油症に関する解説はナレーションはなく、黒背景に白字幕で表示。
その字幕も少し大きめの文字でゆっくりめに表示していっている。
まるでサイレント映画のようだったな。

インタビューに応えている人達も感情を荒げたりはしていない。
普通におおらかに語っている。
このテのドキュメンタリーにありがちなお涙頂戴は一切なく、淡々と描いているので観やすかった。
ただ、大きな手術痕が残る女性の上半身裸の写真は生々しすぎるので映さなくても良かった気もした。
話しだけでも充分想像つくし。

そういうふうに症状を訴えかけていくだけだと
正直、重い映画だな・・・と思っていたんだけど、
後半は一転、被害に遭った事から健康に気を配るようになり、
無添加ケーキ、無農薬野菜、サルノコシカケといった健康への取り組みが穏やかに語られていく。
そういった話題になると、被害者の方達の表情も柔らかくなっていたような感じ。
特に、サルノコシカケのエピソードは奇跡なんだけど、
サルノコシカケによって自分が救われた事で、
自ら工場まで作ってサルノコシカケの商品を開発していった経緯を語る
男性の笑顔は少年のように爽やかだったな。

あと、胎児性の被害者の方は飛行機に乗って通院するうちに飛行機に興味津津になり、
航空写真を撮るようになられている。

取材に応えた被害者の方達は事件を風化させたくないという思いから証言されたのだろうけど、
だからと言って、悲観にくれているのではなく、がむしゃらに前向きになっているわけでもなく、
日々の暮らしから健康への取り組みや趣味を見い出していっていたのが印象的でした。


≪金子サトシ監督と池田直樹弁護士のトークショー≫
映画上映後に金子サトシ監督と
公害裁判に取り組まれている池田直樹弁護士のトークショーがありました。
一時間以上のトークショーだったので詳細レポは無理なので
印象に残った内容だけ抜粋して書きます。

※箇条書きのメモから書いたので言葉は正確ではないかもしれないですし、
  トークの順番は多少前後しているかもしれませんが、
  大体のニュアンスでお読み下さいね。

監督:仕事と並行して10年かけた。

監督:PCB被害と言われていたが、ダイオキシンとの複合汚染とは言われていなかった。
    1990年代後半から見直されてきた。

弁護士:(女性被害者)は産む事によって解毒していく。
      声高らかに訴えかける映画ではなく、タイトルも食卓。

監督:(カネミ油症)が忘れられているのが衝撃。
    色んな症状を抱えていてもそれがカネミなのか?
    前半部は被害を訴えるだけで納めるつもりだったが、
    メシマコブの工場まで作る、無添加・無農薬の話をきいて、
    被害を受けるだけではなく取材しながらそれだけじゃないものがあるのではないか?
    発見があったり、感銘があったりしたので意図というよりも
    エピソードが出てきて興味深かったので結果としてこうなった。
    (最初のタイトルは)『カネミ油症は終わっていない』だったけど、『食卓の肖像』になった。

弁護士:(被害者の数)1万4千人。
      翌年までに保健所に届け出た人の人数。
      その頃、裁判が起きたから国は統計をとっていない。
      1990年代、途中で裁判に勝ったので国から仮払金が出て配られたが、
      裁判に負けそうになり取り下げたので国から返却を求められ、自殺した人も。
      その後の裁判によって免除された人も。
      昨年、法律が出来て、認定患者には年24万円下りるようになった。
      台湾では子供も保障されている。

弁護士:(裁判に)負ける事も大事。
      どうして負けるんだ、おかしいじゃないか?を考える。

監督:昨年の法律によって、認定者と同じ食卓で食べた場合は認定されるようになった。

監督:一つ一つの症状だけでは医学的に証明できない。

監督:ツィッターを見ると医者は本当にカネミの症状なのか?と言ったりしている。

観客:国へのどういう思いをもってやっていけば良いのか?

弁護士:国が被害の広がりの調査をキッチリする。


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